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王国の海

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「あれ、ゾロじゃねえか。
いやあ、わりィ、わりィ」
サンジだった。
・・・コイツ、
人を殺しかけてこの態度は何だ・・・。
ゾロの額に青筋が入る。

「てめえがいなくなったんで探してたら、
オレまでルフィ達とはぐれちまってよ」
まるでゾロが悪いんだといわんばかりの態度に、
さすがのゾロも呆れ果てる。
なんて緊張感のねえ奴だ。
ここは狩り場だ。
下手すると誤って撃たれる。
しかも・・・。
・・・さっきまで、
この辺には暗殺者がいたんだぞ。
てめえなんか、すぐやられそうじゃねえか。
そんなに隙だらけで・・・。

「で、・・・どっちに行けばいいんだ?」
「なんだ、てめえ、迷子かよ」
図星をつかれたゾロは反論できない。
「うるせえぞ、クソコック!!」
コイツ、本当にプリンスだったのか?
まあ、ルフィでもそうなんだから・・・・。

言い争いをしながら森の中をずんずんと進む。
一向に見つからない出口。
そのうち、
口論にも疲れたのか、
互いに無口で黙々と歩き出した。

黙って歩いていると、
鳥の声が聞こえる。
ケモノの鳴き声、
水の音。
木々の間からかすかにもれる光がきらきらと輝く。
湿った森の中の空気。
風にざわめく葉。

不思議な空間だ。
けれど、心地よい。

聞こえるのは自分の他に、
もう一つの足音。
つかず離れず。
 
 
 

・・・?
ゾロはサンジの足音が途絶えたのに気づき、
振り返った。

森の中に時々ある巨木。
その木を見上げて、
サンジは佇んでいた。

ゾロは胸を突かれた思いがした。
・・・あの顔だ。
桜の木の下で見せた、
あの壊れそうで儚げな表情。

ゾロもまた立ちつくし、
ただサンジを見ていた。

いつまでも動かないサンジ。
まるで時が止まってしまったかのようだ。

・・・コイツは時を止めたいのか?
 
 
 
 
 

サンジは木を見上げていたが、
ふと我に返った。
この森に入って時間の感覚がない。
自分はどれくらい、
木を見ていたのか。
分からねえ。

ゾロがいるのに。
ゾロがオレを見ている。

・・・ああ、
ずっとこの森でいられたらいいな。
 
 
 
 
 

ゆっくりとゾロはサンジに近づいた。
重なりあう唇。
 
 
 

サンジの瞳が動き、
一瞬泣きそうな顔をした。
 
 
 

このまま、ずっと・・・。
 
 
 

「もう、行かねえと」
ゾロはそう言うと、
サンジの手をひいた。
サンジはそのまま手をひかれて歩きはじめた。

あたたかい、
てのひら。

二人は無言で歩き続けた。



 
 
 
 
 
 
 
 

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