肉体の悪魔
 

*5*

side  SANJI
 
 
 
 

最近ゾロが変だ。
はっきりとオレを避けてる。
あの朝から、オレに近寄ろうとしねえ。

憑かれたように剣の練習ばかりしている。

どうしてだ。

オレがじっと見ていると目をそらし、どっかにいっちまう。
そりゃ、オレたちは、「オトモダチ」でも「コイビト」でもなかった。
じゃ、なんで毎晩「セックス」してた?

オレはゾロのカラダをもらったら、それでよかった。
ココロまでもらおうとは思わなかった。

手に入れようなんざ、思わねえ。
でも、カンチガイしかけてた・・・

ゾロはオレの事、ちっとは気にかけてるんじゃねえかって。
たまに優しく抱き締められると。

やっぱりオレのもんじゃなかった。
オレと目も合わせねえ、ゾロ。

何でだ?

聞きたいけど、聞けねえ。
オレは女じゃねえから。
女みてえに抱かれてえなんて、言えねえ。
あいつのオンナには、おれじゃねえ誰かがなる。
そんなことはとっくに分かってるのに。

オレのカラダは夜になるとゾロを欲しがる。
苦痛にすら感じた、乱暴な愛撫。
ゾロでないと、ダメだ。
どうにか、なりたい。
 
 
 
 
 
 

イライラしている、ゾロ。
オレもイライラしてる。
元通りになっただけだ。
そう思っても、カラダがゾロを記憶している。

忘れろ。
だけど、忘れられねえ。

船が港に着いた時、ナミさんが、しばらくここにいよう、と言い出した。
最近のゾロは誰も声をかけたくないような雰囲気だ。
おかげで、みんな陰気になっている。
しばらく、息抜きしたいと思っても、無理はねえ。
くじびきで、ウソップが残ることになると、みなそれぞれ、外に出る。

オレも表面上は普通にしてたが、イラつく自分を感じていた。
なんで、あいつのせいで、オレまでが、ダメな気分になるんだ。
町のお姉さんを見たら、オレの気分はよくなる筈だ。

きれいなお姉さんを見ると、一瞬楽しい気分になったが、しばらくするとオレの気分はまた落ちてくる。
ぼーっと歩いてると、誰かにぶつかった。
「兄さん、ぶつかっといて、挨拶もなしか?」
ガラの悪そうな野郎どもの集団だ。

「知らねえな」
オレがいうと、やつらはむかついたらしい。
「なんだと、この野郎!!! やられてえのか!!!」
あほじゃねえの、こいつ・・・
「やれるもんなら、やってみな」
「てめえ!!!!」
男たちが、オレを取り囲む。
女たちが、悲鳴をあげる。

誰かがオレにとびかかってきた。
オレはケリをいれてやった。

つまんねえ。
こんな、クズ。
 
 
 

「加勢するぜ」
聞き憶えのある声。
ゾロが剣を抜く。

「いらねえよ」
オレは違う男を蹴った。
誰のせいでこんな気分になってると思ってるんだ。

男達は、逃げ出していく。
見物人も逃げていく。
残されたのは、オレとゾロ。

オレとゾロの視線がからむ。
だが、声をかける言葉がねえ。

なんて言う?
「いっしょに、飲むか?」
ウソくせえ。
オレはゾロと会話する言葉を持ってねえ。
背をむけてさるオレにゾロも言葉をかけねえ。
ゾロもオレにかける言葉がねえと思う。

なのに、どうしてか、さっきみたいな時は、同じ反応をする。
チクショウ!!

あてどなく歩いていると、好色そうな男が声をかけてきた。
「なあ、どこか行こうぜ?」
オレには、何もすることがねえ。
「いいぜ」
どうだって、いいじゃねえか。
ゾロの事なんて、考えたくもねえ。
はっきり連れ込み宿と分かる宿屋の扉をくぐったときも、オレには何の感情もわかなかった。
 
 
 
 

*6*


続、すれ違いサンジ。
かなり自棄になってます。
この後、どうなるのでしょうか?
多分、名もない男とのエロを期待する人なんているとは思えないが・・・
います?
 
 
 

もう、飽きた      さ、まだまだ、いこーか。