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オールブルーについて伝えられることを記す。

「その宝石に光があたると、
きらきらと明るい光をたたえて輝いた。
それは光のオールブルーとよばれ、
社会的な地位や権威の象徴である。」

「もう一つの宝石に光があたると、
光をすいこみ、深い海のように輝いた。
それは闇のオールブルーとよばれ、
野望や欲望の象徴である。」

「オールブルーと呼ばれる宝石は一つではない。
世界一の宝石は二つあるのだ。
どちらも素晴らしい石であるが、
それをともに手にできるものこそが、
はじめて最高の権力と幸せを手に入れることができるのだ。
よって、この石は二つで一つなのである。
それはこの石を持つもののみに伝えられる秘密なのである。
どちらが欠けても"伝説の秘宝"ではなくなってしまうのだ。
これが"伝説の秘宝オールブルー"の秘密である。」
 
 
 
 
 

コンピュータの画面に映し出された文字をクロコダイルは笑みを浮かべて眺めていた。
伝説の秘宝の一つはどこかの盗賊がうばった。
それを取り戻し、
おそらくロロノア・ゾロ邸に残されているもう一つの宝石も手に入れる。
宝石のコレクションは悪くねえ。

闇のルートから手に入れた情報によると、
警察で警備されていた時以外では、
オールブルーを見たものは誰もいない。
ボン・クレーとスモーカーが警備していたのは「光のオールブルー」とよばれる石だろう。
ロロノア・ゾロは「闇」の方を自分の手元においている。
あのサンジもロロノア・ゾロの手元だ。

ロロノア・ゾロ。
ムカつく若造だ。
警察を警察とも思って無い。
あのボン・クレーを半殺しにして送り返してくるとはな。

ボン・クレーの仕掛けた警備画像を時々見るが、
ミスター・プリンスは妙な格好をしている。
主要な場所や通り道に仕掛けてあるのだが、
たまにしか画面にうつらず、
うつったとしてもこそこそしている。
たまに拾えた音声は、
無意味なことのみ。
サンジのデータを見たが、
調書等の発言を見ただけで、
かなりなアホだとわかる。
今までにないタイプだ。

だがそれでも食指が動くのだ。
生きがよく食いごたえがありそうなやつだ。
黙って大人しくしてい姿は、
なかなか美味そうだ。

ギンは今まで確実な仕事をしている。
今回はクセのある仕事だ。
ロロノア・ゾロは簡単にサンジを攫わせないだろう。
だがギンならば・・・。
Mr.99という特殊なコードネームで恐れられる「鬼人」。
あの男に失敗はない。
冷酷にして非情な男だ。
そちらの面は問題ない。

問題はこざかしい盗賊団についてだ。
現在の所、
動きがつかめていないらしい。
大胆不敵な計画だ。
何人共犯者がいるかしらんが、
必ずつかまえて殺してやる。
このクロコダイルのもとで好きなことするとはな。
なぶり殺してやる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ナミはふるえる手で、
パソコンのスイッチを切った。
クロコダイルが、
警備を担当した瞬間から、
警察のコンピュータの情報がめちゃくちゃになった。
それまで整然と機能していたものが、
まったく繋がらなくなった。

裏の手を使って、
危険きわまりない方法で見たデータ。
一度きりしかアクセスは許されていない。
二度目はできない。
そこにはクロコダイルが命令している独裁的な内容が羅列されていた。

データを見たのが分かっても、
消される。

クロコダイルのコンピュータに入っていたオールブルーの情報。
もう一つオールブルーがあるとしたら、
ゾロが持っている。

これ以上の盗みは危険。
危険だ。
つかまったら、
恐らく死しかない。

クロコダイルには正義などない。
残酷で無情な死しか残されていないだろう。

そこにはMr.2に対する処刑命令や
スモーカーを反乱させる計画書もあった。
スモーカー警部を反乱させて、
処刑する。
コードネームで書かれていたけれど、
スモーカーの事だと分かった。

こんなの警察なんかじゃない。
 
 
 

ウソップの言っていたMr.2のこと。
そしてミスター・プリンスのこと。
 
 
 

サンジ君があぶない。
 
 
 
 

Mr.2の後任はMr.99に。

Mr.99。
あらゆる事件の始末屋的存在で、
その男を見たものは誰もいない。
見たものは「生きてはいない」から。

ボン・クレーはサンジ君を拉致するためにゾロの家に行ったんだわ。
誰一人その事実に気づかず、
手当てまでして帰したのね。
・・・・バカばっかりじゃないの!!!
 
 
 

どうすれば、いいの。
どうすれば・・・。
 
 
 

サンジ君を守ること。
闇のオールブルーを手に入れること。
光のオールブルーを守ること。
 
 
 

難しい。
とても難しいわ。
私の作戦は失敗だった?
確かに宝石は手に入れた。
だけど、このままでは・・・、

ナミにはどうにもできない所まで事態は悪化している。
警察のパソコンにアクセスすると、
逆探知がかけられ、
ゾロの館の監視も情報も、クロコダイルの手に握られている。
警察内部の中の情報は完全に凍結されている。
クロコダイルの動きが分からないシステムに切り替わってしまった。
外部からはもちろん、
内部の人間にも何一つわからないだろう。

下手に手が出せない。
つかまったら、
殺される。
クロコダイルの冷酷さや、
憎悪や執念を感じる。

すべての情報が断たれた今、
私はどうすることもできない。
 
 
 
 

分かっている。
我々は反逆者であり泥棒であり、
おたずね者だ。
まっとうに生活できるなんて思っていない。
つかまることがないと考えたわけじゃない。
でも、イヤな金持ちからの盗みは快楽であり、
反乱であり、
貧困からの逆襲でもある。
 
 

いつの間にか大切になってしまった、仲間。

一つ手元にある宝石を持って、
サンジ君を見捨てることもできる。
でも、やっぱりそれはできない。
以前の私なら、
宝石だけもって逃げただろう。

サンジ君はバカみたいに低姿勢で常に有頂天で、
私にはメロメロリン。
そのくせ今にゾロとラブラブみたいだ。
「一生面倒みる」
とかゾロに言われてたらしいじゃないの。
あのサンジ君にあのゾロ。
われナベにとじぶたってやつかしら。
きっとゾロはサンジ君を手放さない。
どうせ仲間として盗みができないなら、
ここですっぱり切れてしまった方がいい。
 
 
 
 

でも、やっぱり、見殺しにできない。
光のオールブルーを手放すことになっても。
 
 
 
 
 
 

「どうした、ナミ」

振り返るとルフィが立っていた。
冒険に命をかけた、
私のルフィ。

あんたなら私たちの道を切り開いてくれる。
 
 
 
 
 
 

「助けて、ルフィ」
 
 
 
 
 
 


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伝説の秘宝オールブルー

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