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王国の海

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ゾロは無言で部屋にもどった。
サンジはルフィのものですらなかった。

あの時、
森でいた男はサンジを狙っていたのか。

あの時、
サンジに料理させたわけだ。

あの時、
ルフィがあんなに機嫌が悪かったわけは・・・。

そうか、
みんな知っていたのか。
知らなかったのは、オレだけか。
・・・そうか。
 
 
 
 
 
 

「ロロノアをしばらくここにいさせる。
これからはきちんと用心するように」
ミホークはそう言うと、颯爽と帰っていく。

「・・・オレが切られたらよかったんだ」
不意にサンジがぽつりと言った。

ルフィが何か言おうとする前に、
エースがサンジの頬を思いっきり打った。
壁に当たってサンジの体が倒れる。
口の端には血が滲んでいる。

「お前をかばって弟は切られたんだよ」
エースから憎しみににた炎が立ち上がる。

「エース、オレは平気だから、
怒るなよ」
ルフィの言葉にエースはニヤリと笑う。
「懲りたか?」
「懲りねえ!!」
ルフィは全く動じない。
「・・・やっぱりな」
少し呆れた顔をするとエースは部屋を出ていった。
 
 
 
 

サンジはうなだれていたが、
のろのろと立ち上がった。
「メシ、作るわ」
そう言ってキッチンに向かう。
ルフィは心配そうにその後ろ姿を眺めている。
「あ・・・オレ見てくる」
ウソップが汗を流しながら追いかける。

部屋に残ったのはゾロとルフィだけ。
「狙われたのはサンジだ」
ルフィはゾロの顔を見てはっきりと言った。

「サンジがオレをかばおうとしなけりゃ、
二人とも切られてなかった」
そう言って笑う。
「つまんねえなあ、王子なんて。
ちっとも大事じゃねえくせに。
都合のいいときだけたてまつってさ」
言葉もないゾロに構わず、ルフィは続けた。

「それで、お前はオレを守るわけ?
それともサンジ?」
ルフィには分かっているはずなのに。

「・・・サンジだ」
嘘のつけぬゾロは正直に答えた。

「敵は外じゃない。中だ」
ルフィは冷たい声で言った。
そう、王子でさえ迷うことだ。
なのにはっきりと愛人をねらう。
王の気質、
王の性格、
王の嗜好を熟知している。
何より、サンジを狙うということが内部の者の証明だ。
 
 
 

表面上はいつもと同じ夕食が終わり、
厨房にいるサンジの様子をゾロはぼんやりと見ていた。
 
 
 

知っていたら、
コイツを見なかった?
いや、
多分、
あの木の下で見た瞬間からとらえられていた。
 
 
 
 

後片付けも綺麗に終わり、
サンジは厨房を出ようとした。
ゾロが床に座って酒を飲んでいた。

視線が会う。
見つめ合う、目と目。

サンジは目をそらすと、
ゾロの側を通り抜けようとした。

「ここにいろよ」
ゾロが言葉をかける。
ゾロの方を振り返らずにサンジは言った。

「仕事があるから」
抑揚のない冷たい声。
遠ざかる足音と話声。
ああ、そういや、ギンがいたっけ。

・・・仕事・・・か。
今頃気づくことが多すぎる。
そうか。
あの男のところに、行くのか。

オレの「仕事」はお前を守ること。
だが、こんなんじゃできやしねえ。
「仕事」じゃなくても守りてえのに。

オレの手で守りてえ。



 
 
 
 
 
 
 

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