「黒の一番の弱点はf7のマスである」
これは、一般に良く言われることですが、改めてこのことを検証してみましょう。ということで図−7.5.2.1を見てください。
【図−7.5.2.1】 |
チェスのゲームがいざ始まるという初期配置の図です。
7のランクに並んだポーン。それぞれのポーンはどのように守られているのでしょうか。
a7とh7のポーンはルークに守られています。
b7とg7のポーンはビショップに守られています。
c7のポーンはクイーンによって守られています。
d7とe7のポーンは、クイーンやビショップ、ナイトさらにはキングによって守られています。
しかし、f7のポーンはキングでしか守られていません。
「なんだ、1個の駒にしか守られてないのなら、f7もc7もa7も(中略)・・・同じじゃん!」と思うかもしれません。
しかし、それが大間違いなのです。
仮にゲームの序盤において、白がf7のマスにサクリファイスを仕掛けたとしましょう。そうしたら、その駒を取り返すのはキングの役目です。キングがf7にサクリファイスしてきた駒を取り返すことで、黒のキングはキャスリングの権利を無くします。さらに、ゲーム当初はポーンの壁で守られていたはずのキングが、7のランクに移動することで、直接白の攻撃に晒される可能性があります。このことで、黒キングの安全性は著しく下がるのです。
また、f7の地点にもう一つ白の駒の利きがあったとすれば、f7のポーンを取りに来た白の駒を、黒のキングは取り返すことが出来なくなってしまいます。それがチェックなら、黒のキングは移動してキャスリングの権利を無くしますし、動くことが出来なければそのままチェックメイトとなる可能性もあるわけです。
よって、ゲームの初期配置の状態で、「黒の一番の弱点はf7のマスである」と言われるのです。勿論、これは白のf2のマスに対しても同様に言われることです。
では、白はこのf7のマスを攻撃するためにはどうすれば良いのか、ということになりますね。ということで、まずは図−7.5.2.2です。
【図−7.5.2.2】 |
ゲーム開始当初には、まずナイトとビショップといったマイナーピースを展開せよ、と良く言いますね。
f1にいる白マスビショップは、c4に動かすことで、すぐさまf7の地点に睨みを利かせることが出来ます。
g1にいるナイトは、まずf3に動かし、その後にe5あるいはg5に動かすことで、f7を攻撃することが出来ます。
次に図−7.5.2.3を見てみましょう。
【図−7.5.2.3】 |
クイーンは最も強力な駒ですが、b3,f3,h5とf7を攻撃するために動かせるマスが3つもあります。 次にルークは、ショート・キャスリングをすることで、f1の地点に移動することが出来ます。これで、f7への攻撃が可能となるわけです。
と、ここでちょっと考えねばなりません。ルークは実は攻撃に参加することが一番難しい駒なのです。というのも、ルークが相手の陣地を攻撃するためには、オープンファイルが必要です。つまり、ルークの利きを自分のポーンが邪魔している限りは、ルークは相手の陣地を攻撃することは出来ないわけです。
さぁ、ここでキングズ・ギャンビットの登場です。
キングズ・ギャンビットは、ゲームが始まって早々にfポーンを捨てることで、fファイルをオープンにします。このことで、ショート・キャスリングした後のルークがそのまま攻撃に使うことが出来るのです。
このように、キングズ・ギャンビットの最も初歩的な考え方というのは、黒の最大の弱点であるf7のマスに対して、如何に早くそして効果的な攻撃を仕掛けることが出来るのかということだと思います。
では、ここでもう一つゲームを見てみましょう。
最後は15連続チェック、ゲームを通じては21回チェックのゲームでした。
何か、当初のテーマとはいささか違うゲームを例として出してしまった気もしますが、良いんです。
何と言ってもこの章は、キングズ・ギャンビットの素晴らしさを語る章なんですから!
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