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「こっちで叫び声がしたぞ!!!!!」
強硬突破した警官たちは、
一斉にゾロの寝室に押し寄せていた。

転がるようになだれこんだ男たちは、
部屋の中の様子を見て、
固まった。

入口近くには血だらけの鼻男と、
妙なトナカイ。

部屋の中には刀を手にした腹巻男。
ベッドには、
昼間だというのに、
どうみても情事直後という感じの金髪の男が倒れていた。
 
 

「ゾロのアニキ!!!!
サンジのアニキがっっっ!!!!」
ヨサクが大声でわめいている。

最前列の男たちは、
ごくりとつばをのみこんだ。
至近距離にあるサンジの裸体。

何のためにこの部屋にやってきたかを忘れそうだった。
「麦わら盗賊団の一味」を無傷で連行すること、
それが彼らの目的のはずだった。

ゾロは刀を手にとり、
臨戦体制に入った。
 
 
 
 

「衝撃よ、ヒナ、衝撃よ」
どこかで聞いたような声がする。
人込みをかき分けて、
いつかサンジがメロメロリンになっていた女があらわれた。
しばらく前からオールブルー事件の担当責任者になっている、ヒナ警部だ。

「不純だわ、
じつに不純だわ。
ロロノア・ゾロ、
そのコはわたくしが逮捕連行するわ」
ヒナはゾロに警告をした。

この事件は何かがおかしい。
いつの間にか、
スモーカー君は監禁され、
ボン・クレーは行方不明。
サンジは緊急配備をしてまで、
逮捕するようなコには思えないけれど、
それでも指令は出た。
それも、信じられないことに全市民を巻き込むレベルでの指令だ。
だけど、ここは警察の威信をかけて、
サンジは連行してみせる。
野次馬や、
一般市民の手助けなど無用よ。

被疑者サンジは、
呆れたことに、
まっ昼間から性行為をして、
現在は、どうやら無抵抗状態のようね。
邪魔なのは、
このロロノア・ゾロのみ。

「ゾロ、逮捕に反抗するものは武力を行使していいことになっているわ。
捜査に協力を要請するわ」

「断る。
連れていきたければ、
オレを倒してから行け」
ゾロの剣がきらりと光り、
男たちはわずかに後ずさった。

緊迫した空気が流れ、
誰もが動きを止めた。
 
 
 
 
 
 

サンジはいつの間にか意識をとばしていた。
深い眠りに落ちていたが、
まわりで妙にざわざわした気配がする。
なんだよ・・・、
ゾロのヤツ、
何かしてやがんのか?

「・・・・ん・・・」
かすかに寝返りをうつと、
まわりの空気が恐ろしくざわめいた。
・・・せっかく寝てんのに、
何だよ・・・、
ヘンな感じだよな・・・。
でも、もうちょっと・・・。

だが、まわりからは、
あまりにも妙な気配が伝わって来る。

サンジはゆるゆると目を開けた。
 
 
 
 

目を開けた瞬間に、
おびただしい人が見えた。
なぜか、
ゾロの部屋中に人がいて、
皆、顔をあからめてサンジを食い入るように見ている。

中には、
いつかのお美しいお姉さままでいた。
ああ、なんて美しいお姉さま。
手に銃を持っていても、ステキだ!!!!
んあ?
手に銃?
よく見りゃ、
となりにいるクソむさくるしい男も銃を持ってるじゃねえか。
そんでもって、
ゾロは刀かざしてるし・・・・?
なんだ、こりゃ。
オレは夢でも見てるのか?
アルビダお姉さまが冷蔵庫から出て来たのも、
ありゃ夢だったにちげえねえし。

サンジはぼんやりした頭のままで、
あたりを見回した。

ゾロはまわりが妙にざわめくのに気づいた。
振り返ると、
いつの間にかサンジがすこし身体を起こしていて、
無防備な顔でとりかこんでいる男たちを見ていた。
男たちはやにさがったような顔になり、
サンジの肢体に視線はくぎづけになっている。

こいつら、
何をうっとりと見てやがる!!!
コレはオレのだ!!!!
ゾロはあわてて、
サンジにシーツをかぶせた。
 
 

あり?
なんでシーツなんぞ?
なんか、まわりが、
すげえまたざわざわしてる。

サンジは急にシーツをかけられて、
やっと周りの人々は本物だということに気づいた。
それから、今の自分の状態を考えた。

「ぎゃああああああああ!!!!!」
頭の中が真っ白になっていた。
ヤられたてでほやほやのところを、
どうでもいいヤロウども多数と、
大切な美しいお姉さまに見られた!!!!!

オレぁもうダメだ!!!
もうダメだ!!!!

お姉さまになんといって分かっていただいたらいいんだ!!!!
サンジは叫びながらも、
シーツの固まりのようになりながらベッドから転がりおち、
必死でごそごそと衣服を身につけた。
あまりな反応にまわりのものはあっけにとられ、
ただ眺めていた。
 
 
 

「オイ・・・・ゾロ・・・」
シーツをかぶったままで、
サンジはゾロに声をかけた。

「んぁ?」
ゾロはサンジの怒りのオーラを感じ、
言わんとすることを察した。

「2秒だ!!!!」
ゾロとサンジは同時に叫ぶと、
容赦なく警官たちをなぎ倒していく。
瞬殺された男たちは、
ばたばたと倒れていった。

ヨサクとジョニーは二人の戦う姿をほれぼれと眺めていた。
「うぉうっ!!!!
ゾロのアニキ、かっこいい!!!
サンジのアニキも、かっこいい!!!」
ヒナを除いて、
その場にいる全員があっという間に倒されてしまった。

信じられない。
ヒナ、信じられないわ。
警察の精鋭部隊が、
一瞬にして壊滅的な打撃をうけた。
ゾロだけではないのね。
わたくし、このサンジを甘くみていたのかも。
ヒナが本気を出しかけた時だ。

「すげえ!!!!
ゾロのアニキ、
サンジのアニキ!!!
さすがです!!!
息もぴったりですし、
服装まで!!!!」
「あがぁ、いてえ!!!!!
サンジのアニキ、何をっっっ!!!!」
ヨサクはうっかり口をすべらしたために、
サンジの容赦ないケリをあび、
その後、しばらく寝たきりの生活を送ることとなった。

サンジは自分が腹巻スタイルのままなのに気づき、
あわててベッドの下にもぐりこんだ。
 
 
 

「何なの?」
ヒナは突然隠れたサンジに首をかしげた。

「ああああ、美しいお姉さま、
申し訳ありません。
オレは愛の旅人ですが、
今は貴女とお目にかかることができません。
邪魔者は消えたというのに、
ああ、なんという悲劇!!!
だが、再びめぐり合えた奇蹟は三たび起きるはずです。
ああ、恋は偉大です!!!
ひきさかれた愛はやがて結ばれるのです!!」

ゾロは相変わらずなサンジにためいきをついた。
あんなに毎日、毎日、
自分だけのものにしているのに。
オレにしがみついて、
いつも泣くくせに。

腹巻生活はサンジのメロメロぶりを微塵も変えてはいなかった。
どうやっても、
アホは直らねえらしい。
病気みてえなもんだ。

ヒナは同情に満ちたまなざしでゾロを見た。
以前にもサンジのたわごとを聞かされていたので、
どうやらいつもこんな調子らしいということを察することができた。
 
 
 
 
 

「おい、お前、出て行け」
我に返ったゾロはヒナに向かって刀をつきつけた。

「アホかぁぁぁぁぁ!!!!
このクソまりもヘッドがぁぁぁぁ、
お姉さまに何てマネしくさるんだ!!!
お姉さま、
こいつはアタマがヘンなんです!!!
さあ、今のうちに逃げて!!!!
レディを守るのは騎士の努め!!!
オレは貴女の記憶の片隅で生きるだけで幸せだ!!!」
サンジはゾロに向かってタックルし、
ゾロごと床につっこんだ。

「混乱・・・、ヒナ、混乱」
ヒナは頭痛を感じて、
額に手をあてた。

目の前には、
ゾロを阻止しようとしがみついているサンジの姿があった。
コレを逮捕しろっていうの?
どうやって・・・、
こんなバカなコを?
頭がガンガンするのを耐えながら、
見ているうちに、
あることに気づいた。
ゾロとサンジの服装の恐ろしいほどの類似性に気づいてしまったのだ。

どうみてもオヤジシャツ。
へたすれば作業ズボンのような黒っぽいズボン。
とりわけ目をひくのが、
ヒナがはじめて見るような、
趣味の悪い緑色の腹巻だった。

「・・・同じ腹巻だわ」
ヒナは、
つい、小声で言ってしまった。
 
 
 

その途端、
サンジは真っ青になって固まった。

お姉さまに、
腹巻姿を、
見られた。
もうオレぁダメだ!!!
 
 
 
 

サンジはえぐえぐ泣きながら、
その場から逃げた。
邪魔な前方のカベをけってぶち抜き、
とりあえず、逃げた。
逃げる途中、
新たな男たちにぶちあたったような気がするが、
片っ端から蹴った。
とりあえず蹴って蹴って、蹴りまくって、無闇に逃げた。
 

サンジは泣きながら、
逃げ続けた。
 
 
 
 
 


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