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「ゴチソウサマでした」

エースの言葉にボン・クレーはびしっと親指をたてた。
「まあ、これであのコはあんたの手中に入るってことねい。
記念の映像はゲットしておいたわよう。
それを使えばサンジは言いなりよう」

エースはしばらく考えた。
「いや、それは止しておく。
モノにするなら、
ちゃんとオレに惚れさす主義でね」

ボン・クレーはエースの言葉にショックを受けた。
・・・粋。
なんて粋なのよう!!
惚れそうだわ、あちし。
惚れちゃおうかしら、あちし。
あちしが本気になったら、
サンジを蹴落とすなど簡単なことよう。
どうしようかしら。

でも、いけないわ。
いけないわよう。
あちしとエースの間には美しい友情があったのよねい。
友情をとるか、
愛情をとるか。
くうっっっっ、
このボン・クレー、
友情の元に身をひくわようっっっっ。
なんて美しい友情なのようっっっっ。

陶酔し続けるボン・クレーをちらりとみると、
エースは部屋を出ようとした。

「待つのよう!!!
二つのオールブルーについて知りたいのよう!!!」
ボン・クレーがエースを引き止める。

「それは、言えねえな。
あんたら盗み聞きしたんだろ。
オレは可愛いサンジだから教えてやった。
それは友達にでもおいそれとは教えられねえことだからな」

「ジョウダンじゃなーーーーいわようっっっ!!!!」
あちしに教えない気?
でもエースは「友達」にでも教えないって。
てことはあちしと友達ってこと。
小さな友情は、
大きな友情に。
ああ、友達っていいわよねい。

「そうよねい。
あちしとあんたは友達だったわよねい。
友達だから、
これ以上聞かないことにするわ」

「友達だから、やばい映像は悪用しない・・・、
違うか?」

そうよねい。
あちしったらなんてことを。
友達に恥をかかすようなことをしてはいけないわよねい。

「ディスクは壊すわよう。
オラァァァァァァァ!!!!!!」
雄叫びとともに鋭いケリがくわえられ、
ボン・クレーの持って来たディスクは粉々に飛び散った。

エースはニヤリと笑うと、
びしっと親指をたてた。
彼らの友情には言葉はいらないのだ。

「もう一つのオールブルーはゾロが持っている。
それだけで充分だろう」

エースはそう言うと、
サンジの乾いた衣服をつかむと、
部屋を出て言った。

なんて素晴らしいのよう。
すばらしい友情よねい。

ボン・クレーは猛烈に感動し続けていた。
 
 
 
 
 
 

サンジのいる部屋はエースにもすぐに分かった。
異常に人だかりがしていたからだ。
「あの、スモーカー警部が・・・」
「・・・また、泣かすのか???」
「中の様子がわからん!!!
スモーカー警部が、
監視カメラを切ったぞ!!!!」
「あの金髪と二人きりか!!!」
どうみても野次馬にしか見えない警官たちが、
部屋の前にうろうろしている。
スモーカーはえぐえぐと泣くサンジにお手上げ状態だった。

そこへ、
サンジの服を手にしたエースがやってきたのだ。
野次馬たちは一瞬にしてエースに道を開けた。
「ああ、入らせてもらうよ」
エースは人なつこい笑顔を浮かべると、
悪びれずに部屋に入って行く。

一目、部屋の中の様子を見ようとする警官たちが、
一斉にドアの所に押し寄せた。
 
 
 
 

「・・・なんだ、てめえか」
スモーカーはいらついていた。

サンジにはさっぱり尋問できないままだ。
「オレはもうダメだ!!!
男とシちまった!!!」
そう言って、
えぐえぐ泣いたかと思うと、
「ああ、でも、オレにはさっきのお姉さまがついている。
初対面なのに名前を知っていた。
これは恋の力に違いない!!!
運命だぁぁぁ!!!」
とわめき始め、
急にメロメロモードになる。

てめえは管轄外のヒナでも知ってる程の、重要容疑者なんだ。
なのに、なんでそこまでアホみたいなことが言えるんだ。
・・・まれに見るアホだ。
スモーカーはそう思いつつも、
ちらちら覗く白い肌が気になっていた。
黙ってりゃ・・・、
見れたもんなのによ。
いや、あんまり見たらいけねえ。
妙な感じになっちまうじゃねえか。
アホは相手にしねえのが一番だ。
 
 
 

「オイ、サンジ、なんで泣いてるんだ??」

 エースの言葉にサンジは顔を真っ赤にしてわめき始めた。
「あんだと、コラ!!!
てめえのせいじゃねえかよ!!!
この清純派にしてナイスバディなサンジ様がヤられちまうなんて、
全世界のお姉さまになんと言えばいいんだ!!!」

「そんなにさっきの事が、心に残っているのか?
お前はそれぐらいの事で気にするのか?」
エースに顔を近づけて言われ、
サンジは困った顔をした。
急に無口になり、
拗ねたような顔をして、
上目づかいにエースを睨んだ。

だから・・・、
そういう顔が誘ってるんだって。
誰も気づかせてやらないんだろうなあ。
エースは苦笑して、
サンジの赤くなった頬をゆるやかに撫でた。
「遊びより、本気の方がいいのか?」

返事ができずにいるサンジに、
軽く口づけると、
服を渡した。
「さっさと着ろ。
そろそろ帰るぞ」

サンジは困ったような顔をしながらも、
無言で衣服を身につけはじめた。

スモーカーは固まっていた。
・・・こりゃ、ラブシーンじゃねえか。
オレの目の前でラブシーンなどやりやがって。
こいつらデキてやがったのか。
こりゃ本物だ。
このクソうるさいサンジがしおらしく服なんざ着てるじゃねえか。
・・・いかん、
オレは何をぼーっとサンジなんざ見てたんだ。
いかん、仕事を忘れるところだ。

「オイ、エース。
オールブルーについて話せ」
 
 
 
 
 

「オールブルーは二つある。
それから後はゾロに聞け」

ゾロと言う言葉を聞いて、
サンジはびくりとした。

あ・・・、ゾロ。
最近帰ってきてねえけど・・・。
どうしよう。
エースとヤっちまった。
いや、ヤられたんだけど。

ゾロに知られたら・・・。
オレを見捨てる?
それとも関係ねえ?
どうすりゃいいんだ。
・・・関係ねえよな、きっと。
ゾロは気にしねえよ。
オレはあいつのコックなんだから、
がんばってメシ作ればいい。
・・・関係ねえ。

だけど、
なんだか胸がいてえ。
気が重い。

ゾロにはゾロの相手がいるように、
オレにはオレの相手がいたっておかしくねえ。
それがうっかり男だって、
いいよな。
いいはずだ。
なのに、
オレは嫌な気分だ。
ゾロに・・・知られたら。

知られたくねえ。
なんでか分からねえけど、
知られたくねえ。

エースは嫌いじゃねえ。
それはこんなことになっても、同じだ。
だけど、
ゾロには。
ゾロには・・・知られたくねえ。

・・・やべえ・・・、
また泣きそうになってきた。
 
 
 
 

「泣くなよ、サンジ」
エースがやわらかく抱きしめてくれる。
そっと頭をなでてくれる。
あったけえ。

だけど、
オレはこんなぬくもりを知っている。
あれは誰だったのだろう。
この手より、
無骨で、
固い身体。

なんで、涙なんて出るんだ。
みっともねえ。
カッコわりいな。
へへへ。
こんなこと、どってことねえだろ。
今だけだ。
こんなの、今だけだ。
 
 
 
 
 
 


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