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Miss.99ことアルビダは、
真っ暗な中で聞き耳をたてていた。
私の任務はこのナイスバディをもってして、
Mr.プリンスを虜にして拉致すること。

私の欲しいのはゾロだけ。
ずっとゾロは私のものだった。
だけど、ある時から、
なぜだか私から急に興味を失った。
私に会おうともせず、
電伝虫もとりつぎもしない。

私は言いよる男たちをふり払い、
悪の手先になった。
するのならケチくさい悪でなくて、
クロコダイルくらいの大物の元で働かないと。
人を思うままに陥れるのは快感だ。

クロコダイルが気に入った男は私の知っているお気楽男だった。
私を見るとひざまずき、
ハートの嵐。
賛美の言葉しか口にしない、
軽薄なコック。
この私を誉めたたえるのはあたりまえだから、
歯牙にもかけなかった。
クロコダイルが彼を夜の相手に選んでも、
私にはどうでもいいことだった。

だが、この任務を与えられて初めて知ったとんでもない事実。
ロロノア・ゾロと肉体関係あり?
信じられなかった。
まさか、あのゾロが、
この美貌のアルビダをすてて、
男に走っていたなんて・・・。
それもお調子者の女好きに・・・。
そう、サンジは邪魔者。
邪魔者には消えてもらうに限るわ。
そうすれば、全ては元にもどる。
そうよね。
再び私の思いのままに。
 
 
 

外からはぼそぼそとした声が聞こえる。
 
 
 

誰かそこにいるのね。
Mr.プリンスの声だわ・・・。
・・・何?
腹巻の国って何なの?
意味が分からないわ・・・?
 
 
 

アルビダはいらいらしながら、
神経を外に集中し続けた。
やがて沈黙が訪れ、
静かな気配が伝わって来る。

・・・誰もいないみたいね。

アルビダはそっと大型冷蔵庫の戸を開けた。
そこから出ようとして、
部屋の隅で膝をかかえて座っているサンジとばっちり目があった。
 
 
 
 
 

サンジはウソップからまた腹巻を返され、
うらぶれた気分で腹巻をつけていた。
せっかく買ってもらった大型の冷蔵庫に食材を詰めねえといけねえ・・・。
そう思いながら、
ぼんやりと冷蔵庫を見ていたら、
突如扉が開いて、
中から夢にみた美しいアルビダお姉様があらわれたのだ。
一瞬で目がハートに変わる。

「ああああ、
お姉様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
ゾロでなくオレに会いにいらしたのですね!!!!!
ステキだーーーーーー!!!!!」
メロメロリンになりつつも、
サンジは自分の立場を思い出して、
素早く冷蔵庫の後ろに隠れた。

「太陽のように美しい貴女に照らされたオレは、
光を待ち望む草木のようです。
ああ、貴女なしでは生きていけないというのに、
なんという悲劇!!!!!!
オレには腹巻の呪いがぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!」

「・・・ちょっと・・・・」
アルビダはサンジの様子をうかがった。
サンジはすばやく冷蔵庫のかげに隠れたが、
どうみてもゾロの服を着ていて、
アルビダから逃げようとしている。
・・・冗談じゃないわよ。
なんで私の目のつかない方へ動くわけ・・・?

サンジはえぐえぐ泣きながら、
アルビダの元から逃げようとしている。

あわてて追いかけようとしたアルビダは、
戸口の所に立っているゾロに気づいた。
 
 
 
 

「てめえ・・・、
何してる?」
 
 
 
 

「何って、ゾロ、貴男に会いにきたんじゃない」
久しぶりに見たゾロけど、
やっぱりかっこいいわあ。
アルビダは悪びれずに答えた。
 
 
 
 
 
 

ゾロは険悪な目つきでアルビダを見た。
この女にはもう会わないといってあったのに、
どうやって来た?
ここは簡単に入れる場所じゃねえ・・・。
明らかにおかしい。
 
 
 
 
 

「アホかあぁぁぁぁぁ!!!!!
てめえオレ様の恋の邪魔をするんじゃねえ!!!!
アルビダおねえさまは、
このサンジ様に会いに来てくださったのだ!!!
冷蔵庫の妖精とはこのことだ!!!
ああ、
なんという奇蹟!!」
 
 
 

サンジは興奮してしゃべりつづけている。

ゾロはサンジの言葉に肩を落とした。
冷蔵庫から来たのかよ・・・。
それって・・・、
刺客じゃねえのかよ・・・。
気づけよ・・・このアホ・・・。
 
 
 

ゾロはつかつかとアルビダに近づき、
手をとりひっぱった。
 
 
 
 
 

あら、やけに積極的ね。
久しぶりだから、
私の美しさにめざめたのね。
ふふ、
どこに連れていかれるのかしら。
そうよね。
このハート目のおバカさんより、
どうみても私を選ぶのが当たり前というもの。
ゾロさえその気なら、
Miss.99なんて止めてもいいのよね・・・。
ふふ・・・。
アルビダは刺客であることをやめるべきかどうか考えはじめていた。
 
 
 
 
 

無言でゾロはアルビダを冷蔵庫に押し込んだ。
それから、冷蔵庫の鍵をかけた。
 
 
 
 

「ああああああっっっっ!!!!
ゾロてめえ何しやがるんだっっっ!!!
おねえさまがっっっ!!!
冷蔵庫の妖精が消えちまうっっっ!!!!
オレの夢がぁぁっっっ!!!」
 

サンジが涙ながらに抗議したが、
ゾロは無表情に答えた。
 
 
 
 

「返品だ!!!!」
 
 
 
 
 

かくしてアルビダのサンジ拉致計画もまた失敗したのである。
 
 
 
 
 
 


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