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サンジは夢中で外に向かって走った。
走っていると、誰かがサンジを呼んだ。

「こっちだ!!!!!」
呼ばれたほうにいくと、
人目につかない小屋があり、
中には汗をだらだら流しているチョッパーがいた。
そして久しぶりに見るナミもいた。
「ナミすわん、会いにきてくださったのですね・・・」
サンジはナミを見ると、一瞬ハート目になった。

しかし、ナミはサンジを振り返りもせずに、
小さな携帯用の画面を見つめている。
「これは今、生中継されているわ・・・ウソップが撮ってるの・・・」

サンジはその画面を覗きこみ、固まった。
その小さな画面の中には、
無気味で冷酷な笑顔を浮かべたクロコダイルと、
血を流して戦っているスモーカーとゾロの姿があった。
 
 
 

外の騒ぎはこれよ・・・。
だから、サンジ君、あんたは逃げてこれた。
ゾロとスモーカーが全ての戦いを引き受けているから、
みんなそっちに気をとられている・・・。

ウソップはこれをびくびくしながら撮ってる。
そして、私が違法に国内外に放送している。
クロコダイルの支配下にある放送局は、
恐れて放送を打ち切ったわ。

私たちは麦わら盗賊団。
盗みもするけど、
権力にも屈しない。
この国をここで駄目にしてはいけない。
人は真実を知り、なんとしてでも異常な支配から逃げるしかない。
クロコダイルの支配力は絶大だ。
でも、この国のひとりひとりが戦いの覚悟をきめれば、支配することなどできやしない。

真実に気づき、
見抜き、
自由を求めて戦う心意気が必要なのよ。

権力の名の傘下にあるものはもうだめよ。
警察はクロコダイルの思いのままだわ。
この国を救うのは、名も無き人たちしかない。
だから、気づいて・・・、
今こそ立ち上がる時だと。
手遅れになる前に、気づいて!!!!
 
 
 
 
 

画面の中では、スモーカーが倒れ、ゾロが倒れ、
また立ち上がってはクロコダイルの攻撃を受けていた。
 
 
 
 

血だらけになりながら、不敵な笑みを浮かべているゾロとスモーカー。
クロコダイルはじわじわといたぶるように二人に傷を与えていた。
「バロックワークスの一員になるなら、
命だけは助けてやるぞ」
血だらけになり、立ち上がることもできなくなった二人に笑いながらそう言った。

まるでなぶり殺しよう・・・。
力の差がありすぎるわよう・・・。
「スモーカー、
0ちゃんの言う通りにするのよう!!!」
血だらけで血に伏すスモーカーを見ていられなくて、
ついボン・クレーは怒鳴ってしまった。

クロコダイルがボン・クレーに気づき、
警官たちに目配せした。
やつはすでに不要な存在だ。
余計なことも知っている。
どうしてここにいるか分からないが、
消せ。

ボン・クレーは言った後で、
自分に悪意が集中するのに気づいた。
はっ、あちしとしたことが!!!!!
どうやら0ちゃんの御機嫌をますますそこねたようねい。
警官たちが銃をこちらに向けたものねい。
邪魔者はここで消すってわけ?
 
 
 
 

スモーカーはクロコダイルの強さを身にうけ、
血にまみれていた。
ロロノア・ゾロもなかなかの剣士だ。
自分も弱くはない。
それをいとも簡単に倒すとは・・・。
強ええ・・・、
この男は強ええ・・・。
だから、なんとしても今ここでとどめをさしておかないと、
世には正義というものが消えてしまう。
冗談じゃねえ!!!!
ボン・クレーの言うように、クロコダイルの傘下に下って、
生きているだけ?
クソくらえだ!!!

「・・・バカ言うな・・・、
人の道だけは踏み外せねえ・・・」
スモーカーは血を吐きながら悪態をついた。

ボン・クレーはその言葉を聞いて、なぜか目頭が熱くなった。
そうだったわよねい。

男の道をそれるとも、
女の道をそれるとも、
踏み外せぬは人の道・・・・。

あちしとしたことが、なんてことを言ったのよう。
バカだったわ・・・、あちし・・・。

散らば諸友、真の空に、
咲かせてみせよう、オカマ道!!!!!

あちし、戦うわ・・・。
戦って、潔く散るのようっ!!!!!
ボン・クレーはびしっとポーズをとった。
 
 
 
 
 
 
 

「ちょっと、サンジ君!!!!」
ナミは青ざめた顔で画面を見つめるサンジの肩をゆさぶった。

「ルフィはどうしたのよ?」
「え・・・?
ああ、もう一つのオールブルーっていうのを盗りに・・・」

言った瞬間、ナミの目がキラキラと輝いた。
「うそっ!!!!
どこにあるの?」
「え・・・ゾロの寝室らしいんですけど・・・」

サンジは言ってから、
胸がずきりとした。
クロの言葉を思い出し、ぎゅっと手をにぎりしめた。
オレは、そんなの全然気づかなくて・・・、
抱かれるしか能がないって言われた。
そんなんじゃねえ・・・。
違うんだ・・・。

悪いのはみんなゾロだ。
ゾロがまりもなのが悪いんだ。
ゾロが腹巻なのが悪いんだ。
いつもいつも、ゾロがあーんなことやこーんなことするから悪いんだ。
オレじゃねえ・・・。
オレは悪くねえ・・・。
 
 
 

画面の中で、
ゾロがふらふらと立ち上がった。
瀕死の重症なのは間違いない。
血が出ている。
それなのにクロコダイルが何かをしたら、
ゾロからものすごく血が出た。
 
 
 

サンジはぐっと手を握りしめた。
・・・何やってんだよ、まりもマン!!!!
てめえの気にいりの腹巻が真っ赤になっちまったじゃねえか!!!!
なんで、死にかけてんだよ・・・。

死ぬのか?
死ぬのかよ、てめえ。
あいつに殺されちまうじゃねえか!!!!

ウソだろ?
これはウソだろ?
本当のことなんかじゃねえだろ。

・・・信じねえ、こんなの。
オレをほっぽって戦って、死にかけてるじゃねえかよ。

・・・なんだよ、コレ。
許せねえ、こんなの。

なんで・・・なんで・・・、
オレがこんな思いしなけりゃならねえんだよ!!!!
 

エースは逃げろと言った。
本気だった。
ルフィも逃げろと言った。
けど・・・。
 
 
 
 
 

てめえのせいだ!!!!
全部、てめえのせいだ!!!!!
 
 
 
 
 
 

サンジは突然、小屋を出て走り出した。

チクショウ!!!!
てめえが悪いんだ!!!!
 

走っているうちに、なぜか涙が出た。
ハナ水も出た。
 
 
 
 
 
 

だが、サンジはそれをぬぐいもせずに、全力で走った。
 

ロロノア・ゾロのもとに。
 
 
 
 
 


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