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ゾロは自分にしがみついたまま眠っているサンジの髪をなでた。
同じ男なのに、
同じようでいて全然違う。
やわらかい髪を手ですいてみる。
さらさらと手をすり抜ける金の髪。

ただ触れているだけなのに、
身体が熱くなる。
もっともっと欲しくなる。
しばらくこうしていよう。

ゾロよりわずかに低い体温。
いままでは事後はうざったいだけなので、
すぐに寝た相手と離れた。
なのになぜだか離れたくねえ。
離したくねえ。
てめえはココにいればいいんだ。
いつも、ココにいれば。
 
 
 
 

満ちたりた気持ちで眠りに落ちかけたが、
人の気配を感じ、
ゾロは剣を手にとった。
気づかなかったが、
この部屋には誰かがいる。
戦いで背後をとられたような驚き。
戦慄が背筋をかけぬけた。

いつからだ?
気配も感じさせず、
この部屋でずっといたというのか・・・。
バカな・・・。

「誰だ!!!」
 
 
 
 
 
 

ゾロが怒鳴ると、
ベッドの下から誰かが這い出してきた。
麦わら帽子をかぶった黒髪の少年だ。
手には何かが握られていて、
少年はそれを食っていた。
口のまわりには食い物のかすが沢山ついている。
・・・なんだ、コイツ・・・。
ゾロは眉をつりあげた。
なんで食ってるんだ。
ってソレ、サンジが夜に作ってた菓子の元だよな・・・。

「・・・んあ、誰だてめえ?」
ゾロはむっとした顔でたずねた。
 
 
 
 
 

「オレか?
オレはモンキー・D・ルフィ!!!
ハナヨメの父だ!!!!!」
ルフィは菓子のかたまりを握りしめたまま、
力強く宣言した。
 
 
 
 
 

ゾロは目の前にいる少年をじろりと見た。
はァ?
ルフィ?
目立つ麦わら帽・・・。
まさかな・・・?
こんなガキが・・・?
だが、どうしてここにいる?

「麦わら盗賊団か?」

「おう!!!」

ルフィが即答し、
ゾロは脱力し、あきれはてた。
・・・言うか、普通。
けど、堂々としたやつだな。
たしかに大物かもしれねえが。
ていうことはオールブルーを盗みに来たのか?
いや、待てよ。
こいつは何て言った?
何か妙なこと言ってたよな・・・。
ハナヨメ?
父?

「ゾロ、あいさつしろ!!!!
サンジさんをオレに下さいって言え!!!」

あァ?
ゾロは話が見えず、
首をかしげた。
だが、サンジのことについて言われているのは分かった。

ハナヨメって・・・、
誰だそりゃ・・・。
ああ、このクソコックのことだな。
あいさつ?
ルフィにしろってことかよ・・・。
父・・・?
待てよ、コイツはどうみてもオレより年下だろうが!!

「・・・ってなんでてめえが父なんだ!!!」

「サンジはオレのコックなんだ!!!
身寄りがねえから、
オレが父親がわりだ!!
ヨメに欲しいならきちんとあいさつしろ!!
オレが認めた男にしかサンジはやらん!!!」

何だそりゃ・・・。
ヨメって・・・。
「このアホはオレんだ!!」
ゾロはきっぱりと言い切った。
 
 
 
 
 

サンジは誰かが言い争っているのをうとうとと聞いていた。
・・・ゾロのやつ、
何わめいてんだよ。
人がいいキモチで寝てるのに・・・。
ヨメがどうしたって?

あ・・、
ルフィじゃん。
なんでこんなところにいるわけ?
なんだ、またつまみ食いしてんのかよ。
バレバレじゃねえか。
・・・ソレ、明日のパイの生地じゃねえのか・・・。
 
 
 
 

「勝手に食うなーーーーーー!!!」
サンジははね起きて、
速攻でルフィを蹴ろうとしたが、
腰に力が入らずへたりこんでしまった。
大声で怒鳴ったつもりだったが、
声はかすれていて、
髪はぼさぼさ、
さんざん喘がされて泣いたので、
まだ目ははれている。
身体のあちこちにはっきりと残る情事の後。
そのまま寝てしまったので、
あちこちベタベタしている。
サンジは床にぺたんと座り、
困ったような顔をしてゾロとルフィの方を見ていた。

ルフィとゾロは言い争っていたが、
同時にサンジの方を見た。

うおっ・・・、
なんてエロいんだ!!!
ゾロはサンジをくいいるように見てから、
我に返った。
ルフィを見ると、
ルフィの目がキラキラと輝いている。
目の前にオイシそうなものがあるのだ。
食いたくなるにきまっている。

・・・やべえ。
本能でルフィを敵にまわすのはヤバいと感じた。

ゾロはあわててサンジにかけよると、
抱き上げた。

「サンジさんをオレにください!!!!
言ったぞ!!!!」
ルフィを睨みつつ、どうみても怒った声で威丈高に「お願い」する。
 
 
 
 

サンジは抱き上げられてやっと今の状況に気づいた。
なんでか知らないが、
ルフィがゾロの部屋にいて・・・。
ゾロとヤリたてのところを見られちまった!!!!!
「ぎゃああああああ、
どうしてくれんだよ!!!
このマリモヘッド!!!
この腹巻星人!!!
また誤解されちまうじゃねえかよ!!!」
抱き上げられたまま、
力のない蹴りやパンチをゾロに浴びせかけ続けた。

ひとしきりわめいた後で、
ターゲットをルフィにうつす。

「勝手にキッチンあさるなっていつも言ってるだろ!!!
それは作りかけなんだよ!
・・・オイ、
てめえナミさんに見たことを言うんじゃねえぞ!!!
言ったらオロすぞ!!!!」

「えーーーー、
言っちゃだめなのか・・・。
オレずっと食いならがらいたから、
サンジがヒィヒィ言って喜んでたとか・・・・」

「ぎゃーーーーーー!!!!!!!
てめえ死ね!!!!
百回死ね!!!!!!!」
じたばたするサンジをゾロはしっかりと抱きとめている。
暴れてもがっちりと押さえ込まれてびくともしない。
 
 
 
 
 

「ルフィ、てめえもう帰れ。
食い物とっていっていいから・・・」
ゾロの言葉にルフィは目をキラキラ輝かせた。

「しししし。
お前いいやつだな、ゾロ!!!!」
 
 
 
 

ルフィが厨房の方に走りさるのを見て、
ゾロは少し安心した。
あのまま、
サンジを食わせろなんていい出したらやべえ。
いいそうな雰囲気になりかけてたからな。

ゾロはサンジをかかえてシャワー室に返ってきた。
さっさと洗っちまおう・・・。
この姿のサンジを他のヤツに見せるのはやべえ。
あのルフィは要注意だ。
あいつのキラキラした目、
あれはやべえ。
食い物見るのはいいが、
あの目でサンジを見るのはいけねえ。

・・・・ん、
何だこりゃ?
シャワーを出したままでそのままにしておいたシャワー室だったが、
シャワーは止められており、
なぜか床には大量の血痕がついていた。

・・・何があったんだ。
おびただしい血が点々と床に残っている。

脱ぎ捨てられたままのサンジの服。
その近くに大量の血痕が残っている。
・・・おかしい・・・。
ゾロは鋭い目であたりを見回した。
人の気配はない。

それから、
ある事実に気づいた。
サンジが脱いだ服の中でなくなっているものがあるのだ。
 
 
 
 
 
 

・・・腹巻が、なくなっている!!
 
 
 
 
 
 
 


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