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サンジは小さな店の奥のドアを開けて、
こっそりと小部屋に入った。
「ああ、ナミさん!!!!!
お久しぶり・・・いてぇ!!」
「・・・声が大きいわよ、バカ!!!」
頭をしばかれて、サンジは涙ぐんでいる。
「・・・容赦のないナミさんも素敵だ・・・」

相変わらずのサンジに、ナミはため息をついた。
「あんた、スモーカーとヤったの?」
直球、遊びなしである。
サンジは冷汗を流した。
・・・ナナナ、ナミさんが鬼になってる。
逆らえねえ、絶対に逆らえねえ。
「ヤってません」

「ヘンねえ。警察内でヤったってネタは上がってるのよ。
吐きなさい!!!!」
こええ・・・ナミさん、こええよ。
・・・でも、言えねえ。

妙に汗を流しているサンジの様子から、
何かを隠しているのは間違いない。
「ねえ、言ったら、なにか御褒美あげちゃおうかな?」

サンジの目が一気にハートに変わった。
「何でも言います!!!
ナミさんのお望みとあれば。
ああ、愛の炎に身を焦がすのも素敵だ」
サンジのテンションが上がっていくのだが、
必要なことは言おうとしない。

・・・よほど都合が悪いんだわ。

「エースとはどうなの?」
サンジは滝のように汗を流し、
目が泳ぎはじめた。
誰が見てもヤりましたと言っているようなものだ。
・・・サンジ君、分かりやすすぎ。

「・・・ちょっと待って、警察でヤったの?」
泣きそうな顔をしているサンジに容赦なくたたみかける。
反論しないってことは・・・、ヤったってことよね。
どういうことなの?
協力者がいるってことか。
スモーカーとエースに・・・そういえばボン・クレーってのもいたわね。
・・・ちょっと・・・サンジ君、
泣いてる場合じゃないでしょ。

いつの間にかサンジはえぐえぐ泣きはじめていた。

「泣くな!!!!
あんたのせいでややこしくなってんじゃないの!!!!」
「・・・男らしいナミさんも素敵だ!!!」
バシッ!!!
ナミの鉄拳が炸裂した。

・・・いてえ。
ナミさん、容赦なさすぎ・・・。
うずくまるサンジをナミは冷ややかに見下ろした。

分からないじゃないのよ!!!
あんたのせいで!!!
 
 
 
 
 
 

「おーい、サンジ、まだかい?」
エースの声に、ナミとサンジはびくりと顔を上げた。
サンジは困ったような顔をすると、
あわてて部屋を出て行った。

「いやあ、あんまり遅いから、店の中まで覗きにきたんだけどな」
ナミは聞き耳をたてた。
エースがついてきてたのね。
最近、毎日サンジ君に会いにきてるらしいのよね。

「どうした・・・泣いたのか?」
「泣いてねえ」
バレバレでしょ、サンジ君・・・。
あんな顔で・・・。

「オレのせいかな。
行ったろ、責任とるって」
はい・・・?
ナミはくらりときた。
なんなの、今のセリフ。

「お前がイヤならしねえから。
まだオレのところへ来る気にならねえか?」

ナミは、かすかに開いているドアの隙間から様子をうかがった。
エースがサンジを抱きしめて、
耳もとで囁いている。
サンジは赤い顔をして、
困ったようにエースを見ていた。
エースはサンジに軽く口づけすると、
サンジを解放した。

それから、サンジはふらふらと買い物を始めた。
エースはサンジの側にぴったりとよりそって買い物を手伝っている。

ナミは固まっていた。
ちょっと・・・、
毎日こういうことしてるの・・・?
っていうか、サンジ君、あんな無防備な顔したら食われるにきまってるでしょう。
エースとかゾロにはああいう顔を見せてるわけね。
・・・オールブルーはどうなってるのよ!!!!!

・・・しまった、
私としたことが、
情報収集ができなかったわ・・・。
・・・サンジ君のせいね。

・・・つけとこう。
まあ、1万ベリーでいいか。
サンジ君はお金なくてもエースやゾロは大金持ちだから、払えるでしょ。
 
 
 
 
 
 
 
 

もう一つのオールブルー。
エースの言った言葉の真偽を確かめるためボン・クレーとスモーカーは日々新たな調査を開始していた。

「スモーカーちゃんはどこよう!!」
ボン・クレーはスモーカー警部の居場所を見て、顔をしかめた。
・・・また、あそこなのね。
「じょうだんじゃなーーーーいわようっっっ」
スモーカーの入る部屋に乱入すると、
画面を食い入るように見ているスモーカーの姿があった。
警察におけるエースとサンジの全会話の分析作業中だ。
その中には公にできない場面もかなりふくまれている。
問題の発言はセックス中だ。
目の動き、手の動き、身体の動きと発言の関連性と真偽性。
きちんと見分けるためには、正確に観察しなければならない。

・・・新しいティッシュの箱がいるわねい。
ボン・クレーは素早く備品の減りをチェックした。

「新情報は?」
「ねえな」
スモーカーはいまいましげに言った。
「ロロノア・ゾロは今、仕事が忙しくて会えないと言ってるらしいわよう」
ボン・クレーは画面に目を落とした。
画面の中では、エースの下になってサンジがあえいでいた。

「こいつを見せるしかねえか」
スモーカーの言葉にうなずきかけたが、
エースと交わした言葉を思い出して、
ボン・クレーはどなった。
「あちしは友情を裏切れないわよう!!!!
だめよう、あちし・・・・。
ああ、運命はなんて残酷なの・・・。
でも、おかま道の名にかけて、
あちしは裏切れないのようっっっ!!!!」
いきなりテンションの上がるボン・クレーをスモーカーは呆れて見ていた。
どうすればいいのようっっっ。
あちしには・・・、
あちしには出来ないわようっ。
エースとの友情を裏切って、この画像を利用するだなんてっっっっ。
あちしはディスクを壊したのよう。
・・・これはスモーカーのディスクなんだから・・・。
悪いのはスモーカーようっっっ。
あちしはエースの味方ようっ。

でも、スモーカーがすることなら、
あちしには関係ないわよねい。
悪者はスモーカー、あちしは手を汚さない。
・・・ふふふ、あちしもワルよねい。
「スモーカー、あんたにロロノア・ゾロとの交渉はまかすわよう」
 
 
 
 
 
 

買い物が終わって、
ゾロの館に帰ってきたサンジはキッチンのすみで膝をかかえて座っていた。
エースは毎日来て、買い物についてくる。
でもって毎日、エースのところに来いと言う。
エースは嫌いじゃねえけど、困る。
この館は最近、ゾロがいねえ。
なんでも世界一の社長になって好きなことをするらしい。
ヨサクがそう言ってた。
最近、ヨサクやジョニーやチョッパーがよそよそしい。
ウソップですら、オレをさけ、
ろくに目も合わさねえ。
・・・なんだよ・・・、
オレ、嫌われてるのかな。
親切なのはエースだけ。
・・・ちぇっ、なんで帰ってこねえんだよ、あの腹巻男。
てめえの気に入りの腹巻はずっと部屋に置いたままだ。
腹巻してねえゾロなんて、
ゾロらしくねえだろ。
・・・でも、帰ってきても・・・困る。
エースとのあれを何ていったらいいのか。

 それに、オールブルーのこと。
今日、ナミさんにお会いしたのに、
オールブルーがもう一つあるってことを言えなかった。
・・・言えねえよな。
ゾロにヤられてる時に見たなんて。
エースにヤられてる時に聞いたなんて。
オールブルーを盗るために、
オレはここにいるはずなのに、
一番大事な情報を言えなかった。
・・・ちぇっ・・・、ダメじゃねえか、オレ。
ゾロの部屋は捜してる。
だから、もうどこに何があるかも覚えてるくれえだ。
だけど、あの部屋でオレはオールブルーを見せられたんだ。
ウソップにも言えねえから、
必死で記憶をたぐろうとするけど、
思い出すのはゾロにヤられてた時の熱くてエロい感覚だけ。
・・・チクショウ、どうしちまったんだ、オレ。
身体が熱くなってヘンな気分になってくる。

オレがここにいる意味は「オールブルーを盗る」ことだけなんだ。
間違えるな。
忘れるな。
だから、他のことなんて考えちゃいけねえんだ。
他の誰かのことなんて考えちゃいけねえんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 


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伝説の秘宝オールブルー

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