voyage
13
 

 
 
 


 いつの間にか、甲板は朝日がさしていた。
 サンジはいつの間にかそのまま寝てしまったルフィを押しのけると
のろのろと散らばっている服を身につけた。

 昨夜、こんなところでそのままヤられちまった。
朝日の下で眺めると、そこには情事のあとがありありと残っている。
 サンジは全裸だったし、ルフィはほとんど何も身につけずに寝ているし、
飛び散った体液があちこちに落ちていた。
 サンジはあわててそれらの体液をぬぐい、ルフィに服を着せ、
自分はシャワーを浴びるために風呂場に向かった。

 幸い、誰もまだ起きていないようで船はひっそりと静まりかえっていた。 
急いでシャワーを浴び、目をつぶって、ルフィの精液を自分の内部から掻きだし た。
ルフィは中出しが大変好きで、サンジの身体の中に自分が残ると本当に信じているようだった。
サンジはそれが苦手だったけれど、自分が苦労していることをルフィに知らせるつもりはなかった。

 あいつは、ガキだから、オレがしっかりしてりゃいいんだ。
 サンジはいつものように、自分にそう言い聞かせた。

 そして、何もなかったかのように、朝食の準備を始めた。
焼きたてのパンにサラダ。
スープにオムレツ。
料理のことを考えていると、もやもやした気持ちは忘 れてしまう。
 すべて世はこともなし、だ。
順調に航海が続いてるじゃねえか。

この調子なら、もうすぐ決戦となりそうだ。
ビビちゃんはオレが守ってやらねえと。
レディはかわいくてやわらかくて、かよわい生き物だからな。
 本物のお姫さまが、がんばってるもんなあ。

「姫」
忘れたはずの男の声が聞こえて、サンジはぶんぶんと首をふった。
 サンジをそういう言い方で呼んだのは、一人しかいない。
そいつは生きて、夢を追ってる。
こんなところにいるはずねえんだ。

「エーーーースっっっ!!!」
ルフィの大声に、サンジは外を見て、固まった。

「よう」
エースはサンジに挨拶をすると、
飛びつくルフィを受け止め、
あわてて出て来たゾロやナミに挨拶をしている。

「や、これはこれは。先日はどうも失礼しました」
「あっ、いいんです」

「うまそうな朝飯のにおいにつられてやって来ました」

外での騒ぎを聞きながら、サンジは静かに皿をもう一つ出した。
そして予備の卵や食材を取り出した。

 まさか、もう一度、エースに料理をする日が来るとは。

サンジは機械的に腕を動かし、皿に食い物を盛った。
 エースはルフィの兄貴で、ただの客。
それだけだ。

 準備ができると、サンジはいつものように乱暴にキッチンのドアを開けた。
「んナミすわーーーん、ビビちゅわーーん、朝御飯ですっっ。
あと、 残りの野郎どもも、ついでにメシだっ!!!」

ルフィにひっぱられるように席につかされたエースは一口サンジの料理を食べた。
「うめえ!!! 」
「だろ!!  サンジは最高のコックなんだ!! 」
得意満面なルフィに、サンジはあいまいな笑みを浮かべた。

エースも嬉しそうにメシを食っている。
サンジは皿をひくと、食後の茶を入れようと席を立った。
「エース、その帽子かっこいいな!! 」
「そうだろ。これはオレの宝物だからな」

「オレのはシャンクスの帽子だぞ !!    
そいつシャンクスより強いのか?」
エースはルフィの帽子をぽんぽんとたたいた。

「一番大切な、愛する人からもらった」

 ガチャン。
 皿が割れる音がした。
「あ、ごめん、ナミさん、ビビちゃん、ちょっとぼんやりしてたみてえ」
「大丈夫、サンジ君? 
ちょっと顔色悪いわよね。
無理しないで」
サンジはあわてて割れた皿を片付けはじめた。

 エースは今、何て言った? 
 あの帽子はオレがエースにやったもんじゃねえか。 
あれは、ガキの頃の淡い恋ってやつなんだ。
大人になったら、もう忘れて、普通にやっていけるはずなんだ。

 サンジは懸命に皿を洗った。
 エースとルフィは次の話題に移ったようで、にぎやかな笑い声が聞こえてくる。
サンジはうつむいたままで食器を洗うと、料理の支度を始めた。
今すぐしなけ ればならないものではなかったが、何かしていないと落ち着かないからだ。

「んじゃ、しばらくエースはオレたちと一緒に行くんだな !!  
 エース、お前こそオレの仲間になれよ!!」
 和気あいあいとした雰囲気が伝わって来て、サンジは唇をかみしめた。
 
どうして?
 どうして、今になってあらわれる?
 居なかった時間がまるで嘘のように、
当たり前に目の前にあらわれるなんて。

 


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