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エースはミホークと対峙していた。
ミホークは、ゾロの剣の師匠であり、
ゾロの越えられない相手である。
そのミホークが剣を出して、エースの目の前に立ったのだ。
「世界一の大剣豪」、
それがこのミホークなのだ。
おそらくミホークが本気を出せば、
一振りで、この館など簡単に崩れ去る。
勝てるか?
じりじりと間を読みながら、
エースは自問した。
いや、勝つ!!!
愛の力ってやつで、勝つ!!!
ミホークはじりじりと間をつめていた。
愚かなものよ、
このミホークに戦いを挑んで勝てるはずはないのだ。
こやつもゾロと同じで、
いい目をしておる。
斬るには惜しい小僧だが、
我が道をさまたげるのならば、容赦なく斬る。
バカな男だ。
放っておけばいいものを。
サンジを逃がして何になるというのだ。
あやつは窃盗団の仲間で、
ゾロがすでに手を入れているというのに。
なぜ命まで賭ける?
「愚かな」
ミホークの言葉に、
エースはニヤリと笑った。
「アホに惚れちまったんだ。
しょうがねえ」
何の迷いもないエースの言葉だが、
ミホークはどうしても理解できなかった。
愛するとか、
惚れるとか、
そんなものは必要ないのだ。
感情を混乱させ、
正常な判断力を奪う。
最近のゾロはどうだ?
サンジにふり回されている。
あのコックのせいで、ゾロは変わってしまった。
「あんたのロロノア家の後継者もサンジに惚れてるぜ。
あんたがその気なら、
オレにサンジをくれ。
そしたら、ゾロとサンジは切れるだろ」
エースの言葉にミホークは返答しなかった。
それは、ミホークとクロが考えたことのあるシナリオでもあったのだが・・・。
サンジは間違い無く、
我々にとっては邪魔だ。
不必要だ。
排除すべきだ。
答えは、はっきりしているのだ。
排除すべきなのだ。
なのに・・・、
最後の最後で出来ないのだ。
どうしてだ?
なぜなのだ?
ミホークは迷いつつ、
エースに刀を向けた。
空気の密度は高まり、
少しの動きでも、
五感に響いた。
しかし、
突如、はりつめた空気が破られた。
「大変だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
ゾロが死んだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
心臓が止まってるんだぁぁぁぁ!!!!!!
サンジも連れて行かれちまった!!!!!」
ウソップが泣きながら走り込んできたのだ。
ミホークとエースは顔色を変えて、
瞬時にそちらに向かって走った。
ウソップは案内しつつ、
ハナ水をたらして泣いた。
泣きながら、文句を言った。
「あんなとこでケンカするより、
あんたらがもっと早く来てくれたらっっっ!!!
あんたらにとって、
ゾロは大事じゃねえのかよぉぉぉぉ!!!!!
サンジは大事じゃねえのかよぉぉぉぉ!!!!」