罪と罰 |
*4*
サンジはだるい身体を投げ出して、キッチンでタバコを吸っていた。
ゾロの言葉。
あれは拒否だ。
頼るなって。
うざいって事だろうか。
そう言いながら、オレを抱いた。
女みてえに扱ってほしいなんて思わねえ。
だけど、ゾロが欲しいんだ。
苦しい時。
側にいてもらうと落ち着く。
あの腕に抱きしめられていると安心する。
抱かれてる時はゾロの目にはオレしか映らねえ。
ゾロの身体はオレだけのものになる。
そん時だけはオレのもんだ。
誰にもやりたくねえ。
ゾロはいつものように剣の稽古をして、体力づくりをする。
同じ日常だ。
戦いがなければ意味のない人生。
刹那の瞬間のための鍛練。
一刻たりとも油断は出来ない。
世界一になる為には。
稽古を終えてキッチンに向かう。
ドアを開けると椅子に座ってぼんやりとタバコを吸うサンジを見つけた。
サンジの存在は厄介だ。
ただの仲間の範疇を越えている。
その位の自覚はある。
ただ身体を重ねるだけではなく。
心まで捕らわれている。
現にサンジがそこに居るだけで落ち着かなくなる。
ゾロは冷えた水を取り出し、一気に飲む。
サンジはうつろな瞳でゾロを見た。
遠い。
ゾロは随分遠くにいる。
オレの近くに来るのは、オレを抱く時だけ。
その時だけは、オレの側に来る。
それ以外は知らんふりだ。
前はそれでも良かった。
でも、この頃はそれが嫌だ。
オレの存在って何?
もっとアイシテ。
もっと。
訳のわからない焦燥。
オレはここにいたくない。
オレはオレのままでいたくない。
ゾロと目が会う。
サンジはかすかに唇を上げて笑った。
「なあ、ココでってのは、どう?」
サンジは誘いの言葉を口にする。
オレは知ってる。
ゾロがオレを見るのはこの時だけだって事を。
情事が始まるまでのかすかな瞬間。
この時だけは。
オレを見る。
理想を取るか。
肉欲を取るか。
微かな躊躇。
オレはお前の理想なんかにはなれねえ。
性急な口付け。
性急な愛撫。
日常を切りとった緊迫感。
ゾロに貫かれてオレは思わず嬌声をあげる。
その口をゾロの手のひらで塞がれる。
容赦なく打ちつけられる身体。
飛び散る欲情の証。
ケモノになったゾロ。
オレはゾロをケモノにしたい。
ケモノのゾロはオレのものだから。
オレを欲しがってるから。
堕ちていくオレの身体。
神聖なキッチンでこんなことをしてる。
ゾロに抱かれて。
感じてる。
堕ちていくオレの心。
身体はとっくにゾロに屈している。
ゾロに支配される快感。
キモチイイ。
だから、ゾロ。
もっと。
もっと、シテ。
ゾロはサンジの身体を激しく突く。
「・・・・!!!」
身を震わせて快楽の証をサンジの中に注ぎこむ。
一つになるためにはこれしか方法がない。
サンジを自分のものにするにはこれしか方法を知らない。
行為に対する嫌悪など持ち合わせていない。
欲しいから、抱く。
誰のために。
サンジを助けるため。
それは嘘だ。
オレはこいつが欲しいから。
コレハ俺ニハ都合ガイイ。
サンジが従順で。
オレに跪く。
何でも言うことを聞くし、何でもやらせる。
それを望むサンジ。
オレから離れようとしないサンジ。
そんなサンジの状態を知っていてただ受け入れるオレ。
これは罪か。
ならオレを罰していいのはサンジだ。
オレは罪も罰も恐れない。
止まらない欲望。
「ああっっっ」
サンジの嬌声がキッチンに響く。
ゾロ。
側にいて。
ゾロはサンジの中に幾度となく精を放つ。
弾けとぶ理性。
仲間のことだとか。
常識のことだとか。
くだらねえ。
サンジはそれを壊す。
日常をどうでもいいと思わせる。
理想を忘れそうになる。
サンジを抱いていると。
夢が、理性が、思考力が失われる。
今だけでいい。
この一瞬の高揚感。
サンジの持つ闇にのみこまれてゆく。
愛欲の世界に。
またしても、続く。