voyage
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 陸に上がると、ルフィたちは用意していたゆったりした衣服をまとい、砂漠の陸路を進むことになった。
 ナミとビビはマツゲに乗り、男たちは歩いて進んだ。

 エースは時々、後ろを歩いてくるサンジを振り返った。
サンジは必要なことは話すものの、自分からエースの側に寄って来るということはなかった。

 あれから3年がたつ。

 離れていたが、エースはサンジを忘れることはなかった。
早くサンジを迎えに行けるようになりたいと思いつつ、月日だけがすぎた。

 エースはバラティエの側まで行き、サンジを一目見ると満足して、会わないままに何度か帰っていた。

 やっと二番隊隊長になり、久しぶりにサンジの姿をこっそり見にいったのだが、
船は妙にぼろぼろになっており、いつもならすぐに目に入る金髪がどこにも見 当たらない。
 茫然とするエースを見つけて、ゼフが近寄った。

「チビナスは出ていった」
 信じられなかった。
 サンジがゼフを置いていくなど、ありえないはずだ。

「オールブルーを知ってるか?」
「知らねえ」
「あのクソガキは、夢を追いかけて出て行った」
 それが何か、エースには分からなかった。
サンジからは、その話を聞かなかったから。
 ゼフとサンジはおそらくその夢を共有していたのだ。
自分と弟が同じ夢を見ていたように。

 オレは、サンジの夢も知らなかったのか。
 あんなに、愛して、手に入れたと思ったのに、何も分かっちゃいなかった。

 黙り込んだエースを残し、ゼフが店の中に消えていった。
その後ろ姿は、少し寂しそうに見えた。

 サンジと会うために、幾度となく来た海。
 エースはその海をしずかに渡った。

 この海のどこかにサンジはいて、夢を叶えるために歩き出した。
喜ぶべきじゃあないのか? 
何かに罪の意識を感じ続け、自分を大切にしていなかったサンジ。
 お前は、自分の行く道を見つけたんだな。

 エースはサンジからもらった帽子を手に取り、じっと見た。
運命というものがあるならば、いつかめぐりあうこともあるだろう。

 オレはこの帽子に誓う。
これはお前の心だ。
オレにくれたサンジの心。
再会するその時には、この帽子にふさわしい男になる。

 背の入れ墨とともに、この帽子を見ただけで、火拳のエースと分かるほどになれば、
サンジのところまで想いは届く。
オレはまだサンジを攫っていけるほど、 強くない。
 だが、時が来たら、なんとしてでも探し出す。
探し出して、再びオレの手の中にサンジを取り戻す。
 その日まで、戦う。
いつか、オレの宝は帰って来る。

 エースが無条件に信頼できる男は少ない。
白ひげは別格だが、シャンクスやゼフも信頼するに価する男たちだ。
それから、信頼しつつ心配していた、弟のルフィ。
 その弟が、サンジを連れ出した。

 おそらくサンジの夢は、ルフィの海賊王という夢に共鳴したのだ。
ルフィなら、サンジを守れるだろう。






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