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ゾロは声のした部屋へ足を踏み込んだ。
所狭しとガラクタのようなものが散乱しており、
その中心に男が重なりあって倒れている。

「てめえ、なにやってるんだ」
毎度のことで突拍子もないことに慣れているゾロもさすがに呆れ果てた。

先ほどの大声は下敷になっている男から発せられたようだ。

「てめえ、どけ!!!
このクソヤロウ!!!」
聞き覚えのある声と口調・・・。
エースの下から覗く見覚えのある印象的な金髪。

案の定、
顔を赤らめて涙目になったサンジがエースの身体の下からはい出してきた。
服の袖でやけにごしごしと口を擦っている。

ゾロはサンジを見て、
それから今日のパーティーの主催者であるエースを見た。

・・・見ると、
エースは寝ていた。

サンジは混乱していた。
ゾロがパーティーに行くというので、
ついて来たのはいいのだが、
「ちょっと待ってろ」と言ったまま、
いつまで経っても帰ってこないので、
自分だけで会場に行こうとして広い館をふらふらしていたのだ。

そしたら、
ガラクタ部屋のようなものがあって、
突然、男が降って来た。
これがレディだったなら、
速攻で受け止める自信がある。

ところはそいつは男で
落ちた時に・・・。
そいつの顔が急接近してきて、
なんちゅうか唇が触れあってしまったのだ。

なんという不運!!
幸い血とかは出てないが、
クソ、
なんでレディが落ちてこねえんだ。
げー、今日はツイてねえ。
こりゃ事故だ・・・。
気にするな、
気にするな・・・。
今からレディたちと、
恋を語らねばならんのだ。

サンジはぶつぶつ呟いていて、
エースがゾロに起こされたのに気づかなかった。
 
 
 

「あー、寝てたわ」
ぼりぼりと頭をかきながら、
半裸のエースは身を起こし、
ゾロを見て、
それからぶつぶつ言いながら口を擦っているサンジを見た。

「ああ、今、オレとチュウしたのはお前だな!!」
ニヤリと笑う悪びれない姿に、
サンジがキレた。

「言うなーーー!!!」
エースの腹にサンジの蹴りがきれいに入り、
エースは壁際までふっとばされた。
部屋中に積み上げられたガラクタがエースの上にガラガラと崩れ落ちた。

大きな音に驚いた使用人たちが飛んで来た。
「エース様!!!!
今の騒ぎは・・・」

「んあ、何でもないさ・・・」
エースはガラクタの中から平然と答えた。

「エース様!!!
ふざけている場合ではありません!!!
広間ではパーティーが始まっております!!!
大体、こんなところに拾ってきたものをどうして置くのです!!!!
なぜ、外に出るたびにゴミをあさってくるのですか!!!
この家の当主として、
何がふさわしいかお考えください!!!」
執事のイガラムのあまりな剣幕に、
サンジはあっけにとられていた。

この家の主人、
エースも名だたる大富豪だ。
・・・ゾロの幼馴染みなだけあるぜ。
イカれてる。
・・・金持ちってみんなこんなアホなのか?

あぜんと見ていると、
いつの間にかエースが側に立っていて、
何故か肩を抱かれていた。

サンジのこめかみに青筋が入る。
もう一度蹴ろうとした時、
何でもなかったようにすっと手が離れた。

「あー、んじゃ、よそいきにするか。
で、ゾロ、紹介してくれねえのか?」

サンジは自分のことだと気づいた。
「ああ、オレはこいつのコックだよ!!!
大体、てめえが居なくなるから探してやったんじゃねえかよ!!!
迷ってたのか、ええ!!??」
喋っているうちに、全てはゾロのせいであると考え始めた。
自己紹介もそこそこにゾロに絡む。

図星なのだが、
ゾロもカチンと来る。
「なんだと、コラ。
てめえが来たいっていうから、
連れて来てやったんじゃねえか!!!」
険悪な雰囲気がたちこめるのを、
エースは面白そうに見ていた。
 
 
 
 
 
 
 
 

「なんの騒ぎなの?」
この部屋にふさわしくない水色の髪の少女が顔を出した。

途端にサンジの態度が豹変した。
目はハアトになり、
少女のところにかけよる。

「ああ、美しいマドモアゼル!!!
貴女に出会えた今日という日に乾杯を!!!!」

別人のような変わりぶりに、
エースとゾロは顔を見合わせた。

・・・アホだ。
こいつは思った以上にアホだ。
ゾロはサンジが口を開くと女のことばかり喋っていたことに思い当たった。
確か、今日もパーティーに行くと言ったら、
レディをひとりじめにするとか、
隠す気だとか、
訳のわからんことをガーガー言ってた。
サンジのビビを見ての変わりぶりは尋常じゃねえ。

・・・こいつにはプライドってもんはねえのか。
女にぺこぺこして・・・。

少女は驚きながらも、
返事を返す。
「・・・ビビよ」
「ビビちゃんて言うのか!!!
なんて素敵な名前!!!」
はじけまくるサンジの襟をゾロが掴み、
ずるずると部屋を出ていく。

「離せよ、この怪力男!!!
今日は腹巻きじゃねえからっていい気になるんじゃねえぞ!!!」
部屋の外までわめき声が聞こえている。
 
 
 
 
 

「・・・なんなの。あの人」
ビビが脱力したように言った。

「ゾロが連れて来た」
エースの答えにビビは表情を動かした。
「めずらしいわね。
私はあなたのお客かと思ったわ」
ビビは微笑んで返す。

エースは様々な客を連れてくる。
年令も職業も性別もさまざま。
とにかく気に入ればいいらしい。
ビビは子供のころからそれを見て来たから、
ある程度のことはわかる。
好奇心が旺盛で、
手も早い。

人当たりはいいし、
よく気がきく。
でも、どこまでが計算かもよく分からない。
これだけ接していても、
エースは何を考えているか分からない。
その点、ゾロやコーザとは違う。

・・・いけない。
はやくいかなくちゃ。
たしぎが待ってるはず。
彼女、落ち着きないから、
もうグラスの20や30は割ってるかもしれない。

ビビはあわてて、
パーティー会場へと向かった。
 
 
 
 
 


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