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 王国の海 番外編  



 

★3★
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

サンジはぼんやりと天井をながめていた。
目を閉じても、
目を開けていても、
消せない記憶。

動こうとすると身体の奥に激痛が走った。

あれは支配の証?
女のように組みしかれて、
犯された。
所有物?
所有物になることがバラティエを救うことになるのか?
反抗したらバラティエがどうなるかわからない。
だけど・・・、
こんな・・・。
 
 

「あの・・・何か召し上がらないと・・・」
いつの間にか側に召使いが来ていた。
たびたび来ているが、
サンジはそのたびに追い返していた。

「いらねえ!!!」
サンジはそう言うと掛けられていた毛布をかぶった。
バラティエでは見た事もないようななめらかな手触りの毛布。
いくら贅を尽くしているかが分かる。

召使いは困ったような顔をして立ち尽くしている。

・・・知るもんか。
オレは食いたくねえんだ。
何も・・・、
食いたくねえ!!!
サンジは毛布をかぶったまま、
身体を丸めた。
 
 
 
 
 

「何も食べておらんと?」
聞き覚えのある声がして、
ゴールドロジャーとその側近たちが入ってきた。

サンジは身体をこわばらせた。

「なぜ、食事をさせない?
その召使いに罰を与えろ」
ゴールドロジャーは冷酷に指令を出す。
サンジは驚いた。

「そいつは関係ねえ!!!!
オレが食いたくねえだけだ!!!!」
ゴールドロジャーはちらりとサンジを見たが、
再度命令を下した。

「罰しろ。
任務を遂行できていない」
召使いが有無を言わさずにつれていかれるのを見て、
サンジは引き止めようとして、
ベッドから転がり落ちた。
 
 
 
 
 

「ふむ。
まだ回復しておりませんな。
まだ数日は王のお相手はできませんな」
触れられ後ずさるサンジの様子を見て、
メガネをかけた男がゴールドロジャーに忠言した。

「医師のストップが出てはな。
早く抱けるようにしろ」
ゴールドロジャーの言葉に、
サンジは怯えたように身体を震わせた。

医師は苦笑した。
まったく王もひどく抱いたものだ。
えらく怯えておるではないか。
食事もとらぬとは、
かなりのわがままプリンスのようだが、
所詮かよわい子ども。

だが、王はこの子どもを気に入られた。
ひと目で気に入り、
連れてこられた。
今後の世話係に私も任命されている。
ゆっくりと手の中におさめていかれるつもりらしい。

征服した国の元王子。
人質は国そのもの。
さからえるはずはないが、
手に入ってもらわねば困る。

王が気に入ったのは何か?
この強い瞳か?
容姿だけなら、
この国にも優れたものは多い。
王の望むものは容姿だけではない。
これまで王は特定の相手を持たなかった。

二人の王子を産んで亡くなった姫とは形式的な結婚であり、
誰かにこれだけ執着するということはなかった。
貴族たちが差し出す男や女をたわむれに抱くだけで、
同じ相手を欲することはなかった。
それが、どうだ。
バラティエから少年を連れ帰ってきた。
それもはっきりした目的を持って。

だが王が、色欲に溺れるはずもない。
ゴールドロジャーはそんな方ではない。

ただのお気に入りの相手、
それだけだ。
私は医師としてサンジの体調を管理する。
それだけだ。
 
 
 
 
 

「私はおまえの体調を管理する。
おまえが食事をするならば、
王は先ほどの召使いへの罰を考え直されるかもしれんぞ」
医師の言葉にサンジは食事をすることを希望した。

この子には自由はない。
がんじがらめだ。
ゴールドロジャーがこの世に存在するもので手に入れられないものは、
何もない。
全世界の王にして、
生きながらにして「王のなかの王」と称される男。

サンジ、お前は全てを差し出すのだ。
その身体も、
心も。
過去も現在も未来も。

王が欲した。
お前のすべてを。

なぜかは分からない。
お前は選ばれたのだ。

それが運命だ。

逆らっては生きていけない。

それが運命だ。
王のものとなることが。
 

この国では王の意志がすべてなのだ。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
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