ruffy  * sanji 

愛しさを悟られぬことが最大の防御となりうるか

*5*
 
 
 
 
 

ウソップはデッキで絵を描いていた。
今日は変な感じだ。
サンジが側にいて、描いてる様子をじっとみてる。
いちいち、口を挟まれるし。

「なー、それ何?」
熱心に絵を見て、色々言ってくる。

「ふーん、てめえ、うめえじゃん」
「そーだろ、そーだろ!! このウソップ様にかかったら、どんな絵でも芸術なのさ!!」
ずっと航海してきて、サンジの印象は随分と変わった。
最初、レストランで会った時はスカした嫌なやつ、としか思えなかった。
あんなやつが、オレらの船のコックなんて。
でも、ルフィは凄くこいつを気に入ってた。
最初から。

仲間になってから気づいた。
料理の腕や、料理に対する情熱は勿論たいしたものだ。
意外なことに、見かけよりずっと子供っぽい。
一緒に騒いだり、笑ったり。
性格はきついし、ケリもすごいし、ケンカしたらやばい相手ではあるけれど、「仲間」。

どうってことのない会話。
どうってことのない日常。
そうさ、これが大切なんだ。
ウソップは冒険が苦手だ。
海賊も苦手だ。
だからこういう平和な日常は大歓迎。
夢だけを追っていられるから。
 
 
 
 

「なー、なにやってんだ」
ルフィが来た。
「どうだ。ウソップ画伯の絵は」
「何だと!!  オレの方が上手いぞ!!」
ルフィは絵筆を奪い何か描き始める。
ウソップも負けじと何か描き始める。

はー。
こいつらアホだな。
サンジはタバコをふかしながらその様子を見た。

「なー、サンジ、手伝ってくれよ」
不意にルフィが言う。
「は?」
サンジはもう少しでタバコを落としそうになった。

「ずるいぞ!! 自分一人でやれよ」
気の回らないウソップがわめく。
「でも、ま、二人かがりでも、オレの方がうまいぞ!!!」
胸をはるウソップ。
 
 

いつもは、ルフィは人を頼ったりしない。
なのに、何故・・・?
これって、試されてる?
サンジは迷った。
たいしたことのない日常のひとこま。
だけど、ルフィの目を見ればわかる。
ルフィから発せられたサイン。

サンジ、オレの近くに来い。
 
 
 
 

「?」
動かない二人の様子を見て、ウソップはやっといつもの空気と違うことに気づく。
何だ・・・こいつら。
何、見つめあって・・・。
 

「あー、オレもうおやつ作ってくるわ」
サンジはルフィから目を反らすと、そう言って立ち上がった。
ルフィは無言でサンジを見ていた。
サンジの後ろ姿も。
 

・・・。
何だ・・・コレ。
ウソップは絵筆を動かしながら、頭の中がぐるぐる回っていた。
あの変な間。
見つめ会う二人。
「おやつ」という言葉に大して反応しない、ルフィ。
お前ら、どうなってるんだ?
あやしいぞ。
何か口を開くと危険なことを口走りそうだ。
錯覚だ・・・気の迷いだ。
くり返しいい聞かせる。
 

「サンジはやらないから」
ルフィの声が聞こえる。
 

は?
固まるウソップ。
もしもし。
あの・・・今、何て?
やる、とかやらない、とか・・・
そういえばナミは二人には関わらないといっていた。

「わかったか?」
真剣なルフィの顔。
恐ろしさのあまり、思わず何度も頷くウソップ。
こいつはやばい。
やばすぎる。
サンジには気の毒だが、オレの手には負えねえ。
 
 
 

ルフィは何事もなかったかのように快調に絵を仕上げていく。
だが、ウソップはいっこうに筆がすすまない。
結局、その作品は仕上がることはなかった。

「ししし。オレの勝ちな!!」
嬉しそうなルフィの顔。
ウソップは混乱したままだ。
 
 
 
 
 

おやつの時間。
「うめーーー」
かぶりつくルフィ。
「がっつくな」
いつものサンジ。
ウソップはサンジの作った菓子を食いながら、考えた。

あれは、夢だ。
白昼夢ってやつだ。
だっていつも通りじゃねえか。
忘れろ・・・。
それが一番だ。

そうしたらいつも通りの一日が過ごせる。
この船にいる限り安全で平和な日常が過ごせるんだ。
 
 
 

ウソップの安全で平和な日々。
それは現実となるのか、夢となるのか。
 
 
 
 
 
 
 
 

*6*



今回何故かウソップ編。
サンジってとりあえずじっとしていられなくて、ウソップの所へ行くと思う。
それ見て、ルフィはいらいらするわけだ。
逃げたら追うよね、絶対。
またしても続く。
 
 
 
 

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