皇帝の正しくないチェス

ディープブルーvs.カスパロフ


ブルース・パンドルフィーニ 著
鈴木 知道 訳
河出書房新社

 ディープブルーはIBMのスーパーコンピューター、カスパロフは現代最強のチェスプレイヤーです。この本は、1997年に行われたディープブルーとカスパロフのマッチ全7戦の棋譜とその解説が収められています。

 この対決はディープブルーの圧勝に終わり、現代最強のチェスプレイヤーが機械に負けたということで、チェス界を震撼させた出来事だったそうです。

 この世紀の一戦では、カスパロフがコンピューター相手の対局を意識しすぎたためか、必ずしも自分自身のチェスを指すことができず、棋譜としての価値はそれほど高くないというのが一般的な評価のようです。しかしながら、世界トップの棋譜をこれほど細かく解説したものはなかなかありません。

 カスパロフ自身の自戦記であれば、最上級の文献ともなるでしょうが、第三者による解説であってもほぼ一手毎に細かい解説がなされ、それによりチェスを指す際の思考の一端を伺い知ることができるという意味では、非常に勉強となる本だと思います。

 また棋譜解説の合間にはちょっとしたコラムがあり、チェスの用語や基礎的な考え方等が書かれています。この点においてもなかなかに気の利いた本であると言えましょう。