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警察本部の奥に設けられた、
クロコダイル警視監の執務室。
警察にふさわしくないような人物も出入りしていたが、
すでにそれを制することのできるものは誰もいなかった。
クロコダイルの目的に気づいたものは、
命をなくすか、
牢に閉じ込められるかどちらかだったからだ。
クロコダイルは、
すでに警察の全指揮系統を掌握していた。
あとは、
国を奪うのみ。
だが、
何も知らない人々は、
クロコダイルを英雄としてあがめ続け、
悪をほろぼす正義の人と信じて疑わなかった。
いつの間にか作り替えられた、
豪華なクロコダイルの執務室は、
高価な工芸品や美術品でかざりたてられており、
腐敗と堕落の薫りのただよう部屋となっていた。
クロコダイルはいつものように執務室でくつろいでいたが、
そこに、転がるようにして部下が走り込んできた。
「Miss.99が、閉じ込められていました!!!!」
クロコダイルはかすかに表情を動かした。
「なんの任務かは分かりませんが、
何かの任務で出かけ、
大型の鍵付き冷蔵庫に閉じ込められたまま、
本社に返送されています!!!
差出人はロロノア・ゾロと!!!!
どのようにいたしましょう」
「ほっておけ」
失敗した、Miss.99には制裁を。
助けてやらなくとも、
そのうち死にいたる。
クロコダイルは背を向けたまま、
報告を聞いていたが、
その背を見るだけでも、怒っているのがわかった。
ロロノア・ゾロとやら、
ナメたマネをしくさるじゃねえか。
このオレをコケにした罪は重いぞ。
とらえて八つ裂きにしてやる。
このオレが狙った獲物を逃がすはずがねえ、
貴様は殺し、サンジはオレがせいぜいかわいがってやる。
秘密裏にミスター・プリンスを我がものとする予定だったが、
やむをえん。
サンジを「麦わらの一味」と断定し、
警察は全力をあげて、
身柄を捕獲する。
手段は問わない。
ただし、本人には傷一つつけてはならぬ。
傷をつけるのは、このオレだ。
ナミは警察から緊急に出された指令を見て、蒼白になった。
「オールブルー事件の犯人一味として、料理人サンジを再逮捕しろ。
ただし、本人にはいかなる傷も負わせてはならない。
逮捕に反対するものがあれば、
公務執行妨害とみなし、B案で対応すること」
B案
いかなる地位・身分・富豪のものあっても、
反抗的な態度をとるものは、
公務執行妨害とみなし身柄を拘束してかまわない。
暴力・銃器の使用を許可する。
生存が確認されるようであれば、
多少の負傷は不問にふす。
サンジ君があぶない!!!
それから、
ロロノア・ゾロも!!!
邪魔をすると攻撃していいとはっきりとかいてある。
クロコダイルは、
サンジ君は傷つけずに逮捕する気だわ。
ウソップもゾロの館にいる。
警察は緊急配置についた。
オールブルーは口実だ。
サンジ君を拉致されたら、
ゾロは抵抗する。
撃たせる気だ。
ダメよ。
ゾロはムカつくヤツだったけど、
ダメよ!!!
「ナミ、サンジがオールブルー盗ったって、
テレビで言ってるけど、本当か?」
呼びにいこうと思った矢先、
ルフィがやってきた。
「知らなかったぞ。
サンジは希代の大悪党だったのか・・・。
悪党に加担するものは暴力・銃器の使用を"辞さない"って・・・、
"爺さん"がどうしたって?
うまいのか、それ?」
「盗ったのはあんたでしょ!!!!!!!!!
やつら、サンジ君を助けようとしたら、
攻撃するっていってんのよ!!!!!」
ナミはキレそうになりながら、
ルフィを怒鳴りつけた。
カンで事情をしったルフィは、
瞬時に決意した。
「ししし、
撃たれるのか。
なら、サンジを助けにいかないとな!!!」
テレビでまで、
緊急放送があった。
これは、
大変なことになる。
ナミとルフィはゾロの館に向かいはじめた。
だが、すでにゾロの館のまわりは、
ものものしい雰囲気になり、
おびただしい数の警官でとりかこまれていた。
「希代の大悪党、サンジを無傷でとらえたものには、
3階級特進の栄誉が与えられる。
一般人の協力者に関しても褒賞が与えられる」
逮捕に関しては、
警官の個人行動さえ許可されており、
クロコダイルが一瞬でケリをつけようとしていることが、うかがわれた。
この褒賞を望むものが、
続々と集まり続け、
ゾロの館の周りでは、
身動きがとれないほどの状態が起きていた。