王国の海 |
サンジはふらふらと庭を歩いていた。
護衛や警備の目を盗んで、
ルフィの館の方に向かって歩く。
今日は、
いい月が出ていた。
あの桜は・・・。
きっとさぞかし美しいことだろう。
そうおもったら、
いてもたってもいられなくなった。
こっそり王の眠るベッドから抜け出した。
・・・ちょっとだけ、
ちょっとでいいから、
見てえな。
裸足で出てきたため、
芝生が足にちくちくする。
大木に近付くと思ったとおりだ。
風がふくたびに、
はらはらと散る花びら。
一つ一つが妖しく輝いて降ってくるようだ。
根元の近くまで来たとき、
サンジはそこに誰かいるのを見つけ、
体をこわばらせた。
・・・自分の格好は・・・。
素肌に白いガウンをまとっているだけ。
どうしたら・・・。
誰がいるんだ?
今頃、誰が・・・?
サンジの目が大きく開かれる。
まさか・・・。
緑の髪、
耳のイアリング、
腹巻き・・・。
間違えるはずもない。
ロロノア・ゾロ。
これは、夢なのか?
「待ったか?」
懐かしい、声。
どれ程、聞きたかったことか・・・・。
本物?
・・・本物だ!!
サンジはゾロに抱きついた。
温かい。
暖かい。
この体に触れると、
冷たい自分の体まであたたかくなる。
「おせえよ・・・・バカ」
こんなに待たせて。
・・・もう離れてなんかやらねえ。
も一度お前がああ言っても。
「行くか?」
耳もとでゾロに囁かれ、
サンジは大きくうなずいた。
もう、自分には何が大切かが分かってしまった。
だから、もう迷うことはねえ。
もうバラティエ王国のことも。
「じゃ、おまえはオレだけの「プリンス(王子様)」にしてやる。
ま・・・「プリンセス(お姫様)」でもいいけど」
ゾロの言葉にサンジは泣きながら悪態をついた。
「プリンスに決まってるだろ!!!」
いつもルフィ達と来る海岸にその小舟は止まっていた。
月の明かりの中、
水面がきらきらと輝く。
夜なのにまぶしい。
ルフィやナミやウソップには簡単に手紙を書いた。
この国からでていく自分たちに後悔などない。
・・・もう、
ここは王国の海じゃない。
だれのモノでもない海だ。
ただの海へいく。
それは、
なんという幸せ。
幸せ。
二人は月明かりの元、静かに口付けた。
絡められた指が離されることはない。
もう二度と。
(あとがき) |