王国の海 |
ゾロはぐったりしたサンジを抱きしめた。
気づくとギンがすぐ側に立っていた。
「あんた・・・。
もうオレには庇いきれねえ」
松明が焚かれ、
男達がこちらに向かって走ってくる。
「オレは・・・・。
逃げねえよ」
サンジを抱きしめたまま、
ゾロがぽつりと言った。
恐らく、
死しか残されていない。
王の持ち物に手を出すなどと、言語同断だ。
「そいつが刺客か!!!
ゾロ、貴様が仕留めたのか!!
彼は無事か!!」
緊迫した雰囲気の精鋭たちは、
サンジが気を失っているだけと知り、
安堵の表情を見せた。
ゾロはサンジを抱きしめたまま、
その場で座っていた。
側近の一人が妙な雰囲気のゾロとギンを見た。
「この辺をくまなくしらべろ!!」
調べられると、
おのずと明らかになる情事の証。
「・・・ちょっと・・・」
「オイ・・・これは、どういうことだ」
さっきまでゾロとサンジが愛しあった場所も「現場」の一つとして目をつけられた。
それからほどなくゾロは捕らえられた。
ギンも無事ではすまないだろう。
気を失ったままのサンジは見たこともない男の手で運ばれていく。
・・・クソ。
これが現実ってやつか。
オレたちは歯車の一つにすぎない。
どれほどあがいても、
強大な権力にはたちうちできねえ。
・・・冗談じゃ、ねえ。
オレはあいつをあきらめねえ。
オレはサンジを助けてやりてえんだ。
いつもあの目は語りかけてる。
・・・タスケテって。
あいつをあの海の向こうに返してやりてえんだ。
・・・二人で行きたいなんて、
夢みてえなことは言わねえ。
ここはアイツにはふさわしくねえ。
アイツは閉じ込めて隠しておくモノじゃねえ。
・・・これは反逆ですらない。
ただ、
愛しいだけだ。
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