44

 
 
 
 
 
 
 

スモーカーはサンジの前で葉巻きをふかせていた。
サンジにとりあえず、最近のことをたずねて、
それから「核心」の事を聞き出さねばならなえ。

・・・エースとヤったかどうか。

なぜ今の最重点事項がコイツがエースとヤったかどうかなんだ。
事件の解決とは何らかかわりのないことだ。
違うだろ。
管轄外だ。
オレとはかかわりのねえことのはずだ。

そう思いつつも、
賭けは始められてしまった。
やむをえず、
聞いてみる。

「あァ、何でオレがエースとヤらねえといけねえんだ?」
サンジは実に小生意気な態度でスモーカーに返事をした。

なんてムカつくやつだ。
やっぱりこりゃ、
ボン・クレーの考え違いだな。
どうみても認識の誤りだ。
コイツは誰ともヤってねえだろ。
この普段のクソ生意気なコイツとヤろうなんてのは、
あのエースと、
ゾロくれえなもんだ。
いや、フルボディもその気になってたな。
まあ、黙ってしおらしくしてりゃあ、
妙な色気があるといやあ、あるかもしれねえが。

そういや、
コイツはゾロに既にヤられてたか。

「ゾロとはどうだ?」
そう質問した途端、
サンジの目が泳いだ。

「え、何もねえよ。
ヘンなこと言うな」
そうは言っているが、
やっぱり目が泳いでいる。

オイ、待てよ。
ヤったのか。
「てめえ・・・ヤったな」
スモーカーは不愉快さを隠そうともしなかった。
オレはボン・クレーに何と言った?
誰ともヤってねえと・・・、
そう言ったよな。
チクショウ!!!!!
なんてこった!!!!
サンジは以前に困るとかなんとか言ってたのは、
ありゃ嘘か?
一度目は事故で済むが、
二度目ともなれば、もうはっきりと意図的だ。

コイツはそれでもゾロのところにいるのだ。
それは、もう、合意としか思えねえ。

「・・・・」
スモーカーは葉巻きの煙をせわしなく吐き出した。
コイツにゾロとはヤってないと言わせればいいわけだ。
そう、ボン・クレーに思い込ませればいいわけだ。
確かにオレもだまされかけた。
サンジはゾロのことが嫌いなのかと。
考えるんだ。
まあ、宝石に関しては手出し無用だからな。
ここの警備は万全だ。
しかも、前被疑者サンジは面も割れているから、
ここでは身動きとれねえ。
サンジを生かすも殺すもオレ次第ってわけだが、
妙な情をかけたオレが間違いだった。
「てめえ・・・、口が裂けてもゾロとヤったなんて言うんじゃねえぞ」
「え?  ヤってねえって・・・」
落ち着かない様子のサンジにスモーカーは頭を抱えた。
そわそわして、
目が泳いでる。
ヤりましたって言ってるようなもんだぜ。
「なら、ヤられたんだな!!!!」
スモーカーが突如ものすごい剣幕で机を叩いた。

サンジはびくっとして喋り始めた。
「しょうがねえだろ、
酔ってたんだから・・・」

スモーカーの眉間には青筋が入った。
・・・誰がソレを言えと言ったんだ。
言うんじゃねえ、このアホが。
自白時間、わずか5分。
ボン・クレーにかかったら楽勝で吐かせられるな。
クソ・・・。
バレバレじゃねえかよ。
なんで、こんなことに・・・。
こいつにかかわるとロクなことがねえ。

スモーカーはますますいらつき、
葉巻きの数を増やした。
小さな部屋の中は煙だらけになっていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ジョウダンじゃなーーーーいわようっっっ!!!!」
別室ではボン・クレーの奇声が響いていた。

「いや、本当にヤってねえって」
エースは手をひらひらさせながら、答えた。

そんなバカな。
あちしのカンが外れるなんて。
一目見てピンときたのに・・・。
デキてるって。
オカマ・ウェイを極めたと思ったのに、なんてザマなのようっっっ!!!
オカマの目はごまかせないはずようっっっ。

「あんた、手を出す気はあるんでしょ?
ちょっと待ってよ。
サンジは、あれだけ文句を言っていたのに、
ゾロに食わせてるわけ?」
信じられないわよう。
あれだけゾロの悪口言ってたのに。
アホだとか、
修業バカだとか、
腹巻き男だとか、
方向音痴だとか、
実に低レベルの悪口が調書にもびっしりと書かれていたわよねい。

「ヤる気はあるが、あの館ではムリだし、
買い出しの途中ってのもさすがにな。
あとはここに来たぐらいだし・・・」
サンジは隙だらけのくせに、
ここぞというタイミングがこない。
いつもならもうとっくに食っているはずだが、
今回だけは手をこまねいていたのだ。

不意にボン・クレーの目がきらりと光った。
「ここ」に来たくらい、と言ったわねい。
「そういえば特別取り調べ室が今日は空いてるかもしれないわよう。
あちしは、見るだけでいいのよう。
賭けたのよねい、スモーカーと。
あちしはゾロでなくエース、あんたが勝つ方に賭けるわよう」

ああ、賭けね。
サンジが誰のもんになるってことかな。
まったく、警察ってのはお気楽なこったな。
つまみ食いは面白そうだが、
サンジはゾロの執着している相手だ。
つまみ食いではすまされないはずだ。
下手すりゃ全面衝突だな。
だが・・・、
・・・それも面白いか。

「部屋、借りるぜ。
使用料はいくらだ?」

エースの言葉にボン・クレーがびしっと親指をたてた。

「使用料は小さな友情よう」

ボン・クレーとエースは危険な笑みを浮かべ、
がっちりと握手をした。

二人に友情が生まれた瞬間だった。
 
 
 
 
 
 


next

伝説の秘宝オールブルー

ura-top