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ゾロはサンジを乱暴に床にたたきつけると、
押さえ付けた。

得体の知れない激情が身体を支配する。
ムカツク。
イライラスル。
コイツのせいだ。
すべて、コイツのせいだ。

オレの目の前でじたばたしてるサンジのせいだ。
必死でオレから逃げようとしてるが、
誘ってるようにしかみえねえ。
オレが本気になれば、
てめえはオレにかなわねえ。
分かってるはずだろ。

てめえはオレにはかなわねえんだから、
フラフラしてんじゃねえ。
目を離したら、
何をするか分かったもんじゃねえくせに、
オレの側から離れようとする。

関係ねえふりしやがって。
都合が悪くなるとすぐに逃げたりごまかしたりする。

だが、逃げられねえだろ、
この現実からは。
てめえはオレのもんなんだ。
奪われたら、
とりもどす。
ついてこねえなら、
力づくでもつれていく。

てめえの言葉は安い。
意味のねえ言葉をいつも言ってる。
だから、オレはてめえの言葉なんて信じねえ。
オレはぐだぐだしゃべるのなんて性じゃねえ。
行動だ。
欲しいモノは手に入れる。
己の力で、手に入れる。
手に入れるためには全力を尽くす。
それが剣士としての心意気だ。
 
 
 
 
 

「・・・っ、ゾロっ・・・」
サンジは引きちぎるようにして中途半端に脱がされた服に自由を奪われていた。
ゾロの目が暗い闇をたたえて自分を見ている。
また・・・ヤられる。
恐怖と戦慄、
なのに、身体は以前ゾロに与えられた快感を蘇らせる。
・・・えっ・・・何・・・。

きつく口づけられ、
肌をまさぐられた時には、
明らかに快楽を感じた。

「・・・んっっ・・・」
嘘だ、
嘘だ、
キモチよくなんてねえ。
オレはゾロを待ってなんかねえ・・・。

やっ・・・、
キモチいい・・・。
やべえよ・・・、
やべえ・・・。
そんなトコ、
そんなんされたら・・・。
イっちまうよ・・・。

あ・・・、
何・・・、
ゾロのが・・・、
でかくて熱いゾロのが当たってる。
・・・ヘンだ・・・、
オレ・・・、
身体が熱くなる・・・。
力が抜けて・・・オカシクなる・・・。
 
 
 

「入れるぞ」
ゾロの言葉にサンジはぎゅっと目をつぶった。
身体の中に入ってくるゾロの熱い楔。
サンジの身体はそれを欲しがって、
ぎゅうぎゅうと締め付けた。

かすかに蘇るエースとの記憶。

・・・ゾロがいい。
コレをするなら・・・、
ゾロがいい・・・。

サンジは無意識のうちにゾロにしがみついた。
 
 
 
 
 
 

コンピュータの画面が何か急用を知らせているようだったが、
ゾロはそれを無視した。
それまで必死でしてきた取り引き。
それはもうどうでもよかった。
今のこの瞬間、
サンジを抱いていたい。
止められなかった。
なんでこんなアホにこんな想いをさせられるのか。
サンジがいない時に
嫌になるほど考えたが、
何一つ分からなかった。
考えるより、こうやって行動するのがいい。
こうしてサンジの身体を手に入れる。
これが一番安心する。
手にしている間はオレだけのもんだ。
アホな言葉を紡ぎ出す余裕もなく、
アホな行動をする余裕もなく、
アホなことに気を散らす余裕もない。

サンジの全てを好きにできる。

ゾロは夢中でサンジの身体をむさぼり、
欲望を吐き出し続けた。
 
 
 
 
 

我にかえると、
既にサンジは気をやってぐったりとしている。

ゾロはサンジの衣服がボロボロになり、
おまけにやばい液がかかっていることに気づいた。
ボタンもいくつかちぎれていて、
シャツはくしゃくしゃになっている。

・・・やべえな。
着替えなんてあったか???

自分の手持ちの服を見て、
ゾロは考えこんだ。
ゾロがここに着て来た服がクリーニングされて置いてある。

・・・これしかねえのか・・・。
しょうがねえな。

やむを得ず、
サンジの服で身体や床のヨゴレを適当にぬぐい、
ゾロの替えの服をサンジに着せてやった。

コンピュータの画面を見ると、
きわどいところで取り引きが失敗し、
株価が下落したことをしきりに知らせていた。

ゾロは何とも言えない気持ちになった。
サンジとヤっている間に、
この一週間くらいの仕事が全てダメになっていたのだ。

やっぱりサンジがかかわるとロクなことにならねえ。
いつも、いつも、そうだ。
・・・クソ、
なのに絶対手放せねえ気がするのは何故だ。
ゾロはとりあえずこれ以上の株の下落を防ぐために、
コンピュータの画面の前に座った。
 
 
 
 
 
 

サンジはだるい身体をゆっくりと起こした。
見たこともない機能的で上品な部屋だった。
・・・ドコだ、ここ。
ぐるりと見回すと、
豪華そうなテーブルに座り、
背を向けているゾロの姿が見えた。

あ・・・オヤジシャツじゃねえ。
スーツだ。
何だ、こんな服も着れるんじゃねえか。
そういや、ずっと着てたか・・・あの服・・・。
さっきはお姉さまがいたから気がつかなかったけど、
まともな格好もできるんじゃねえかよ・・・。

ぼんやり見ていると、
ゾロが振り返ってサンジを見た。
それから立ち上がってサンジの方に近づいて来た。

・・・なんだ、
結構、スーツ似合うじゃねえかよ、コイツ。
ゾロにも衣装って・・・、
ハハハハハ。
 

「オイ、起きられるか?」
サンジは立とうとして、
力が入らないことに気づいた。

あり・・・?
力入らねえ・・・。
腰痛いし・・・、
・・・。

一気に記憶が生々しく蘇り、
赤面しかけたが、
サンジは自分の格好を見て、
動転した。
 
 
 
 
 
 

なんだこりゃあ!!!!!
なんだこりゃあ!!!!!

ブチッと音をたてて血管が切れた。
正常心もどこかにふっとんでしまった。

サンジが着ていたのは、
ゾロのぶかぶかのオヤジシャツに、
ゾロの趣味の悪いズボン。
それだけでも美意識に反するというのに、
なぜか腹巻まで装着されていた。

・・・・最悪だ・・・。
・・・・最低だ・・・。

「いや、汚れたからよ・・・」
ゾロにしてみたら、
ゾロの服には腹巻が必要だったのだ。
この服には腹巻が当たり前なのだ。

「あああああああ、オレはもうだめだ!!!!!
腹巻が移っちまう!!!!
もう一生レディに顔向けできねえ!!!!
こんなだせえ格好で外も歩けねえ!!!!」
わめき散らすサンジを呆れたように見ていたゾロだったが、
いきなりサンジを荷物のように抱え上げた。

「チクショウ!!!!
なにしやがる!!!!
放しやがれ!!!
この腹巻病原体!!!!
ずるいじゃねえか!!!」
暴れようとしたサンジは、
身体を覚えのある痛みが走り、
急に大人しくなった。

・・・いてえ。
・・・ケツがいてえ。
っていうか・・・、
コイツ・・・中出ししやがった?

「暴れると、も一回ヤるぞ。
ただし、もう服はねえ!!!!」
きっぱりと言い切ったゾロにサンジは急に低姿勢になりはじめた。
・・・ゾロならヤりかねん。

「・・・ひでえじゃねえかよ。
てめえ、オレに恥かかせやがって・・・。
他の奴にこんな格好見られたらコロスぞ・・・・」
担がれたまま
サンジはぶつぶつと文句を言った。
オシャレで女性の永遠の僕である自分が、
今や落ちぶれ果てて、
オヤジシャツに腹巻姿なのだ。
しかも、ゾロにヤられたてで、
身体も洗ってねえし、
歩けもしねえ。
最悪だ。
最低だ。
「もう、オレぁ駄目かもしれねえ・・・・」
途切れることなく、サンジは文句か愚痴だか分からないようなことをしゃべり続けていた。

ゾロはサンジを担いだまま、
社長室を出た。
 
 
 
 
 

「あっ・・・・社長・・・・、
お帰りですか・・・・。
次はいつお越しで・・・」
「分からん。
とにかくコイツを連れて帰る」
ゾロはあわてて近寄ってくる社員を追い払った。

それから本当に不機嫌なサンジを車に乗せた。

もう、いい。
家に帰ろう。
帰ってから、
また先のことを考えればいい。

・・・・オレは帰りたかったのか?
 
 
 
 
 

サンジは車の中でだまりこくっていた。
なんでいつもいつもこうなるのか。
ゾロはオレの雇い主で、
オレはコック。
・・・ナミさんは宝石を盗んだんだな。
詳しいことは分からねえけど、
今日、ウソップがいなかったのは、そのせいだな。

・・・ルフィが来たんだ。

これで仕事は終わりか。

・・・もう一つのオールブルーは・・・?
それはどうなる?

だがもうナミさんやルフィは動き始めている。
そしたら・・・ゾロともお別れだ。
こんなチンケな服を着ることも二度とねえ。
こんな状態で連れて帰られることも・・・二度と・・・ねえ。
 
 
 
 
 

「なあ・・・帰ったら、メシ食うか?」
サンジは小さな声でゾロに聞いた。
 

ゾロは驚いたようにサンジを見た。
疲れているだろう。
気を失うほどヤったのだ。
かなり泣かせたので、
まだほんのり目尻が赤い。

黙って見つめてくる、深くて青い瞳。
 
 
 
 
 
 

「食う」
ゾロは短く答えるとスピードを上げた。

そうだ。
オレは帰って、
サンジのメシを食う。

コイツのメシを食うんだ。
ずっと・・・食いてえ。

これから先も、
ずっと。
 
 
 
 
 
 
 
 


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