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 王国の海 番外編  



 

★8★
 
 
 
 
 
 
 
 

ルフィは毎日退屈していた。
王子だから、
好きな時に外に出してもらえない。
前に強引に外に出て、
側近のものが処分されてからは、
ルフィもさすがに外に出ることは止めていた。

「あーあ、つまんねえなあ」
遊び相手の3才年上の兄エースは、
会議とやらに出かけている。
王子はいつ行ってもいいことになっているので、
ルフィも一度だけ行った事があるが、
何を言っているのかも分からないようなことを延々と話し合い、
その上、決まらないのだ。
二度と行くもんかと思って、それっきりだ。

ルフィが行かなければいけないことになっている、
勉強の場所とか、
練習の場所とかに行くのは嫌いなのだ。
今日はなぜかナミもビビもチョッパーもウソップもいない。
あー、あいつらがいたら、
気がまぎれるのに・・・。
あいつら、
いつもせかせかしてるよな。

ナミは元王女、
ウソップは家臣の息子だった。
チョッパーはルフィが元ドラム王国の領地で見つけた、
しゃべるトナカイで医者だった。
ビビは友好国アラバスタの王女だ。
彼らは普通に勉強とか練習とかしているだけで、
ルフィがなまけているだけなのだが、
本人はそうは思ってなかった。
 
 
 

ルフィはごろごろ転がって一人で遊んでいたが、
そのうち、うとうとしはじめた。
 
 
 
 
 

・・・ 誰もいねえのか・・・?
サンジは言われたまま、
届けものをもってきたのだが、
その館にはまるっきり人の気配がしない。

庭は広いのだが、
おそろしくセンスがないのだろう。
木がてきとうに植えられ、
妙なところにぽつぽつと池とかが作られている。

・・・ヘンなとこだよな。
王の館に隣接しているので、
ここも一般市民は入れないはずだが、
きれいに管理されていた王の館とはまるっきり雰囲気が違う。
 
 

今朝、
王が突然、自分に言ったのだ。
「お前はルフィの館へ行け。
ルフィが居てもいいといったら、
そこに居てもいい。
だが、駄目だと言われたら帰って来い」
と。

あと、
「サンジ、お前は私の所有物だ。
夜になったら抱いてやるから、ここへ来い」
とも。
 
 

解放されたのか?
それとも、
見捨てられたのか?
用なしになったのか?

疑問が頭を駆け巡るが、
サンジは口にすることができなかった。
自分は奴隷のようなものだ。
オレの意志なんて、
関係ねえんだ。
王が決めた。
それだけが、
この国では絶対なのだから。

王が自分に飽きたら、
バラティエはどうなるのだろう。
時おりかすめる疑問かまた浮かんだが、
それも王が決めることだった。
おそらく、自分が何を言っても決めたことは変わらない。
 
 
 

サンジはいつものように考えることをやめ。
ぼんやりと腰を下ろしてした。
 
 
 

ふと気づくと、
目の前に黒髪の少年がいて、
サンジの顔を覗き込んでいた。
 

「うぉっ、生きてたのか!!!!
人形かと思ったのに!!!!」

サンジは、そう言って笑う、
人なつこい笑顔の少年をじっと見た。
・・・誰だろうか、これは・・・?

サンジがぼうっと考えていると、
その少年は『届けもの』の包みを素早く奪った。
そして、もの凄い勢いで中身を見た。

「うひょー、うまそう!!!!」
言い終わらないうちに、
がつがつと食べはじめた。

それには、
さすがのサンジも動転した。
ルフィというやつに渡さねばならないのに、
目の前のクソガキが喜々として食っているのだ。

「なにしやがる、
このクソガキ!!!!!」
キレたサンジは怒鳴った。

「うめえぞ、これ、
お前も食うか?」
そういいながら、そいつはサンジの口の中に食い物をねじりこんできた。

・・・なにしくさる、この野郎!!!
そう思いながらも、
サンジは少しそれを食ってしまった。
・・・なんだ、この菓子、妙な味だな・・・、
なんか調味料間違ってるんじゃ・・・。

「・・・何だ、どうしたんだ、お前?
ししし、食えよ」
そいつはそう言うけれど、
サンジとしては許せない味だった。

「これ、味付け間違ってるぞ・・・」

「なんだよ、うまけりゃいいんだ。
多少、予定と違っても。
なんだ、お前、食い物作れんのか?」

「あァ?
当たり前だ!!!!」

「なら作れ!!!!
今すぐ作れ!!!!!」

サンジは強引にさびれたキッチンに連れていかれ、
つい料理を作ってしまった。
 
 
 
 

「うおおおおお、
うめえ、
うめえ、
すげえうめえ!!!!!!
決めた、お前、オレのコックになれ!!!!!!」
そう言われ、サンジはあぜんとしながらも、
首を横に振った。

オレがコックになんてなれるわけがねえ。
だってオレには自由なんてねえんだから。
この目の前のガキからは、
明るい光がこぼれてくるようだ。
オレとは違う、
まぶしいような存在。
 
 
 

「オレはルフィってやつに、
届けものを持って来たんだ」
 
 
 

「ししししし、
ルフィはオレだ!!!!」
 
 

「あァ?
何ィ、てめえが!!!」
 
 
 

「オレの食い物はオレが食う!!!!
お前の食い物もオレがちょっと食う!!!!
だから、持ってたらくれ!!!」

サンジはルフィが意味不明なことを堂々と断言するので、
あっけにとられていた。
 
 
 
 

驚くサンジを見て、
ルフィは決めた。
こいつはオレの仲間にする!!!
オレのコックにするんだ。

さっきは何だか、
精巧な人形みたいだったけど、
今みたいにわめいたり、怒ったりしてる方がいい。
絶対そっちがいい!!!
 
 
 
 
 

ルフィはすぐにサンジの部屋を準備させた。
ギンはそれを許可したゴールドロジャーを意外に思った。

サンジさんは解放されたのか?
それとも、これは新たな束縛か?
 
 

どうか、
サンジさんを救ってください。
誰か・・・。

それがあの王子ルフィであってもかまわねえ。
あの王子は天真爛漫で汚れちゃいねえ。

オレの幸せは、
サンジさんの笑顔だから。
どうか、
サンジさんに笑顔を返してくれ。

笑顔を。



 
 
 
 
 
 
 
 
 

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