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ゾロは誰かに担ぎあげられたのを感じた。

サンジをさんざん捜して、
やっと見つけた。
自分に向かって、
まっすぐ走ってくるサンジを見て、
ゾロはその身体を受け止めようとしたのに、
猛烈に蹴られたのだ。

一瞬意識が飛び、
床に叩き付けられた。

そこを誰かに拾われたのだ。
 
 
 
 

スモーカーは、
拾った相手がゾロだったことに気づくと、
がっくりと肩を落とした。

・・・いかん、
腹巻を目印にしたので、
うっかりロロノア・ゾロを拾っちまった。
あいつは金髪を目印にしねえといけねえのに。

アヒルに見えるのは、
あの金髪と妙に白くてぽてっとした身体をしているせいだ。
あの無意味にガーガーうるさいところも似てるか。
今ごろ、あいつはアヒルのようにバタバタと逃げているに違いない。

・・・だが待てよ。
こいつは使える・・・。

スモーカーは、
担ぎ上げたゾロの頭に布をかぶせた。
「おい、ロロノア・ゾロ。
てめえ、サンジのふりをしていろ。
その間にやつは逃げることができる」

ゾロは自分を担ぎあげたのが、あのスモーカーだと気づき驚いたが、
サンジの身に危機が迫っていることを感じ、
そのままじっとしていることにした。
 
 
 

「いたぞっ!!!!」
「あっちに緑の腹巻がっっっ!!!!!」

だんだんと薄れてくる煙の中、
スモーカーはわざと腹巻が目に入るようにゾロを抱え上げると、
どんどん屋敷の外へ走り出した。

外には、
役に立たなくても野次馬どもがひしめいている。
やつらが、
真実を知れば、
この危険な茶番劇を止められるかもしれねえ。
クロコダイルをおびき出して、
真実に気づかせるのだ。
 
 
 

スモーカーはものすごい勢いで、
外をめざした。
おそらく報道陣も詰めかけている。
警視総監死亡は大ニュースだ。
しかも、犯人は「オールブルー」を狙う世紀の大泥棒だ。
いくら、クロコダイルの支配が徹底しているとはいえ、
必ず支配を崩す穴がある。
それは、この国の外からの圧力だ。
悪はかならず暴かれる時が来る。
オレはそれと戦う。
そいつの地位も肩書きも関係ねえ。
それこそが正義ってもんだ。
 

スモーカーが外に出ると、
予想通りクロコダイル自らが追ってきた。
ゾロの館の外には、
一般市民がひしめき、
中の様子をうかがい続けていた。
報道陣は完全に規制をかけられ、
外で待機させられていた。
 
 

スモーカーは外に出て報道陣に怒鳴った。
「てめえらの役目は、
本当のことを伝えることだろう。
真実を映し出す勇気のあるものは、
これから後に起きるすべてを流せ。
そして人々に伝えるのだ。
これが偽りの事件であることを!!!」

スモーカーがそう言った瞬間、
銃弾が一斉に浴びせられた。

・・・ちっ、
やられたか・・・。

スモーカーは覚悟したが、
身体には何の痛みも感じなかった。

気づくと、
そこに捨てたはずのロロノア・ゾロが剣を握っており、
ゾロの足元には半分になった銃弾が転がっていた。

「あんたの心意気に協力する」
ゾロは襲い来る弾丸を次々と斬っていった。
スモーカーも反撃をはじめ、
スモーカーとゾロを狙った男たちはことごとく地に伏した。

ロロノア・ゾロ、
ただの金持ちにしちゃあ、やるじゃねえか。
この男、共に戦うに値する。
スモーカーはゾロに背をあずけ、
敵の出方を待った。
 
 
 
 

ナミはゾロの館の近くで、
やきもきしていた。
状況は悪化しているから、
もう自分は近づかない方がよい。
だから、いつでも逃げ出せる準備をして待つことにしたのだ。
電伝虫を傍受し、
放送電波をチェックしていたら、
突如一番マイナーな放送局が、
ゾロ邸の様子を生中継しはじめた。

画面には、戦うスモーカーとゾロの姿が映し出されている。
何と言っているか、
会話まで分からないが、
あきらかに狙撃の対象となっている。
そこに、クロコダイルがあらわれた。
二人の姿を見たとたん、
形相が変わった。
明らかに悪の本性をむき出しにした、
憎しみと残忍さに満ちた表情だった。

これは法の番人のものではない。
誰もが思うような表情。

クロコダイルは怒りに満ちて、
スモーカーに攻撃をくわえはじめた。

それから、突如放送の画面はとぎれた。

・・・一体、何が起きているというの?
クロコダイルはキレて、
スモーカー警部やゾロを狙っているようだったわ。

さっきから、ウソップとはさっぱり連絡がつながらない。
ルフィは何をやっているの?
サンジ君は無事なの?
 
 
 
 

ルフィとエースは全ての食材を食いつくした。
風船のようにふくらんだ腹を押さえ、
互いに満足した笑みを浮かべた。

その時だ。
誰かがものすごい蹴りを入れてきた。

「うぉっっっ」
ルフィとエースはもの凄い勢いで壁にたたきつけられた。
キッチンの壁に身体がめりこむほど、
強烈に蹴られたため、
動くこともできない。
 
 
 
 
 

目の前には、
凶悪な表情で仁王立ちしているサンジがいた。
「てめえら、オロす!!!!」

「オレたちが来た時には、もう食い物なかったんだって」
ルフィが食い物のかすを口のまわりにいっぱいつけたまま言った。

「そうそう。誰が食ったのかなあ」
そういうエースにも食い物のかすがいっぱいついていた。
 
 
 

「なー、サンジ、なんでそんな格好してんだ?」
ルフィが不思議に思って聞くと、
サンジは真っ赤になってわめきはじめた。

「オレのせいじゃねえ!!!!
ぜんぶあの腹巻男のせいだ!!!!」

「しししし。
ヘンな趣味だな。
じゃ、行くか?」
ルフィは笑って言った。
思ったとおりだ。
サンジは、キッチンにやってきた。
サンジは料理人だ。
キッチンに必ず戻ってくる。
カンだが、当たりだった。
 

「え、どこに?」
きょとんとするサンジは首をかしげた。
 
 
 
 
 

「ここではないどこかに」
 
 
 
 
 
 
 
 


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