RAIN
*1*
 
 
 
 

情事の後、サンジはゆっくりとタバコをくゆらす。
ゾロはもう寝息をたてて寝ている。
ゆっくりと胸の傷をなぞる。
正確に息を吸い、息を吐く身体。
どこにも迷いなんて秘めてないような身体。

ゾロは・・・。
オレと寝るのは嫌じゃねえのかな。

身体が繋がっている時はゾロは自分のもんなんだなって思う。
だけど、それ以外は?
ゾロは身体をくれた。
それはオレが欲しがるから。

オレはゾロの欲しがるサンジになりてえ。
だけど、ゾロは何にも言わねえ。
 
 
 

真正面から「好きだ」なんていうのは恥ずかしい。
だから、ふざけたり、バカにしたりする言葉の間にオレはそういう言葉を言う。
ゾロからはいつも返事が返ってこねえ。

こいつはオレのこと、「好き」じゃねえのかもしれねえ。
でも、しょうがねえ。
オレはゾロが「好き」なんだから。
何も言ってもらえなくてもガマンできるくらい「好き」なんだから。

男なんて好きになったのは初めてで。
どうしていいか、わからねえ。
だけど、確かめるのは恐ろしい。

もし、お前なんて好きじゃねえって言われたら?
それでもオレは多分笑えるだろう。
オレはどんなことをしてもゾロを繋ぎとめておきたいから。
顔は強気なふりをして、心の中じゃ泣いたりしてる。
しようがねえよ。
ガキの時からオレは素直にモノが言えねえんだから。
 
 
 

何でゾロなのか。
そんなこと、誰にも分からねえ。
気がついたらゾロだった。
あきらめられないくらいの好き。
勝ち負けの問題じゃないんだ。

こんなに近くにいるのに、心は遠い。
心ん中でいくら思ったって絶対通じない。
分かってるのに。

なあ、ゾロ。
てめえは、オレのこと好き?

ヤルだけだったら誰でもいいのか。

いつの間にか心に重くのしかかった感情。
ヤってることは同じなのに。
お前は気づかない。
身体を重ねるたびに、オレがどんなに不安な気持ちになるかを。
だけど、止められない。
一瞬の快楽。
 
 

オレはゾロの胸に耳をつける。
正確な鼓動。
皮膚を隔てた先はゾロの世界。
そこにはオレは入れないのか。
一人だけで先に進むゾロ。
オレはどうすれば、いい。
ただ見ているだけか。
なんと残酷な。

眠れない。
ゾロの寝顔を見たら、切なくて。
忘れるな。
いつまで、こうしていられる。
オレのくだらないプライド。

雨音が聞こえる。
ゴーイングメリー号に降り注ぐ雨。
情事の時は聞こえない雨音。
快楽が通り過ぎてしまえば、また聞こえ始める。
心の中にまで降る雨。
濡れている。
雨にうたれて。
 
 
 
 
 
 
 

ゾロは目を覚ました。
手を動かすと柔らかい髪の感触。

いつからこうなったのか。
最近はいつも眠りをともにしている。
サンジはゾロにしがみつくようにして眠っていた。

じっと寝顔を見る。
目元には涙の後が残っている。
コイツ・・・。
最近、サンジは少しおかしい。
情緒不安てやつか。

自分を傷つける程、セックスをねだったり急に自分の世界に入り込んだり。
疲れているようなのに、夕べも激しく求められた。
でもそのサンジはあまり気持ちよくなさそうで・・・。
なのに必死でしがみついてくる。
どうしたっていうんだ。

良くねえな。
柔らかい頬に手を這わす。
こんなふうに自由にサンジに触れられるのは眠っている時ぐらいだ。
大人しく無防備。
この身体のどこにあの生意気な心が入ってるのか。
ま、嫌いじゃねえけど。
 
 
 
 
 
 
 

「ゾロ!!どうだっっっ」
「うるせえ」
サンジはじゃれあうゾロとルフィの姿をぼんやり見ていた。
オレとゾロって何なんだろ。
ああゆうことしねえし。
他のヤツとだったらするのにな・・・。
オレとアイツがする事って、ホントにセックスだけだな。
笑ってるゾロ。
オレになんか笑ったことねえ。
あー、なんかヤな気分。
飯でも作るか。
 

「ねえ、ゾロ。サンジ君どうしちゃったのよ」
「あア?」
ナミの言葉にゾロは眉をひそめる。
聞きてえのはこっちだよ。
この頃昼間も元気がない。

「隙だらけよ。明日の買い出しアンタついてってやりなさいよ」
「何でオレが・・・」
「サンジ君が誰かに食われちゃってもいいの?」
「駄目だ!!」
「で、何か、買ってあげなさいよ」
「あア?」
「ちょっと待ってよ。何も買ったことないの?」
「ねえな」
ナミは唖然とした。
あれだけ好みの酒とか飲ませてもらってるのに・・・。

「何かサンジ君のためにしてる?」
「いや」
「好きっていった?」
「いや」
ちょっと、最近サンジ君の元気ないのって・・・。
ゾロのせい?
この鈍感腹巻き男が原因・・だろうねえ。

「サンジ君を元気にしたい?」
「・・・まあな」
「じゃ、私の言う通りにしなさいね」
ナミの出した提案は・・・。
 

サンジの欲しがるものを1つだけあげること。
 

「ああ、別にかまわねえよ」
何か買ってやりゃいいんだろ。
ゾロは考えた。
あー、オレ金持ってねえ。

「貸してあげるわよ、勿論」
使わなくても法外な利子をとる女、ナミ。
こいつに金なんか借りたら・・・。
ゾロは悩んだ。
 
 
 
 

「毎度・・・」
ナミがニコニコ笑う。
ふふ、また一つ、貸し。
ホントにゾロって単純。
でも、借りないかと思ったけど・・・。
なんだ、アイツ。
やっぱりサンジ君のこと好きなんじゃない。

あれだけ好きで、どうしてもうちょっと優しくできないかなあ。
 
 
 
 
 
 

*2*



ナナコさんの18888リク、「ゾロの愛情表現が下手でぐるぐるするサンジ」です。
ゾロが本当に自分を好きか不安になるサンジ。

表に置いてもいいくらいの話です。