not yield ZORO★SANJI |
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「あーーー、クソさみい・・・」
ゾロは背後から聞こえる声を無視して眠りにつこうとしていた。
布団にくるまったゾロを横目で見ながら、
サンジはうろうろしていた。
窓の外からは、ごうごうという風の音が聞こえている。
外は降りしきる雪で視界も悪く、もとより一面の銀世界だ。
ここはグランドラインの中の小さな島。
嵐にまきこまれ、ようやく着いた島に一軒しかない古ぼけた宿屋だ。
凍えかけながら、やっと宿にたどりついた。
戸を開けてもらうのにも苦労した。
しばらく怒鳴り続けていると、
中からは年老いた爺さんが一人あらわれた。
頼み込んで泊めてもらうことになったが、
部屋の暖房がない。
「すまんのう。油を切らしておってな・・・」
「すまんの・・・」
見るからに貧しげな爺さんに何度も何度もあやまられ、
誰も文句を言うことはできなかった。
かろうじて粗末な部屋に通された。
かつては繁昌していたのだろう。
あちこちに老朽化が見られるが、
部屋数は意外に多く、部屋も広い。
かろうじて布団は人数分。
くじ引きで、ルフィとウソップ、
ナミとチョッパー、
ゾロとサンジが同室に決まった。
がらんとした部屋。
部屋だけは広く、小さめの布団が二組、隅の方に置かれている。
さっさと寝ちまうか。
ゾロはそう思い、自分の布団を敷きにかかった。
「なんだ・・・ベッドじゃねえのか・・・」
サンジは不思議そうにゾロが布団を敷いている様子を見ている。
「サンジくーーーん、入っていい?」
「ナミさん!!!どうぞ!!!」
ゾロは眉をひそめた。
ナミがこういう言い方をする時は絶対何かあるのだ。
「寒いのよ・・・」
「ああ、ナミさん!!オレが温めてさしあげます!!!
・・・・イタタタタタ!!!」
ナミに思いっきりはたかれて、
サンジは後ずさった。
「結構よ!!!それよりサンジ君の布団が欲しいなあ」
「ナミさん、貴女のためなら、布団くらい!!!」
「ありがと」
にっこり微笑むナミにハアト目になっているサンジ。
ゾロはムカムカしてきた。
このアホコックが!!
いいように使われてやがる!!
ナミは微笑みながら容赦なくサンジの掛け布団も敷き布団も運んで行った。
「ああ、クソっ!!そうと知ってりゃ先に寝ときゃ良かった!!!!」
ゾロは悔しがるサンジを無視して、
自分はすっぽりと布団にくるまった。
あまり大きな布団ではないが、結構暖かい。
まあ、これでなんとか眠れそうだ。
サンジの事が気になったが、
自業自得というものだ。
己のアホさ加減に、たまには頭を冷やすといい。
サンジはしばらくナミが去った戸口を眺めていた。
それから部屋の中を見ると、
まん中に布団を敷いたゾロがもう寝ているようだ。
・・・。
あァ、もう寝てんのか?
・・・さみいな・・・。
・・・・クソ寒い。
じっとしていると体の隅々に冷たさがしのびこんでくる。
「オイ・・・ゾロ」
ゾロはもう、うとうととしかけていた。
「あァ?」
「布団くれ。寒い」
何だ、コイツ、何ふざけたことぬかしやがる。
「・・・やらねえ・・・」
「バカ寒いんだよ。オレはてめえと違ってデリケートだから・・・」
サンジの言葉を無視して眠る。
突然、冷気が忍びこみ、ゾロは目を開けた。
サンジがゾロの掛け布団をとろうとして引っ張っていた。
ゾロもあわてて布団を掴む。
もう少しで布団が破れるというところで、
サンジがやっと手を離した。
その勢いでゾロはひっくり返った。
こいつ・・・コロス。
「上等じゃねえか」
ゾロは刀を手にとった。
「あァ、やんのかよ!!!」
ゾロの剣が宙を舞う。
サンジも素早く反応し、蹴りを入れる。
何度かやり合った時だ。
グシャッ・・・。
ガターーーン!!
床の木が腐っていたのだろう。
床がめりこんでしまった。
「何の騒ぎなのよっっっ!!!」
仁王立ちのナミ。
「ああああ・・・・床が・・・・床があっっっっ」
がっくりと膝をつく爺さんに、
さすがのゾロとサンジもやりすぎたと気づく。
「オイ・・・・」
「いいんじゃ・・・・いつかは・・・・。
いつかは・・・こうなると・・・・・。
・・・・・疲れた・・・」
よろよろと歩いて行く爺さんに、かける言葉もない。
床の木の隙間からはひゅうひゅうと音を立て、
風が舞いこんで来る。
家具らしき家具もないため、
床を塞ぐことも出来ない。
さっきより悪いじゃねえか。
ゾロは隅に布団を寄せるとさっさと自分だけくるまった。
何でかサンジといるとこうなる。
物事がうまくいかねえ。
クソ・・・・。
サンジは布団にくるまって眠りにつこうとしているゾロをじっと見た。
・・・ちぇ。
暴れてあったまったけど、
また寒くなるかなあ。
ゾロの奴、とっとと寝やがって。
ナミさんに布団を差し上げるのは当然だろ。
気持ちよさそうに寝やがって・・・・。
・・・・・。
・・・・・。
さみい・・・・。
急に・・・寒くなってきた。
どうすりゃいいんだ。
・・・寒い。
・・・・どうすりゃ・・・・。
このリクがきた時、
私が一番先に思いついた言葉は
「ふとんがふっとんだ」
であることは言うまでもありません。