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王国の海

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「あ・・・オレ、チョッパーだ・・・」
ゾロは珍しい生き物をまじまじと見た。
しゃべるトナカイ?
えれえ、おどおどしてんな。
たしか、コイツ、医者らしいけど。

今はアラバスタのビビがいないが、
これで新入りとはとりあえず顔合わせが終わったようだ。

結局自分が不在の間に増えたメンバーは2人か。
まったく狭き門てか。

「こらっ、ナミさんの分を食うんじゃねえ!!!」
またルフィがサンジに殴られている。
・・・毎日毎日、飽きねえもんだ。
バラティエは海の幸で有名だ。
ゼフの天才的な料理は各国にも名声は届いていた。
コイツはゼフの孫にあたるらしいが、
やはり料理の腕はなかなかだ。

医療に優れたチョッパーといい、
ルフィの人選には失敗はない。

だが、どうしてもサンジといるとケンカになってしまう。
イライラして気がつくと険悪な雰囲気だ。

「あーあ、桜がもうみんな散っちまったなあ」
ウソップがしみじみと言う。
「でも満開の時、あそこでメシ食ったじゃん!!
キレイでも食えないと駄目だ!!」
ルフィは花よりダンゴらしい。

「オッ、オレ、あんな綺麗な桜初めてみた!!
桜が降ってくるみたいに咲くんだ」
チョッパーが興奮気味に喋る。
「そうね。あの桜は「王国の奇跡」と呼ばれる美しさだもの」
だが、誰もが見られるものではない。
普段はほとんど人が近寄らないから、
樹を痛めることもない。
美しいまま、
美しい姿を毎年見せる。
誰にでも見える場所にあったら、
今、これだけ美しく咲き誇ることができるだろうか。
かなりの老木なのだろう、
風格のある姿。
それを保ちつづけることは、
恐らく、できない。

サンジは黙ってタバコをふかしていた。
ナミの言葉に必ず何か言うヤツなのに。

・・・あれは、
幻なんかじゃねえ。
やっぱり、コイツだ。

胸が、ざわざわする。
木々のそよぐ葉のように。
密やかに積もる感情の花びら。
それは音もなく、
ひっそりと積もる。



 
 
 
 
 
 
 
 

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