side SANJI
*1*
オレは時々じっとしていられなくなる。
どうしてなんだろうか。
不安で。
切なくて。
誰かに側にいて欲しくなる。
馬鹿馬鹿しい。
オレはオトナだ。
独りで十分生きていける。
だがどれだけ自分に言いきかせても、誰かを求めていることに気付く。
誰だっていい。
誰だって。
だけど口には出せない。
馬鹿馬鹿しすぎて。
オレは寂しくなんかない。
船にはナミさんがいる。
ナミさんを見てると幸せな気分になる。
調子を狂わされるルフィもいる。
あいつといると全てがどうでもいいような気分になる。
結構小心者でお人よしのウソップ。
むかつく程マイペースな剣士、ゾロ。
不満なんて、無い。
船はオールブルーに向かっている。
目を閉じると、夢の海が見える。
オレは夢に近づいている。
だけど。
足りねえ。
何かわからねえが、足りねえ。
オレの中の衝動。
空回りする。
どうにかしたい。
どうにかしてくれ。
深夜。
オレはデッキにもたれて、タバコをふかす。
このざらざらした感じに意味なんてない。
眠れねえ。
どうしてだ。
月があかるすぎるから?
眩しい光が水面に跳ねる。
静かに船は進む。
波の音だけが聞こえる。
静かだ。
穏やかな日々。
いいじゃねえか。
ただ起きて、飯食って、また寝て、また次の日が来る。
それでも、オールブルーに近づいているならば。
オレが望んでいた事だろう・・・
「何してやがる」
聞きなれた声が背後からする。
ゾロだ。
「てめえこそ」
オレはゾロを振り返る。
月明かりに照らされたゾロの姿。
いつものゾロと違って見える。
なんだか彫像みてえ。
コレハ本物ナノカ?
確かめてえ。
これはオレの知ってるゾロなのか。
それとも月の光が見せる幻か。
待っていた?
オレは待っていた?
オレを満たしてくれるヤツを。
オレを解放してくれるヤツを。
オレはゆっくりと微笑んだ。
こいつなら。
オレはゾロに近づいて耳元で囁く。
「なあ。イイコトしねえ?」
ゾロの目が細められる。
苦しいのはカラダか。
それともココロか。
オレには分からねえから。
オレの中で燃える火。
消せない炎。
答えが欲しい。
渇望の理由を。
このまま続けてもイイデスカ?
こっから先はかなりやばいです。