祝福の日
三十路XS

1

スクアーロ誕生日話
3月13日





その日、
スクアーロは目覚めると、
いつものように身支度をすませ、
自室の小さな鏡を覗き込んだ。

鏡の中には、
銀の長い髪の男が映っていた。
顔色は悪く、
右の頬は少し赤くなって腫れている。

ゔぉおおおお゛い!!
こりゃあ、しばらく消えねえぞぉ。

スクアーロはため息をついた。
ザンザスが気まぐれなのは、
いつものことだあ。

だからって、
何もあんなところでヤらなくても・・・。

スクアーロは昨夜のことを思い出し、
左の頬も赤く染めた。






昨夜。
スクアーロは「仕事」を終わらすのに、
いつもより少し時間を食った。
ちゃんと任務をこなしたものの、
本部に戻ったのは、もう日付が変わりかけたころだった。
とりあえず、すぐにボスに報告に行った。
ボスがいなければ、デスクに書類だけを置いておけばよい。
この仕事の内容と、時間なら、たぶんボスは不在だろう。
明日、殴られるかもしれねえけど・・・。
スクアーロは、ずかずかとザンザスの執務室に踏み込んだ。

「・・・遅い」
ザンザスは、まだ起きていて、
不機嫌なオーラをまき散らしていた。

「待たせたなあ!!」
スクアーロが言うと、
すかさずグラスが飛んできて、
頭に当たった。

「ゔぉおおおお゛い!!  何しやがる!!」
怒鳴ると、ザンザスはさらに不機嫌な顔をした。

「うるせえ、ドカス!!」
言うなり、蹴られた。

「いてえ・・・」
ザンザスは腹を押さえて倒れるスクアーロの髪をつかみ、
デスクに頭を叩き付けた。

「クソボス、てめえ、オロすぞぉ!!」
スクアーロがわめき、
ザンザスはむかついた。
こいつの声は、でかくてうるさい。
耳元でどなられるとイライラする。
だいたい、このカスはいままでどこをほっつき歩いていたのか?
いつまでも、つまらねえ任務をちんたらやっていたのか?
てめえなんざ、
このオレが本気で殴ったら、
このツラもぐしゃぐしゃになっているはずだ。
どうみても手加減してやってるだろが。

ザンザスは、スクアーロの頭を机に押し付けたまま、
背後からスクアーロにのしかかった。

「あ゛?」
暴れていたスクアーロの動きが止まり、
緊張して身体が固くなった。
ザンザスの手が、
スクアーロの下半身に伸びてくる。

ゔぉおおおい、ボス、ここでする気か?
執務室だぞ!!
明かりはついたまんまだし、
いつ、誰が入ってくるか分からねえ!!

スクアーロは、執務室の入り口の方を見ようとした。
それをザンザスの手は許さない。
頭を強く机に押さえつけられた。
「ドカス、てめえが開けっ放しにしたんだろうが。
それとも部下どもに見て欲しいのか?」
ザンザスにささやかれると、
スクアーロはびくりとはねた。

ザンザスの怒りの炎は性的な欲望へと変化しているようだ。
いつものボスさんの気まぐれだ。
スクアーロは身体の力を抜いた。
抵抗しても無駄なことは、もう知りつくしている。
あきらめとともに、
快楽を知った身体は期待に昂りはじめていた。

「はっ、もうその気になってやがる」
ザンザスがバカにしたように笑った。
「まったく、てめえは淫乱だな」
そう言いつつ、ザンザスの手が、スクアーロの敏感な部分に伸びてきた。
「・・・ゔぉい、そうしたのはてめえだろ!!
ゔぁ゛っ!!」
スクアーロは即座に反論したが、
敏感な昂りをがっちりととらえられて、
ザンザスの手のあたたかみを感じると、
ぞくぞくしてまともに言葉もつむぎだせない。

この行為に意味などない。
ザンザスは、単に性欲を吐き出したいだけだ。
スクアーロは自分に言い聞かせた。
気持ちよければ、何でもいいんだあ。
相手は誰でもいいんだあ。
ザンザスが満足すれば、それでいいんだあ。

身体はいとも簡単に快楽を追いかけはじめ、
苦痛すら快感としてとらえられる。
スクアーロが憧れて止まぬ紅蓮の炎を感じる。

ザンザスはスクアーロの昂りをとらえたまま、
スクアーロの内部に自らの昂りをねじりこんだ。
もう幾度となく繰り返してきたことなのに、
スクアーロ自身はこれだけ昂っていても、
ザンザスを受け入れまいとする。

罪深いものを拒むように、
スクアーロはいつも一瞬だけ抵抗する。
従順にひざまづき、
ザンザスにすべてを差し出しながら、
いつもその瞳の奥には、
どこかかなしみをうかべている。

カスのくせに、オレを憐れむというのか。
なんて生意気で傲慢なやつだ。
てめえは、オレを恐れ、怯え、あがめてりゃいいんだ。
オレのもとでひれ伏していればいい。
てめえを焼きつくし、支配するのはこのオレだ。
支配していいのは、このオレだけだ。

ザンザスはスクアーロを押さえつけたまま、
強引に中に押し入った。
いったん受け入れてしまうと、
慣れたスクアーロの身体は、
ザンザスの昂りをしめつけ、快楽を逃すまいとする。
「ゔぁぁ」
スクアーロの目は快楽で緩み、口からは意味のない嬌声がこぼれだした。

繋がった部分からザンザスの存在を感じ、
身体じゅうがぞくぞくした。
まるで快楽の炎に包み込まれて焼かれているようだ。
ザンザスに抱かれていると思うだけで、
気がヘンになってしまう。
過剰な不在と、
過剰な接近。
どちらも等しく耐えがたい。

苦痛は一時のものであり、
快楽も一時のものであり、
大して重要なことではない。
それでも、くりかえし、くりかえし、
与えられると、どうしていいか分からなくなる。

スクアーロは、頬を机に擦り付けたまま、
きつく目を閉じた。
逆らえない。
抗えない。
でも、自分から、
求めることもできない。
だから、オレはいつも、この嵐が通りすぎるのをじっと待つ。
ちょっとした通り雨みたいなもんだ。
気持ちいいけれど、かなしい。
漏れそうになる喘ぎ声を必死でかみ殺した。
ザンザスの機嫌をとる余裕なんてない。

ひときわ奥まで突き上げられると、もう耐えきれない。
「ぁああ゛」
叫びたいのか、泣きたいのか、分からない声が漏れる。

身体の奥深くで、
ザンザスの精が弾けた。
スクアーロもそれを感じて、精を放った。

「スクアーロ」
意識を手放す瞬間に、ザンザスの声が聞こえた。

今、オレの名を呼んだ?
ザンザスの声。
どれほど、その声が聞きたかったか。
どれほど、その姿が動くのを見たかったか。

オレはどんなことがあっても、お前についていく。
だから、ずっと、そばにいさせてくれ。
お前の剣として、そばに。







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