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ナミは巨大な屋敷の椅子に優雅にすわっていた。
この日のためにあつらえたドレス。
オレンジの髪に合わせて、
淡いオレンジで胸元の大きく開いたドレス。
くだらない成金息子をひっかけて、
このパーティーの同伴者となった。
あらかじめ手に入れておいた間取りによると、
エースに親しいものは、
人の多いにぎやかな方ではなく、
やや外れたこちらの館で過ごすらしい。
・・来た!!
足音がして振り向くと、
その男がそこに立っていた。
・・・この男が・・・、
ロロノア・ゾロ・・・。
魔の淵から這い上がってきたような目をしている。
ナミの背を駆け抜けたのは紛れもなく恐怖だった。
・・・見抜かれた?
一瞬の躊躇。
「ごめんなさい。
迷ったみたいなの」
あわてて取り繕う。
この男、
恐ろしい男だわ。
物凄い気を出してる。
「誰だ、お前」
低い、腹の底から絞り出されるような声。
まるで獲物を前にした肉食獣のような表情。
ナミは一歩も動けなかった。
どくどくと血管が波打ち、
汗が流れ落ちた。
甘くみていた。
資料には「世界一の剣豪」を目指すと書いてあったのに。
今すぐに、
斬りそうな目つきだ。
私は命まで賭ける気はないのだ。
この男に隙など微塵もみられない。
動けない。
動いたら、
斬られる。
それは確信めいた予感だった。
この男は本能で私を敵とみなしている。
恐ろしい男だ。
目を合わせただけなのに。
「うわあああああっっっ」
隣の部屋から不意に大声が聞こえて来た。
ゾロがそちらを振り向いた。
その隙にナミは転がるようにして、
その部屋から飛び出した。
危険だ。
あの男は危険。
一つ間違えば、
命を落とす。
あの男自身が危険すぎて、
世に触れられないのだ。
だけど、宝石はあの男が持っている。
どうしたらいい。
どうしたら。
あいつはただものじゃない。
あの男に弱点はないのかしら。
頭脳を使うのよ。
そして、私は「お宝」を手に入れる。
あきらめるもんか。