voyage
15
 

 
 
   

 

「サンジ、メシ!!」
サンジに近寄って蹴られるルフィを見て、ナミがため息をついた。
「どうかしたのかい?」
エースの問いに、ナミは困った顔をした。

「もうあんまり食べ物がないんです。何かつかまえないと・・・」
「あー、悪いね、オレもいるから食い物なくなっちまってるのか」
エースは愛想よく笑った。

ここは砂漠だから、食い物がないのだ。
 サンジの奴、きっと困ってるだろう。

「サンジ君、きのうもあんまり食べてないの。
全部、自分の分、ルフィにやってるから」
ナミの言葉に、エースの顔色が変わった。
そういえば、あまり食っているところは見ていない。
作りながら、何か口にしているようだとは思っていたのだが。

「だから、お兄さん、砂トカゲ一匹でいいから欲しいんです」
エースはナミの話を最後まで聞かないうちにルフィのところにダッシュして、
サンジにしがみつくルフィをひきはがした。
「ルフィ、トカゲとるまではメシ抜きだ!!  行くぞ!!」

ルフィをずるずると砂山にひきずっていったかと思うと、
遠くの方で砂埃が上がった。
 地響きがし、あっという間に数匹の砂トカゲが転がっていた。

「すごいわ、さすがルフィのお兄さん!!
  良かったわね、サンジ君、 
そろそろ食料がなくなりかけてたでしょ?」

「えっ、ナミさん、まだ五日分くらいは・・・」
「だめよ!!   
サンジ君は自分の食事を抜いてまで皆の食事を準備したことになってるもの」
 それって、ナミさん、詐欺じゃ・・・。
てことは、騙されたのは、ルフィとエースか。 

必死になってルフィとエースは砂トカゲを運んできた。
「サンジ、ごめん!!  
お前の肉まで食ってたとは知らなかったんだ」
ルフィが一生懸命あやまるのだが、
サンジは何と言っていいのか分からなかった。

 この船の最高権力者はナミさんなのだ。
ナミさんが、白といえば、黒いものも白にされる。
今が、いい例だ。

 この砂漠に来てから、あんまりメシを食ってないのは事実だ。
もちろんビビちゃんのことも気になるが、
それ以上にエースがいるせいで落ち着かないのだ。
 しょんぼりするルフィの背をエースがバンバンと叩いた。

「お前がそんなことしてると、このコックさんはオレが連れていっちまうぞ!! 」
「だめだ!!   サンジは誰にもやらない!!」
ルフィが本気で怒り出したので、サンジは見かねて口を出した。

「お兄さん、オレも船を降りる気はねえから」
最近のルフィは時々、サンジのことで過剰に反応する時がある。
ナミはそれが独占欲とか嫉妬と言われるものだと気づいていたが、
ルフィ自身も、当事者のサンジも妙にそういうことには疎かった。

エースはすぐにルフィの想いに気づいた。

ルフィのやつ、サンジが好きなんだな。
そして、サンジもそれを受け入れているのか。
 だが、自分はあきらめたわけではない。
今はまだ、その時でないだけだ。

その時が来たら、オレはルフィと戦うことになるだろう。
いつか、海賊王という名を かけて、それからサンジをかけて戦うことになるだろう。


 不機嫌だったルフィは、サンジの焼いた肉で、すぐに機嫌がよくなった。
結局、エースと二人で食って食って食いまくった。

 サンジは晩飯の片付けを終え、見渡すかぎりの砂漠を眺めた。
明日も朝が早い。
ナミとビビはテントで寝て、男たちも寝袋にくるまって寝ていた。

 天には煌々とした月が輝いていた。
 日が落ちた後の砂漠は、ひんやりと冷たく、昼間の熱気が嘘のようだった。

 サンジは眠る気がしなくて、砂漠を一人歩いた。








NEXT

voyage

top