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「犯人サンジが逮捕されたぞっっっっ!!!!!!!」
「スモーカー警部のお手柄だ!!!!!!」

ゾロの館じゅうに情報がひびきわたり、
喜ぶもの、
胸をなでおろすもの、
悔しがるものと、
さまざまな反応を示していた。

ふん・・・やっと身柄を確保したか。
クロコダイルは特に歓声の大きいほうへ歩き始めた。

やつらは何と言っている?
スモーカーだと?
あの男は、確か監禁していたはずだ。
オレにとっては邪魔ものでしかねえ。
なぜ、ここに来た?

だが、やつが素直にミスター・プリンスを渡すかどうか。
スモーカーのことなどどうでもいい。
オレに逆らうやつには死あるのみ。
とにかく、早くミスタープリンスを手にいれるのだ。
 
 
 
 

スモーカーは、らしくなく迷っていた。
ばたばた暴れ続ける、
生意気なアヒルのようなサンジ。
こいつはそんな大それた犯罪者じゃねえ。
今回の騒ぎはクロコダイルのたんなる性的満足のための大捕り物だ。
そんなものに加担する気はさらさらない。

警察命令で出ている指令。
それは、スモーカーの仁義に反した。
警察の信念は正義じゃねえのか?
ここにいる大勢のバカどもは、
まぼろしの犯人を追っている。
本当の悪人は別にいるというのに。

このアホな金髪を捕獲したが、
保護すりゃいいのか、
解放すりゃいいのか、
わからねえ。
わかるのは、
クロコダイルの手に堕ちたら、
ただのセックスの道具にされるってことだけだ。
よりによって、
クロコダイルもなんでこいつを選んだんだ。
やつくらいの権力があれば、
どんな娼婦でもよりどりみどりのはずだ。
刺激が欲しいのはわかる。
たしかにこいつは上玉の部類だし、
結構エロいし・・・。

いかん!!!
オレとしたことが、
なんという雑念を!!!
 
 

スモーカーはぶんぶんと首をふって、
雑念を追い払った。

とりあえず、
ここから逃げるか?
だが、この厄介な荷物を持って逃げ切れるのか?
払っても払ってもたかるハエのように、
よくもまあこんなに人が集まったものだ。
くだらねえ捕り物にふさわしい、
くだらねえやつらだ。
私利私欲のみで、
にわかに正義をふりかざす。
こんなやつらのために、
正義を貫きとおすのもバカバカしい。
だが、もう戦いは始まっている。
もう、オレもあとへはひけねえな。

守ってみせる。
この手の中の男を。
あの時、
アヒルを守り切れなかった後悔の気もちは消えることがねえ。
バカバカしいが、こいつに運命を賭けることになりそうだ。

ふん、わからねえものだな。
このスモーカーともあろうものが、
アヒルと運命をともにすることになるとはな。
 
 
 
 

人込みが割れ、
その奥から悠々と歩いてくる男。
スモーカーはその男に視線を向けた。

サー・クロコダイル!!!!
無知な人々をだまし、
警察権力を掌握している悪党。
来たか・・・、
クロコダイル!!!!!!
 
 
 
 

「ご苦労、スモーカー警部。
その男をこちらに渡すのだ」

スモーカーは、
自分に向けて銃が配置されていることに気づいた。
いつの間にか、ぐるりと取り囲まれ、
銃口がぴったりとスモーカーをとらえている。
おそらく警察の精鋭たちだ。
その気になれば、
スモーカーの脳味噌だけふっとばすという芸当もたやすくできる男たちだ。

クロコダイルの言葉には、
暗に今回の脱走をとがめないという響きがある。

くそ食らえだ!!!
だが、このままではあまりにも犬死にだ。
 
 
 
 

ふん、相変わらず反抗的な男だな。
にらみつけるスモーカーから、
クロコダイルは驚いたように自分の方を見るサンジに目を向けた。

クロコダイルは直接サンジを見るのは初めてだった。
いろいろな映像で、その姿を見て気にいったのだ。

不思議そうに首をかしげているサンジは、
映像で見た事のない表情をしていた。
ふむ。
悪くない。
クロコダイルはサンジの身体に視線をあてた。
そのうち、
満足げにサンジをながめていたクロコダイルの表情が曇った。

悪くないが、
どうも服がいけねえ。

明らかにクロコダイルの美意識に反する服をサンジは着ていた。
腹巻。
オヤジシャツ。
だぼっとしたズボン。

許せん。
悪趣味すぎる!!!!!
いくら変装とはいえ、限度というものがある。
これなら、メイド服とか、ナース服とか着せたほうがよほど似合う。

まあ、まずはこの反逆者スモーカーの命をうばってから、
ミスタープリンスを手にいれることにするか。
反抗の罪には、
死の罰を。
貴様の命など、なんの意味もない。
このオレが目で少し合図をするだけで、
全ての引き金がひかれ、
おまえの命は一瞬でなくなる。
この愚か者めが。
さあ、そろそろ合図をする時がやってきた。
 
 
 
 
 

「スモーカー君、被疑者を渡すのです!!!!」
現場に急行していたヒナ警部は、
張りつめた雰囲気をよみとり、
スモーカーに声をかけた。

そのコを渡さないと、
あなたの命はない。
分かってるでしょう、スモーカー君?
バカな意地はやめなさい!!!
このままでは銃殺されて、無駄死によ!!!
警視総監のように、
流れにのって撃たれるだけよ!!!!
 
 
 
 

不思議そうにクロコダイルを見ていたサンジは、
声のするほうへ振り返った。
声の主があの美しいおねえさまだと分かったとたん、
サンジの目はハートになった。
 
 

「あああああ、美しいおねえさま!!!!
やはり、またお会いすることができましたね!!!
すーばーらーしいーーーーー!!!!
恋の力は偉大だーーーーー!!!!!
オレと貴女の間には運命の赤い糸が繋がっているのです!!!!!
ああ、運命よ、ありがとう!!!」
 
 
 

・・・なんだ、コレは?

萌えまくるサンジの姿に、
クロコダイルは明らかに隙を見せた。
 
 
 

その瞬間だ。
ドォォォォン!!!!
いきなり部屋に閃光が炸裂し、
部屋はもうもうとした煙がたちこめ、
視界が遮られた。
 
 
 

さすがのスモーカーも、
一瞬、閃光に気をとられた。
そのすきをとらえ、
腕の中に捕獲していたサンジが、
スモーカーにするどい蹴りを入れてきた。
バランスを崩したスモーカーの拘束する力がゆるんだ。

ゆるんだ瞬間、
サンジはものすごい勢いで、
煙の中を突っ走った。
悪者につかまったアヒルになった気分だった。

とりあえず、
必死で逃げた。
途中でたくさん人にぶつかったような気もするが、
全力で蹴った。
蹴って蹴って、蹴りまくった。
 
 
 
 

「ぐえ」
どこかで聞いたことのあるような声だったような気がしたが、
サンジは気にせず蹴って逃げた。
・・・今の知ってるやつだったか?
・・・まさかな?
サンジはちらっと思ったが、
深く考えずにどんどん走り続けた。
 
 
 
 
 
 

しまった!!!!!!!!
アホと思って油断しすぎちまった!!!!
煙の中、
スモーカーは、
ふらふらとサンジを捜してさまよいあるいていた。

だんだんと視界がはっきりしてきたスモーカーは、
見覚えのある腹巻姿が倒れているのに気がついた。

ちっ、手間とらせやがって。
こんなところにいやがったか。

スモーカーは急いで近づくと、
そいつを抱えあげた。
 

ん?
何か持った感じが違う。
なにかずっしりと思い。
がっしりしているし・・・。
アヒルというよりも・・・・。

はっきりしてきた視界の中、
そいつの頭が見えた。
 
 
 
 

ミドリじゃねえかっっっっ!!!!!!!
 
 
 
 
 


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