再び出会えぬ愛しき君に
 
 
 

シャンクス・サンジ
 
 
 
 
 

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穏やかに海は凪ぎ、
風は静かに船をすすめる。
空を照らし出す茜雲。
日没前の海は静かだ。
赤く染まった空は、
だんだんと彩度を失っていく。
海面がきらきらと輝くと、
太陽は姿を隠し、
冴えた月が顔を覗かせる。

「・・・ら」
「・・・お頭」
幾度か声をかけられ、
シャンクスはゆっくりと目を開けた。

目の前には明るく輝く船。
暗くなれば、なる程、船の輝きは増す。
薄暗がりから煌々と明かりが漏れている。
海上レストラン、バラティエ。
この前おとずれた時と何ら変わりのない船。
相変わらず、繁盛しているのだろう。
客たちの小舟がたくさん横付けされているようだ。

「お頭、あと10分くらいで着きますぜ
そろそろ小舟をつけましょうか」
「まだ、待っていろ。
こっちの電気はつけるな」
なんのために?
怪訝な顔をする船員に、
ニヤリと笑みを浮かべてシャンクスは答える。

「いいか。
見つからないように、
こっそり船着き場に行って、
一斉にレストランに入って、
一斉に注文するんだ」
・・・。
「それから、一斉に料理を注文する。
あいつら、驚くぞ。
わはははは」
・・・。
また、お頭が妙なことを・・・。
着いたらすぐバラティエで食事ができると思っていた船員は肩を落とす。
・・・なんのために?
恐らくわけなどないのだ。
ただ食事をするだけなのだから。

だんだんと明るさを増すレストランを横目に赤髪海賊団はその時を待つ。
「小舟に少しずつ乗り込んで、
隠れておく。
そして一気に突入だ!!」
・・・どうみても、少しずつ入り、
順に注文していった方が早く食事できるのに・・・。
だが誰も反論はしない。
長年の経験で言っても無駄だということが分かっているからだ。

シャンクスは1番に小舟に乗り込んだ。
バラティエに行くだけだから、
危険はないだろう。
それでも、無言で側近たちも小舟に乗り込む。

かなり暗くなった水面を小舟は静かに進む。
既に上がりかけた月よりも眩しいレストランは目の前だ。
船着き場の隅の方を選び、
案内係の店員の目を盗み、船を着けた。

音をたてぬように、ゆっくりと店に近付いていく。
もう、少しだ。
その時、誰かの話声が聞こえてきた。

「・・・オーナーは・・・」
シャンクスは仲間に先に行けと合図をすると、
声の聞こえた方に近寄っていった。

店からは死角になるだろう暗い場所。
そこにだれかいるらしい。
「なあ、お前さえよければ、
オレが口きいてやろうって言ってるんだ」
返事をしない相手になおも言葉がかけられている。
「お前がいいコにしてれば、
この店には手出しさせねえよ」

・・・なんだ。
オヤジが誰かくどいてるのは分かるが。
ゼフのやつ、
なんかゴタゴタに巻き込まれてやがるのか。

シャンクスは言葉の主の顔を見ようと伸び上がった。
相手を壁に押し付けるようにしている大きな体が見えた。
いかにも金満実業家という感じの後ろ姿。

その男が動き、
相手が視界に入る。

チビナス!!!???
 
 
 
 
 
 

2



この話はクソショウセツ「いと小さき掌の君に」の続編になります。


クソショウセツ
厨房裏