★ Ura-Top    ★  地下食料庫 ★ 王国の海 ★


 

王国の海

23
 

 
 
 
 
 
 
 
 

サンジはふらふらと庭を歩いていた。
護衛や警備の目を盗んで、
ルフィの館の方に向かって歩く。
今日は、
いい月が出ていた。

あの桜は・・・。
きっとさぞかし美しいことだろう。
そうおもったら、
いてもたってもいられなくなった。

こっそり王の眠るベッドから抜け出した。
・・・ちょっとだけ、
ちょっとでいいから、
見てえな。

裸足で出てきたため、
芝生が足にちくちくする。

大木に近付くと思ったとおりだ。
風がふくたびに、
はらはらと散る花びら。
一つ一つが妖しく輝いて降ってくるようだ。

根元の近くまで来たとき、
サンジはそこに誰かいるのを見つけ、
体をこわばらせた。

・・・自分の格好は・・・。
素肌に白いガウンをまとっているだけ。
どうしたら・・・。
誰がいるんだ?

今頃、誰が・・・?
サンジの目が大きく開かれる。
 
 
 
 
 

まさか・・・。
 
 
 
 
 

緑の髪、
耳のイアリング、
腹巻き・・・。
 
 
 

間違えるはずもない。
 
 
 
 

ロロノア・ゾロ。
 
 
 

これは、夢なのか?
 
 
 

「待ったか?」
懐かしい、声。
どれ程、聞きたかったことか・・・・。
本物?

・・・本物だ!!
 
 
 
 

サンジはゾロに抱きついた。
温かい。
暖かい。
この体に触れると、
冷たい自分の体まであたたかくなる。

「おせえよ・・・・バカ」
こんなに待たせて。
・・・もう離れてなんかやらねえ。
も一度お前がああ言っても。
 
 
 
 
 
 

「行くか?」
耳もとでゾロに囁かれ、
サンジは大きくうなずいた。

もう、自分には何が大切かが分かってしまった。
だから、もう迷うことはねえ。
もうバラティエ王国のことも。

「じゃ、おまえはオレだけの「プリンス(王子様)」にしてやる。
ま・・・「プリンセス(お姫様)」でもいいけど」
ゾロの言葉にサンジは泣きながら悪態をついた。
「プリンスに決まってるだろ!!!」
 
 
 
 
 
 
 

いつもルフィ達と来る海岸にその小舟は止まっていた。
月の明かりの中、
水面がきらきらと輝く。
夜なのにまぶしい。

ルフィやナミやウソップには簡単に手紙を書いた。
この国からでていく自分たちに後悔などない。

・・・もう、
ここは王国の海じゃない。
だれのモノでもない海だ。

ただの海へいく。

それは、
なんという幸せ。
 
 
 
 

幸せ。
 
 
 

二人は月明かりの元、静かに口付けた。
絡められた指が離されることはない。
 
 

もう二度と。



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

end
(あとがき)