夜鳴鴬
 

*1*
 
 
 
 

嫉妬。

最初は小さなものだった。
ギンはそう思う。

サンジさんの目。
追いかけているのは、あの剣士。

オレがあんたを見るように、あんたはあいつを見ている。
ケンカして。
離れて。
だけど、視線はまた剣士にもどる。

どうしてだ。

オレを見ずにその視線は素通りする。
サンジさん、あんたはオレのことをどう思っているんだ。
あんたはカラダをくれた。
オレは天にものぼる気持ちだった。

あんたを得た喜び。
幸せで。
幸せで。
幸せで。
言葉になんかならない。

時が止まってしまえばいい。
そしたらあんたは永久にオレの腕の中だ。
オレはあんたを永久に抱いていられる。

ゾロを見るな。
オレはおかしくなる。
ゾロを見るサンジさんの目から光を奪ってしまいたいほどに。

サンジさん。
オレを見てくれ。
オレはあんただけを見てる。
 
 
 
 
 
 
 
 

サンジはいつものように厨房で料理をしていた。
今は船には誰もいない。
船の修理でしばらくここにとどまることになり、皆は勝手に出ていた。
ここはいい港だ。
何でも手に入るし、町もでかい。

「サンジさん」
不意に背後から声を掛けられて、サンジは振り向いた。
「なんだ、ギンか」
ギンは、というよりクリーク船団も偶然ここの港にしばらく留まっていた。
久しぶりの再開。
毒ガスの後遺症などなく、元気そうなギンとサンジは時々会っていた。
「ちょっと出ませんか」
ギンがそう言うとサンジはあっさり承諾した。
「ああ、いいぜ。でも、どこに? 」
「オレの船を見てもらいたいんですけど」
どうせ、しばらくはここを動くことはない。
それならば。

青い青い海。
その船は入り江の奥にひっそりと停泊していた。
「へえ。結構でけぇじゃねえか」
サンジはずかずかと中に入り、船の様子を見て回る。
上品な内装の船だ。
「てめえにゃ不似合いだな」
サンジの感想にギンは苦笑した。
まったく、この人は。
人の気も知らないで。
あんたに似合うように作ったんだから。
極上のワインを注ぎ、すすめると、サンジは笑って飲み干した。

「サンジさん・・・」
ギンはサンジを抱きしめて、囁く。
「オレにはあんただけだ」
サンジは、何も言わない。
だが、抵抗もない。
同情。
そんなものは要らない。
掴みかねるサンジの本心。

オレはもう息もできない。
壊れるのはオレの心か。
それともサンジさんの心か。
あんたはオレのものだ。
大切な人。
オレの全て。

ゆっくりと崩れ落ちる体をオレは受け止める。
胸が高鳴る。
オレは宝物を手にした。
他には何もいらない。
何一つ欲しくない。

アイシテル、サンジさん。
 
 
 
 
 
 
 

*2*