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「サー・クロコダイル!!!!
Mr.99がっ、
やられました!!!!
瀕死の重傷です!!!!!」

突然の情報にクロコダイルは眉間にしわをよせた。
Mr.99にはある任務を言い渡してあった。
ゾロの屋敷に潜入したという情報を受けていたので、
そろそろよい知らせを持って帰ってくるかと思っていたころだ。

「血だらけで前後不覚になっています!!!!
外傷は見当たりませんが、
出血が止まらず、
何か特殊な武器でも使われたかと思いますが!!!!」

Mr.99。
なかなか使える男だと思っていたが・・・・。
非情で残酷な殺し屋。
あの男を倒したのは誰だ。
あの屋敷の一体誰が?

ロロノア・ゾロか。
剣豪世界一を目ざす男。
なかなか剣の腕は立ちそうだが、
所詮オレの敵じゃねえ。

不様な負け犬を見るのは趣味ではないが・・・、
ギンは剣で破れたのでなければ、
一体何に破れたというのか?

「連れて来い」
命令すると即座に血だらけのギンが運びこまれてきた。
 
 
 
 
 
 

「失望したぞ、Mr.99」
ギンはたゆたう意識の中で、
クロコダイルの声を聞いた。

・・・クロコダイルの冷えた声が聞こえる。
オレは任務に失敗したわけだよな。
消されるのか・・・。

計画は完璧だった。
人目につかねえが、
サンジさんが必ず来る場所。
シャワー室。
オレはそこに潜入して待ち伏せた。
麻酔薬をポケットにしのばせ、
サンジさんを拉致する。

待ちくたびれたころに、
サンジさんはぶつぶついいながらあらわれた。
そして、オ・・・、
オレがいるのにも気づかず、
服を脱ぎ捨てたのだ!!!!
オレは誓ってそれまでサンジさんに邪な感情など抱いちゃいなかった。
けがれなき天使のような人なんだ!!!
邪な目で見ちゃいけねえ!!!
しかし、目の前にあらわになった白い体を見た途端、
オレの意識はふっと遠のいた。
同時に鼻血がぽたぽたと落ち始めた。

そこへあの男、
ゾロが来た。
ああ、サンジさん!!!!
あの男の前でなんてかわいい顔をするんだ!!!!!
オレは動悸・息切れ・目眩・ひきつけを起こし、
立っていられなくなった。
血がどくどく流れているのが分かったが、
その場でいたらオレはもうダメだと悟った。

こんな殺しもあるんだな。
オレは殺されちまったんだ、
あの人に・・・・。
思い出すだけで、
胸が高鳴り、
体じゅうがざわざわして、
頭がおかしくなる。
そうだ殺されちまったんだ。
今までのオレは死んだ。
クロコダイルへの忠誠や、
クロコダイルへの恐れすらもう感じねえ。

もう何がどうなってもどうでもいい。
それまでの憎しみとか、
しがらみとか、
そういうものは何も気にならねえ。

今までのオレは死んじまったのだ。
サンジさんに殺されたのだ。

死因は悩殺。
倒れた先に落ちていた、
サンジさんがしていた腹巻・・・・。
サンジさんの腹を暖めていたと思うだけで天にも登る心持ちだ・・・・!!!!
ああ、サンジさんっっっ!!!!!
墓碑名には「哀れな男、愛に死す」とでも記してくれ。
オレはあんたに悩殺されちまった!!!!
なんて罪な人なんだ・・・・。
 
 
 
 
 
 
 

クロコダイルは急にどくどくと血を流し始めたギンを、
じっと観察していた。
突然、大量に血を流し始めるギン。
明らかに様子もおかしい。
どうやら意識も朦朧としているようだ。
どくどく血を流しながら、
うわごとのように何かつぶやき続けている。

血にまみれた布のようなものを握りしめて、
つぶやき続ける姿は異常だ。
頭がおかしくなったのか?
クロコダイルの言葉に反応すらせず、
あの冷徹さの微塵も感じられない。

何がこの男に起こったのかは分からない。
だが、すでに廃人状態に見える。

これが鬼人のギンか・・・。
別人だ。
こんな男にもう用はねえ。
だが・・・、
この姿はどうだ。
・・・もう殺すほどの値うちもねえ・・・。
オレが手を下すほどのことでもあるまい。

「この男を処分しろ。
Miss.99を呼べ」
 
 
 
 

クロコダイルの命をうけ、
ギンが連れ去られた。
あのままほっておいてもじきに死ぬ。

代わりの手ごまならいくらでも手に入る。
クロコダイルの記憶にも残らないような部下が数え切れないくらい仕えている。
その誰もをクロコダイルは必要としていなかった。
全ては目的のための使い捨ての道具にしかすぎない。
 
 
 
 

代わって豪華な美女があらわれた。
 
 
 
 
 

「来たか、Miss.99」
 
 
 
 
 

豪華なマントに目立つ帽子。
華麗な美女はにっこりと笑った。
 
 
 
 
 

「そう、私はMiss.99。
あなたのしもべ。
目的のためなら手段を選ばない女。
アルビダという名は捨てたのよ」
 
 
 
 
 
 


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