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オールブルー盗難現場ではあわただしく捜査員が活動を続けていた。
急いで現場にかけつけたボン・クレーとスモーカーは
あちこち破壊された建物を見て回った。

「・・・なんだこの穴はよ・・・」
「まるで何かが突き抜けたみたいねい」
何かが空から落ちて来て、
建物を突き抜け、
その衝撃で警察内部の警備設備はすべて使用不能となった。
その間にオールブルーが盗まれていた。
大掛かりな盗難事件である。

この壁の穴は人の形の穴に見えねえことはねえ。
だが、・・・ありえねえ。

警察の建物ごと破壊するという大掛かりなやり方は、
警察の威信を著しく傷つけるものだ。
破られた防弾ガラスの奥に置かれていた、
あの淡くて青い宝石はどこにも残されていなかった。

「どういうことだ、これは」
その声に、
その部屋にいたものは固まった。
葉巻きをくわえ、
毛皮のコートをまとった、
顔に傷のある大柄な男。
・・・クロコダイル警視監だ。
その能力と実績で、警察の頂点に登り詰めるのは時間の問題と言われている男。

スモーカーはこの男に会うのは初めてだった。
だが、数々の武勇伝は流れてきている。
難事件を次々に解決。
クロコダイルの手にかかった事件で解決しなかったものはない。
・・・・確かに、力はありそうだ。
だが、クロコダイルの持つ雰囲気の中に、
何か危険なものを感じる。
これはカンでしかねえが、
この男は危険だ。
独裁者の目をしている。
この男が権力の座につくと危険だ。

「0ちゃんじゃないのようっっっ!!!!!
久しぶりねいっっっっ!!!!
それが、宝石を盗まれちゃったのようっっっっ!!!
スワン、スワン」
ボン・クレーがしきりにしゃべりはじめると、
クロコダイルは嫌そうな顔をした。

「この警備の責任者を出せ」
「それはあちしようっ、あ・ち・し」

回りながら言うボン・クレーを一瞥すると、
クロコダイルは冷静に言い捨てた。
「今からは、このオレがこの事件を取り扱う」
「じょうだんじゃなーーーーーいわようっっっ!!!!!
麦わらの一味はあちし達がずっと・・・」

「不服か?」
あまりに冷たい視線に、
ボン・クレーの背筋を冷たいものが駆け抜けた。
その部屋に居合わせただれもが、
ゾクリとした。

「ボン・クレー、お前は今からオレの指揮下で行動しろ」
ボン・クレーは気押されたように、うなずいた。
「0ちゃんてば、いつの間にか出世して、ひどいわよう」
ぶつぶついいながらも、
これまでの資料を提出しているボン・クレーの姿をスモーカーは睨み付けた。

クロコダイルがそこにいるだけで、
ピリピリと空気が張りつめている。
張りつめた雰囲気の中、
捜査員たちは真っ青な顔をして捜査を続けていた。

・・・みな、クロコダイルが恐ろしいのだ。
スモーカーは新しい葉巻きに火をつけた。
こいつはとんでもねえかもしれねえ。
警察の英雄?
冗談じゃねえ。
警察の支配者で独裁者じゃねえか、既に。
こいつが頂点に登りついたら、
とんでもねえことになるだろう。
既に警視監だ。
最高の地位である警視総監まで、もう手が届いている。
 
 
 

クロコダイルはうさんくさそうにスモーカーを眺めた。
ボン・クレーはオレには逆らえねえ。
だが、反抗分子が交ざってやがるな。
この男、確かスモーカーとか言ったな。
まあ、所詮は雑魚だ。
問題ねえ。
この事件を効果的に解決して、
世論を味方につけ、
オレは警視総監になる。
麦わら盗賊団の話題は全ての市民どもが知っていることだからな。
まず、警察の頂点に君臨し、
それからこの国を盗る。
そしてこの世界を盗む。
ククク、それがオレの狙いだ。
それまで、このバカどもにはせいぜい働いてもらおう。
 
 
 
 
 

マスコミには大々的にオールブルー盗難事件の報道がされ、
クロコダイル警視監自らが捜査にあたることもはなばなしく報道された。

スモーカーは担当から外され、
自宅謹慎を言い渡された。
だからといって、
大人しく自宅でじっとしているわけにはいかねえ。
もう一度、全てのデータを洗い直していく。
オレはあのアヒルみてえな奴に気をとられすぎていたのかもしれねえ。
事件はサンジとはかかわりのねえところで起きているからだ。
 
 
 
 

誰かがドアをどんどん叩いている。
スモーカーは考え続けるのを止め、
しぶしぶドアを開けた。

「じょうだんじゃなーーーーーーいわようっっっっ!!!!!」
ボン・クレーが転がりこむようにして入ってきた。

「大変ようっっっっ。
ああ、あちしどうすればいいのかしら!!!!!
0ちゃんがああああああ!!!!」
スモーカーは回り続けるボン・クレーを嫌なものを見るような目つきで見ていた。

「あのコをMr.プリンスにするっていうのようっっっっ!!!!!」

「・・・何だ、そりゃ・・・」

「コードネームようっっっっ!!!!!
0ちゃんはコードネームをつけるのが好きなのようっっっっ!!!!
プリンスとプリンセスっていうコードネームは特別なのようっっっっ!!!!
それがついたら、
あちし達は絶対に手出ししたらいけないのようっっっっ!!!!
情人につけるコードネームなのようっっっ!!!
男なら「プリンス」、女なら「プリンセス」にするのようっっっ!!」
 
 
 
 
 
 
 

「おい、あのコって・・・」
 
 
 
 
 
 

「あのコしかいないでしょ!!!!
あんたが御執心の金髪のコよう!!!!!!」
 
 
 
 
 


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