ruffy * sanji
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*4*
サンジは心地よい夢を見ていた。
幸せな記憶。
おそらく記憶もない幼い頃。
抱きしめてくれた人。
愛をくれた人。
大切な大切な人。
ぬくもり。
愛しさ。
安心感。
誰かのあたたかみ。
キモチいい。
ゆっくりと覚醒する意識。
あれ・・・?
誰・・・だ、コレ・・・。
何で、オレ抱き合って・・・?
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
跳ね起きて、その場を離れる。
何でルフィが。
何でオレ、抱かれるようにして寝てたんだ。
滝のように汗が流れ落ちる。
落ち着け。
落ち着け。
しかし、何度考えても落ち着くことができない。
眠っていた時の幸せな感覚。
全てを預けていた安堵感。
それは紛れもない事実。
ルフィの腕の中で感じた絶対の信頼感。
どうすれば、いいんだ。
どうしちまったんだ、オレは。
ルフィはサンジを抱き締めようと腕をのばす。
何にも届かない。
あれーーー、いなくなってる。
さっきは子供みてえだったのに・・・
ちょい惜しいことしたかな。
まあ、いい。
オレたちはずっと一緒なんだから。
夢とともに、在る。
オレのコックはあいつだけだし、あいつの船長もオレだけだ。
唯一無比。
迷いなし。
あー、そうだ。
忘れてた。
おやつ食うんだった。
「サンジーーー、おやつ、おやつ!!」
厨房に入ってくるルフィはいつも通りだ。
サンジはどう反応していいか迷う。
「クソうるせえぞ。待ってろ。今、作ってやる」
何とかいつも通りに受け答えると、料理をつくることに専念する。
バカみてえだ、オレ。
ルフィのツラが見られねえ。
アレが何か恐ろしくて聞けねえし・・・
忘れろ、忘れろ・・・それが一番だ。
ドアが開いてナミが厨房に入ってきた。
「サンジ君、おやつはみかんのシャーベットがいいわ」
「はっ、ただいま!!」
ナミは心の中でひとりごちた。
うーん、サンジ君って自覚ないのよねえ。
こんなこと言ってて平気でルフィといちゃついて寝てるし。
「ねー、よく眠れた?あたし、見ちゃったわ。二人が寝てるとこ」
サンジは思わずみかんをとり落としそうになったが、何とか持ちこたえた。
「偶然です!!!ナミさん!!!たまたま近くで寝てただけです!!!」
むきになって弁解するサンジ。
ふーん。
「わかって」はいるわけだ。
自分たちがどういうことしてたか。
「サンジと寝てるとすげえキモチよかった!!」
!!!
「だって髪とかさらさらだし、うなじもさわり心地よかったし・・・」
何だって!!!
サンジは動転した。
ナミは唖然とした。
これでは、あまりにミもフタもない答えでからかいようが、ない。
「ナナナ、ナミさん・・・」
激しく汗を流しあせるサンジ。
ナミはサンジを見た。
このくらいなら、からかいがいがあるのに、ルフィときたら・・・
「だってよ。サンジ泣いてたから・・・」
サンジは信じられない事実を聞く。
な・・・に・・・いってやがる。
こいつ。
そういやスゲえ嫌な夢を見た。
後で落ち込むような夢。
だけど、途中から凄くいい夢になった。
後でも幸せの余韻がのこるような夢。
それは・・・こいつの・・・せい?
そんなコト信じられねえ。
認めたくねえ。
だけど、オレは・・・
こいつに救われている。
分かってるんだ。
だけど・・・
「ああ、そうなの。それでアンタがなぐさめてたってわけ?」
「そうだ。サンジが泣いたら放っとけねえ」
はー、そういうもんなの・・・
「それで?その先はいつするの?」
嫌みのつもりでナミは尋ねた。
「しししし。サンジがいいって時。別に今でも・・・ヒマだし」
「はい?」
思わず問い返すサンジとナミ。
「だってオレ、サンジにはよ・・」
「わーわーわー!!!!聞きたくねえ。聞きたくねえ!!!」
サンジがわめく。
ちぇっ。
ルフィはつまらなそうな顔をした。
あの・・・
これって本気なの???
混乱するナミ。
「ナミさん!!!おやつ!!!おやつにしましょう!!!!。ルフィ!!!おやつだ!!!!食え!!!食っていい!!!」
痛痛しいまでに懸命におやつをすすめるサンジ。
「わー、おやつだ!!!おやつ!!!」
喜々としておやつを食べ散らかすルフィ。
悪戯心がナミを襲う。
ちょっかいかけてやろうかしら。
「サンジ君、お礼に私食べちゃおうか?」
サンジは一瞬で、全身はあと状態になる。
「ナナナナ、ナミさん、ホントに?」
生きててよかった。
オレはなんてラッキーなんだ!!!
その時だ。
サンジの後ろにいたルフィから殺気が放たれた。
敵を叩きのめす時の容赦のない殺気。
ナミの背中を恐怖の戦慄が走り抜ける。
何なの・・・コレ。
コレには関わらないほうがいいかも・・・
「あー。ごめんね、サンジ君。やっぱり止すわ」
「そんな・・・ナミさん・・」
ナミはおやつをきっちり食べ終わると救いを求めるようなサンジに目もくれず、厨房を後にした。
まだ、ダメージを受けているウソップのところへ足を運ぶ。
「ねー、あたし、アレにはかかわらないことにする。巻き込まれるのはごめんだわ」
明らかに安心の溜息をつくウソップ。
もっとも、あんたはどうか知らないけどね。
サンジ君あんたの後ろに隠れるかも。
そしたらあんた、命危ないかも。
何だか大変なことになってるわ。
でも、見てて退屈しないかも。
どのみちルフィからは誰も逃げられっこない。
全てのものを手に入れる麦わらの船長。
だからきっとサンジ君もルフィのものになる。
あのまっすぐな精神の前では、誰も逃げることはできないから。