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ウソップはびくびくしながら、
シャワーを浴びていた。
ついに「オールブルー盗難計画」は実現された。
警備が手薄になるのは、
ボン・クレーとスモーカーが、
ゾロの館を再捜査すると決めた日だ。
ウソップはそのXデーに合わせて、
昼間は出かける用を作った。
意表をつく、
警察本部爆破計画。
空から、ルフィを重機とともに落とし、
数々の火薬星をあちこちで爆破させた。
その隙に堂々とルフィは宝石を盗んだ。
カベぶちぬいたりしてたけど、バレねえのかよ。
・・・オオオ、オレには関係ねえ。
堂々と跡を残していたのはルフィだ・・・。
身体中にたちこめる硝煙のにおい。
ナミは、
「こうすれば、絶対わからないわよ」
といって、にっこりほほえみを浮かべ、
ウソップを池に突き落とした。
・・・魔女だ・・・。
あの女は魔女だ。

しかし、帰ってきても、
ずぶぬれのウソップを相手にする者など誰もいなかった。
ヨサクやジョニーはこの館で起こったことを必死で説明し続けるのだ。

捜査の途中で、
オールブルー盗難の連絡が来て、
スモーカーとボン・クレーが急遽ひきあげたこと。
なぜか美人の警部がいて、
サンジをつれてゾロの元に行ったこと。
彼らは興奮しながら、べらべらとしゃべり続けていた。

ようやっと解放され、
やっと暖かいシャワーを浴び、
すっきりし、
ウソップはひといきついた。
今回の仕事も完璧だった。
さすが、天才にして無敵の大盗賊、ウソップ様だ・・・。
数々の困難な仕事をちぎっては投げ、ちぎっては投げ・・・。

ウソップはうっとりとしながら、
シャワー室から出ようとした。

その時だ。
勢いよく扉が開かれ、
誰かが飛び込んできた。
 
 
 
 
 
 

サンジはシャワー室から出て来たウソップに気づいた。
ウソップは頭にタオルを乗せただけの姿だったが、
ウソップの格好よりも、
人がいたことに、とんでもなく驚いた。

「ぎゃあああああああああ!!!!」
サンジは動転して思わずシャワー室から飛び出した。

見られた!!!!!
ウソップに見られちまった!!!!!!
オレの腹巻姿を!!!!!
どうすりゃいいんだ!!!!
最悪だ!!!!

ゾロはサンジの叫び声を聞いて、
手元にあった刀をつかんで走り出した。
ヨサクとジョニーは顔を見合わせて、
シャワー室の方に走り出した。
チョッパーも声の方へ向かった。
急な連絡をうけ、館に着いたばかりのミホークとクロも声の方に走り出した。

サンジはあわてて逆方向に駆け出しかけて、
固まった。
四方八方から、
いろいろなヤツがあらわれたのだ。
 
 
 
 

・・・コロス。
長っパナ・・・。
ゾロは裸のままのウソップと涙目のサンジを見て、
刀を構えた。

ウソップはサンジの悲鳴で、
皆が集まり、
なおかつ何かカンチガイをしているような雰囲気に滝のように汗を流していた。
「ち・・・・違うんだ・・・。
ここここ、これは・・・。
・・・オオオオ、オレは何もしてない・・・」
ひーーーー、
ゾロ、誤解してる・・・。
斬る気だ・・・。
この天才にして盗賊の中の盗賊のウソップ様を・・・。
サンジには何もしてねえ・・・・。
あわわわわ。
 
 
 
 

ゾロは躊躇なく刀を降り下ろそうとした。
だが、誰かに体当たりをされて、
よろめいた。
・・・誰だ、
オレの邪魔をするやつは。
・・・そいつも・・・斬る!!!
ぶつかって来た奴に刃を向けようとして、
唖然とした。

サンジだ。
ゾロの身体を盾にするようにして、
隠れながら、
わめき始めた。

「あああああ!!!!
全部てめえのせいだ!!!!!
オレの人生最悪にして最低の格好を見られちまったじゃねえかぁぁぁぁ!!!!!!!!
オレまで、てめえと同じ腹巻の国の生まれだと思われちまう!!!!
レディに言えるわけねえだろ!!!!
オヤジシャツを着てしまった過去があるなんて!!!!!!!!」

あァ?
ウソップが何か不埒なことをしたんじゃねえのか?
ゾロはやっとことのなりゆきに気づいてきた。

ウソップはだらだらと涙を流し続けていた。
どうみても、何かしたとは思えない。
 

サンジはわめき続けている。
「オレぁもう駄目だ!!!!
こいつら皆、オレの姿を見てしまったかもしれねえ!!!!!
ワースト・ドレッサーナンバー1のてめえが腹巻なのはあたり前かもしれねえけど、
ベスト・ドレッサーのこのオレが、オヤジシャツに腹巻だなんて!!!!!!!!
もう、道を歩くこともできねえ!!!!
まともに生きていけねえかもしれねえ!!!!
もうお天道様のあたる所には出れねえかもしれねえ!!!!」
 
 
 
 
 
 

・・・サンジ、
そこまで言うか・・・?
さすがのチョッパーも汗を流していた。

・・・アニキ・・・、
気の毒に・・・、
えれえ言われようだ・・・。
アニキのいつもの服は、
史上最低の服みてえじゃねえか。
今は仕事用のパリっとしたスーツ着て、
男前度も上がるってなもんだが・・・。
驚いてかけつけたヨサクとジョニーも肩を落とした。

ミホークとクロも、
どう反応していいかよく分からなかったが、
サンジがバカバカしいことを言っているということだけは分かった。
ゾロはサンジが来たので、
仕事を途中でほうり出して来たようだ。
そこまで入れこんでいる相手がこの始末。
・・・・。
・・・悪食も過ぎる。
 
 
 
 
 
 

サンジは必死でゾロの後ろに隠れようとし続けた。

サンジのアニキ、
腹巻のとことか、
ちょっと見えてるんですけど・・・。
ちらちらゾロのアニキ越しにこっち見てるのとかも・・・・。
必死で隠れてる姿はちょっとカワイイかもしれねえけど・・・。
ゾロのアニキの服着たら、
体格差っていうか、
全然違うってのがスゲエよく分かるし・・・。
 
 
 
 
 
 

「サンジ・・・オオオ、オレは何も見てねえ・・・・。
お前がゾロの腹巻してるなんてことは・・・・」
ウソップはじりじりと後ずさりしはじめた。

「見てるじゃねえか!!!!!!!!
なんでゾロの腹巻なんだって分かるんだっっっっっ!!!!!」
動転したサンジはますますまずいことを口走った。

・・・やっぱり、
アニキの腹巻なんだな・・・・。
ヨサクとジョニーは顔を見合わせた。

「オオオ、オレは池に落ちてだな・・・。
それでシャワーを浴びてただけなんだ!!!!!!」

・・・そういや、
サンジの身体からはゾロのにおいがしてる。
チョッパーは激しく汗を流しはじめた。

・・・・サンジのアニキ、
なんでシャワーなんか・・・。
それも着たくないゾロのアニキの服なんか着て・・・。
ヨサクとジョニーは赤面した。
あわわわわわ、
これ以上は・・・聞いちゃいけねえ。

「うるせえ!!!!!
こんなことになったのは、
全部てめえのせいだ!!!!!」
サンジは今度はゾロの背中をどんどんと叩きはじめていた。
 
 
 
 
 
 

ミホークはしばらくその様子を見ていたが、
ため息をついた。
「我々は退散することにしよう。
痴話喧嘩をいちいち間にうけるほど暇ではないし、
そういう時でもなかろう。
ゾロ、我々は盗賊団にひとあわふかす為にすることがあるだろう。
こういうくだらん事にさく時間はないのだ」

皆の顔に緊張が走った。
そう、「オールブルー」が盗まれたのだ。
この世の最高の宝石といわれる伝説の秘宝が・・・。
こんなところで、いい争っている場合ではない。
 
 
 
 
 
 

ゾロはミホークをじっと見て言った。
「わかった。
だが、コイツはオレのもんだ。
誰であろうと手を出すやつは、斬る!!!」

・・・アニキ・・・、
すげえ、堂々と言い切りやがった!!!!
ミホークやクロの前でも・・・。
さすがだ・・・、
かっこいいぜ!!!!
さすが、ゾロのアニキだ!!!
・・・って、斬るんかよ・・・・。
 
 
 
 
 

「だったら、てめえでてめえを斬りやがれ!!!!!!!
誰のせいでこんな目にあってると思ってるんだ!!!!!!
腹巻の呪いが移ったらどうしてくれる!!!」
またわめきはじめたサンジ。
相変わらずゾロにしがみついたままで、
悪態をつき続けている。

その姿をヨサクとジョニーは正視できなかった。

サンジのアニキ・・・、
自分からヤられましたって言ってるようなもんだ。
あんなでけえ声あげなけりゃ、
腹巻姿も見つかりゃしねえし、
余計なこと言わなけりゃ分かりゃしねえ。
こんだけ文句いいながらも、
ゾロのアニキの陰にかくれて、
離れようとしねえし・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 

「あの・・・服を着ても・・・」
びくびくしながら言ったウソップに、
ゾロは冷たい視線を投げかけた。

「ああ」
ゾロが刀を下ろしているのを確認して、
ウソップはこそこそと服を手にした。
・・・うう、
こんな家・・・もう嫌だ。
悲鳴を上げて暴れるのはオレ様じゃないのか・・・。
この偉大なるウソップ様がかいた恥にくらべたら、
サンジのなんて・・・・。
よく考えれば、
ウソップ様の玉の肌を皆に見られてしまったではないか・・・。
ガボーーーーン。
もう、おムコにいけないかも・・・。
 
 
 
 
 
 


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