voyage
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  サンジの罵声にエースは笑った。

 そうだ。
お前はそうやって怒鳴っているほうがいい。
だから、もう泣くな。

「それじゃ」
エースは立ち上がって背を向けた。

 今の別れがつらくとも、
いつか必ずここに来て、
サンジを攫っていけばいい。


 サンジは泣き続けていた。

 サンジがぼんやり座っていると、
入口の方から『食い逃げだ』という言葉が聞こえて来た。

 エース?
 あわてて涙をぬぐいそちらへ向かった。

入口に向かうとエースと、それを取り囲んだコックたち。
少し離れたところでゼフは傍観していた。

「お前、オレたちの店で食い逃げができると思うなよ」
「白ひげんとこの者かなんだか知らないが、
オレたちは戦うコックさんだ!!」

ぐるりととりかこむコックたちをサンジは押しやった。
「どけ。そいつはオレの客だ」

エースは抵抗する気もないようで、無表情に突っ立っていた。
「無銭飲食とはいい度胸だな」
サンジは真っ赤な目をして言った。

「甘んじて、罰をうけよう」
エースが言った瞬間、
サンジは渾身の蹴りをきめた。

 エースはふっとばされ、
はるか遠くに飛ばされていった。

 思ったより破壊力のあるサンジの蹴りはエースを遥か遠くにはねとばした。
エースは覚えのある船の上にたたきつけられ、呻き声をあげた。

 ああ、これはサンジの小舟だ。
 あいつは、オレが悪魔の実を食っちまったことを知ってる。
だから海に落とせば簡単にくたばっちまうことも知ってるはずだ。

 だけど、サンジはそんなことをしない。
お前は、オレを許してくれるのか? 
オレはお前のやさしさに甘えてばかりだ。



 待っててくれ。
 この長い旅路の先、きっとオレたちはもう一度めぐりあう。
 そして、もう一度愛しあうんだ。

 誰もみな愛求めさまよう旅人。
 この旅路の先に、きっと答えがある。


 



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