ruffy  * sanji 

愛しさを悟られぬことが最大の防御となりうるか

*2*
 
 
 
 
 

サンジは最近ルフィの視線に過敏になっていた。
理由は何日か前の朝のルフィの言葉だ。
「好き」
とか。
「欲情する」
とか。
まったくコトバの意味分かって言ってるんだか。
皆の給仕をして、それから自分の食事をとる。
夜の食事は8時か遅ければ9時。
テーブルを見ると、ルフィが机に顔を載せていた。

・・・。
サンジは自分の分を食い始める。
ルフィはその姿をじっと見てる。

・・・やりづれえ。
あまりに真剣な目で見るので何故か緊張する。
「・・・やらねえぞ!!」
「何だ・・・くれねえの?」
ちょっと悲しそうなルフィの顔。
クソ、オレはこの顔に弱ええんだよ。
なんか食い物やりたくなっちまう。
シッポのある犬。
オレは犬なんてもちろん飼ったことねえけど。
レストランの客が店の外に連れてきて、繋いであるのさわってて、殴られたことあったなぁ。
あの時の犬はフワフワで、思わずさわっちまったよな。
飼い主は抱いてもいいって言ってくれたけど、
クソジジイに殴りとばされて、オレは仕事に戻ったっけ。
は、バカみてえ。
何で今、こんな事思いだすんかな・・・
くだらねえ。

「オイ、てめえ、見てるだけなら、アッチ行け!」
「だって、サンジ食わせてくれねえだろ」
「あったりめえだ! 何でオレのメシをお前に食わせにゃならんのだ!!」
何考えてんだ、コイツ。
いや多分、何も考えてねえ。
「・・・一人で食ったってつまんねえじゃん」
オレはコックだから皆が食ってる時は色々しねえといけない。
それにバラティエにいたときから、そんなことは気にしたこともねえ。
「なあ、サンジ。今度は二人で食わねえか」

ナンデコイツニワカッテシマウ?
いつでも。
ココロの奥で欲してることを。
どうしても叶えたいことを。

オレはずっとヒトリだった。
それがあたり前。
オレはずっとあのレストランで見てきた。
楽しそうに食事する人々の姿。
あれが幸せってやつじゃねえのか。
笑って、食って、飲んで。

オレはいつもそれを見ていた。
オレの椅子はそこにはねえ。
いつかはオレの座る椅子もできる。
そう信じて。
クソジジイは決して隣にはオレを座らせてはくれなかった。
コックに必要なものはそんなものじゃないからだ。
 
 
 
 

「じゃ、今から食う?サンジ何か作ってくれ」
オレは手にしていたナイフをとり落としそうになった。
そういうことか。
「・・・・てめえ。そういう気か」
「うん。オレが2回食えば解決だ。だから、いつも・・・いてぇ!!」
サンジのケリがルフィの頭に入る。
「なんで、怒るんだよっっ」
「怒らいでか!!!」

ルフィはちぇっと舌打ちした。
ホントにサンジとメシ食いたかったのに。
すぐ怒るもんな・・・。
短気で意地っ張りで寂しがりやのオレのコック。
オレはおまえに寂しそうにさせたくないだけなのに。
 
 
 

あー、むかつく。
サンジは皿を洗いながらココロの中で悪態をついた。
このクソゴムのせいで・・・
ルフィはずっとこの部屋に居つづける。
あまりに腹がたったので、見せつけるようにメシを食って片づけにかかる。
「てめえ、もう食い物はなしだ。待ってもなんにもでねえぞ」
静かなルフィ。
寝てんのか?
何だ、起きてるじゃねえか。
「何みてんだよ、コラ!! もういいもんは何もねえぞ。
オレが食っちまったからな!!!てめえの欲しいもんはおあずけだ」
「欲しいもんはあるけど・・・おあずけって?」
まあ、メシ抜きって程でもねえし。
まあ、明日の朝飯は普通に食わせてやるか。

「ええ、いつかくれんのか。オレに!!!」
喜ぶルフィ。
サンジは洗いながらルフィをちらりと見た。
単純な奴。
「いつ?いつ?いつ?なーなーなー、いつ?」
すげえ喜んでる、こいつ。
「オレはいつでもいいからさ。サンジがその気になるまで待ってる」
ふーん。
めずらしく弱気じゃん。
「なー、じゃ今日ちょっとだけ、さわらせてくれよ」

はァ?
さわるって?
コイツナンテイッタ?

「うなじ、さわりてえんだけど」
サンジの手から皿がすべりおちた。

幻聴だ。
幻聴。
オレは疲れてるんだ。
いや憑かれてる?

まずい。
ごまかせ。
このままではいかん。

「ルフィ、やっぱ今日はなしにしよう。忘れてくれ」
仮面のようなひきつった笑顔をルフィに向ける。

「うん。今日は、あきらめる」
そう言ってにっこり笑うルフィ。
「じゃ、オレもう寝るから」
サンジはやっと一人になった。
 
 
 

サンジの背を冷たい汗が流れる。
割れた皿を見るとナミの一番気にいっているもの。
どどど、どうしよう。
明日ナミさんに・・・
オレはどうなるんだ。
汗は流れつづけた。
 
 
 
 
 

*3*



料理をしているサンジの姿。
そして俯いた横顔と「うなじ」
そりゃ、さわりてえよなあ。・・・私が。
それでもってオイシソウじゃありませんか。
ルフィはそれをじーっと見てるわけですね。
 
 
 

まだ、続くかも・・・ドーン!!
 
 

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クソショウセツ