voyage
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自分は男なんか好きじゃないのに、
ガキの頃から妙に声をかけられた。
そのせいで嫌な思いをした時は、
美しいレディの事を考えるといい気持ちになった。

女性はきれいでやわらかくて、
女神で天使。
力ずくで何かをしようとしないし、
攻撃的で威圧的でもねえ。

 ルフィはガキのころからオレをただ欲望処理の対象として見ていた男たちとは違う。
オレはこいつの生き方に心動かされたから、
この船に乗った。
ルフィを船長と認めたから乗ったんだ。

 オレの身体なんて、たいして値うちがないから、
ルフィにヤられたって構わねえんだけど、
深みにははまりたくねえ。

 本気になって傷つくのは、一度だけで結構だ。
誰も好きになんかならない方が楽でいい。

きれいでかわいいナミさんや、ビビちゃんを見ていると、
それだけで幸せになれるから、オレはそれでいい。
 そりゃ、オレだって男だから、
ヤりたくなる時もあるし、ヤられたくなる時もある。
けど、誰だっていいわけじゃねえ。

 きっと、ルフィにヤられちまったら後に残る。
ルフィは食いたいものを食ったら、忘れるだろうけど、
オレはそうじゃねえ。
きっと、ひきずっちまう。
だから、ヤりたくねえ。

 見てると、ルフィはこれまで色恋沙汰には無縁のようだ。
 だったら、オレが初めての相手になっちまう。
それはやべえ。

初めての相手は、きっと一生忘れられなくなる。
少なくとも、オレはきっとずっと忘れねえ。

 ルフィと一緒にいるのは楽しいし、
ルフィのことは嫌いじゃねえ。
だから、きっとオレはルフィを拒む理由がねえ。

 食いてえ奴には食わしてやる。
それがオレの料理人としての信念だが、
それは自分が絶望的な飢えを知っているからだ。

オレはジジイに生かされた男だ。
誰かが必要とするならば、
この身体ごと食われたっていいんだ。

 この船に乗っていると、
不思議なもので、
オールブルーを見つけるより、ルフィを海賊王にしてやりたくなる。
ナミさんにお宝をさしあげて航海図を描いて夢をかなえてもらいてえ。
ゾロが大剣豪になればいい。
いつの間にか、みんなの夢がオレの夢になってる。

 こいつらのために、何かしてやりてえって思う。
 ルフィのために、何かしてやりてえって思う。

 けどよ、これってなあ・・・。

「サンジ、オレを見ろ」
ルフィは背を向けたサンジがゆっくりとふり向くのを待った。

 初めて会った時から、気に入って、ずっとずっと好きだった。
サンジがその気になるのをずっと待てばいいと思っていた。

けれど、サンジはいつまでたっても自分に近づいてはこない。
それどころか、勝手なことをして命を捨てようとした。

 サンジは分かってない。
お前はオレの特別なんだってこと。

「サンジが好きだ」
ルフィはサンジの瞳を覗きこんではっきりと言った。
サンジの瞳はかすかに揺らめいた。

「好きだ」

「だから、触りたい」

サンジは雪山でのケガのせいで、
ルフィが不安になっていることに気づいていた。
あれは、オレのミスだ。
だけど、あの時はああするしかなかった。
 オレは、ルフィに命を助けられちまった。

 バカだなあ。
オレの事は放っといてくれて良かったんだ。
オレはナミさんが助かって、
ルフィが無事に生きていられたらそれで良かったんだ。

 ルフィはいつだってそうだ。
動けないオレを強引に上の世界に連れていく。
その真直ぐさはオレには眩しい。

「なあ、オレ、サンジとシたい」
ルフィの言葉にサンジは苦笑した。

ルフィの欲望は、いったん生まれたら実現するまで消えることはない。
叶えられないと、逆にその欲望に対する思いは募っていく。

 どうせ、力でかなう相手じゃねえ。
 一回、ヤってやればいいか。
そしたら、きっとそれで気がすむ。

オレはずっとひきずっちまうかもしれねえけど、
ルフィの気がすむんならそれでいい。
オレは大人だから、大丈夫だ。

「いいぜ。
だけどオレは初めてのヤツは嫌だから、
お前がそういうことに慣れたらシてやっても・・・」

「駄目だ。オレはサンジとしかシたくねえ!!   」

ルフィは叫ぶと、サンジをぎゅっと抱きしめた。

 盗み食いをするとサンジは鬼みたいになるけど、
いつもサンジは優しい。
食いたいものを食わせてくれて、
すっげえかわいい。

だけど、自分を大事にせず、
苦しいことやつらいことがあっても見せようとしない。

 オレはサンジのすべてが見たいんだ。
 サンジのすべてが欲しいんだ。
 
ちゃんとつかまえておかないと、いつかふらっといなくなってしまいそうだ。
だから、オレはサンジを自分のモノにしたい。
大切で大切でたまらないから。

 
 
 
 

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