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エースはにやりと笑った。
サンジはもう身体に力が入らないみたいで、
骨抜き状態だ。
このままなしくずしにヤっちまえば、
てっとりばやい。
落ち着いてヤりてえが、
そうもいかねえ。
隙あらば、食う。
それがオレのやり方だ。
んじゃ、いただきます!!!!
「あっ・・・、エース・・・、
・・・・んっ・・・」
サンジの身体がはね上がり、
甘ったるい声がもれる。
「静かにしろ」
エースは本格的に口づけし、
サンジから声をうばった。
ゾロにずいぶん、かわいがられてるんだろうな。
すこし触れただけで、
敏感に反応する身体。
前に触れた時より、
さらに反応がよくなっている。
こりゃ、残さず食わねえと。
エースもサンジに集中しはじめ、
まわりの事などどうでもよくなった時だ。
ごそごそと音がして、小さなドアが開き、何かが這い出てきた。
「サンジっっっっ、
大丈夫かっっっ!!!!!
このキャプテンウソップが登場したからには、
悪者は死したも同然!!!
そして・・・!!!!」
「うおっ、お前ら!!!!!!
なななな、何を・・・!!!!」
抱き合っているエースとサンジにやっと気づいたウソップが、
汗をだらだら流した。
「オオオ、オレも知らないぞ、コノヤロー!!!
何も見てないし、キスしてるとこなんて見てない。
エッエッエッ、本当だぞ・・・」
言葉と裏腹に明らかにビクビクしているチョッパー。
もうエースの手で半分意識が飛んでいるサンジは、
ウソップとチョッパーに全く気づかなかった。
「・・・おおお、おとりこみ中で・・・、
こりゃまた失礼しました・・・。
行くぞ・・・チョッパー・・・」
あわててウソップはそこから逃げ出そうとしたが、
外の騒音に我にかえった。
「ちがうでしょーーー!!!!!
あんた、エースとか言ったな!!!!
そんな事してる時じゃないでしょーーー!!!」
ウソップの言葉に、
さすがにエースもちょっとまずいと気づいた。
「あー、そうだった。
すまん、すまん。
まあ、ちょっとした出来心だ。
気にするな」
人なつこい笑顔を浮かべながら、
サンジに服を着せていく。
サンジは涙目のまま、
されるままだ。
まだ、ぼうっしているようだ。
エースはサンジに服を着せると、
最後に腹巻を手にとった。
それから、その腹巻をまじまじと見た。
なんで、サンジは腹巻してるんだ?
それもゾロの腹巻だ。
気になるじゃねえか。
サンジはだんだんと自分の状況を思いだしてきた。
ウソップとチョッパーが激しく汗を流していて、
なぜかエースが腹巻をにぎりしめて立っていた。
腹巻?
しまった。
オレぁ腹巻してねえ!!!!
はやく腹巻しねえと!!!!
サンジは急にはねおきた。
「エース、それかえせ!!」
エースはにやりと笑っただけで、
やはり腹巻を持ったままだ。
「そうだなあ、わけを教えてくれたら、返してもいいけどなあ」
そういって、悪びれずに笑う。
ウソップとチョッパーは顔を見合わせた。
彼らはとうに理由を知っていた。
ウソップは直接聞いていたし、
そうでなくても、
サンジがあまりにべらべら愚痴るもので、
本人はどうみても隠しているつもりらしいのだが、
ここの使用人にはバレバレだった。
みんな知っていたし、
ゾロがいない時は、とっときゃいいのでは?
と思ったが、
知っていることがバレたら半殺しにあうのは間違いないので、
みな知らんふりをしていた。
問題はどうみても腹巻ではなくて、
腹巻してなくても、ヤられるのは間違いないのに、
なぜかサンジはヤられるのは腹巻のせいだと、かたくなに信じていた。
アホだ・・・。
ウソップですらそう思ったが、
それを口にしたら、
血を見るのは明らかだ。
誰しも真実よりも、
自分の保身を大切にするものである。
チョッパーにサンジのにおいをたどらせて、
必死で捜しにきたら、
こんなところでエロいことをしようとしている。
この非常時に!!!
「う・・・わけは言えねえ!!」
サンジは心からつらそうに答える。
いったいどんなわけが?
エースはますます、知りたくなった。
ゾロがらみなのは、間違いない。
エースもそれは簡単に想像できた。
「そうだなあ、まさかエッチのサインだとか?」
バカバカしいが、
とりあえず言ってみると、
サンジはトマトのように赤くなった。
「・・・ばば、ばかいうな!!!
ゾロなんか、何も関係ねえ!!!!」
正解だと、ウソップとチョッパーの目が答えていた。
ていうか、ゾロとのエッチだって自分でばらしてるじゃねえかよ。
エースがあきれた瞬間に、
サンジはすばやくエースに近寄り、
ものすごい勢いで腹巻を奪った。
大急ぎで腹巻を装着し、
危険極まる人だらけの方向に逃げた。
人の溢れる場所に出たとたん、
誰かが叫んだ!!!!
「腹巻だっ!!!!」
「ミドリ色の腹巻だっ!!!!」
一斉に視線が注がれ、人々はそれが捜す人物に間違いないことに気づいた。
その腹巻は見た事もないような色をしていた。
『特徴的な緑色の腹巻』
目にもあざやかな金髪のその男こそ、
『サンジ』に違いない。
「いたぞ!!!!
腹巻をしている!!!!」
興奮して叫んだその男は、叫んだ途端、もの凄い衝撃を頭に受け、
くずれおちた。
「・・・・腹巻のことを言ったやつは殺す!!!!」
サンジの目が座っていた。
腹巻のせいで、
たまりにたまったストレスで、
目つきも凶悪になっていた。
この館に集まってきた者のほとんどが、
素人にして血気だけが盛んな者たちだった。
・・・こいつは「犯人」だけあって、危険だ。
オレたちは、命の方が大事だ・・・。
その近くにいたものは、じりじりとあとずさった。
あとずさらないものは容赦のないケリを浴びて、地に伏した。
こ・・・こええ、
なんて凶悪な犯人だ!!!
殺される!!!!
暴れるサンジに、
その場にいたものは、命からがら逃げ出していった。
逃げながら叫んだ。
「腹巻をした凶悪な犯人があああぁぁぁ!!!!
助けてくれええぇぇぇえ!!!!
殺されるうぅぅぅぅぅ!!!!」
「オレぁ見たんだ!!!!
そいつは間違いなく趣味の悪いミドリ色の腹巻をしていたああ!!!!!」
逃げた男の一人は、叫びながら、誰かにぶつかった。
ぶつかった相手を涙ながらに見て、動転した。
あの腹巻がこの世にもう一つある!!!!
特徴的な緑色の腹巻が・・・。
だが、さっきの男とは違う。
緑の頭、手には刀?
かっ・・・刀?
あわわわわ、こええ!!!!
その腹巻男は、
刀をかざした。
「オイ、その金髪はどっちだ?」
男はぶるぶる震えながら、
サンジのいた方を正確に指さした。
ロロノア・ゾロは男の指さす方へとダッシュした。
出会う男達を容赦なく斬りたおし、
サンジの行方をさがす。
自信をもってその方向につきすすみつづけた。
すすんで、すすんで、つきすすんだ。
ん?
気づくと、なぜか、
目の前には、ゾロの館の外壁があった。
まわりにはさっぱり人気はない。
もちろんサンジはいなかった。