皇帝の正しくないチェス

KING'S GAMBIT−Kieseritzky Gambit
 Spassky vs Fischer(1960)


まずはKieseritzky Gambitの解説

 Kieseritzky Gambit(読み方がワカラン!)は、キングズ・ギャンビットのバリエーションの一つです。
 具体的には、以下のような手順となります。

   
1 e4 e5
2 f4 exf4
3 Nf3 g5
4 h4! g4
5 Ne5(参考図)
参考図
【参考図】

 この章で紹介する、Spassky vs Fischerの対局も、このKieseritzky Gambitになります。

 黒の3. ... g5に対して、4.Bc4 g4 5.0-0とするMuzio Gambitを7.5.1章で紹介しました。しかし、3. ... g5に対する最も強力な応手は、4.h4!とされているのです。

 白にとって重要なことは、黒が... h6の後に... Bg7とすることによってg5ポーンを補強する前に、弱くしてしまおうということになります。

 もし、黒に1手の余裕があるなら、... h6とg5ポーンをサポートすることで、キングサイドに強固なポーンチェインを作ることが可能になります。
 そこで白は、すぐさま4.h4!とし、黒がg5ポーンを守る余裕を与えないようにするのです。
 仮に、4. ... h6としたら、白は5.hxg5とします。

 ということで、黒は4. ... g4とポーンをさらに押し進めるしかないわけですが、このことで黒のキングサイドはポーンの形が著しく悪くなり、これはそのまま黒の陣形の弱点になります。

 一方で、白としてもそうそう簡単にゲームを支配できるわけでもありません。

 白においても、4.h4!は同時にキングサイドのポーンの形を悪くしていますし、黒からf3の地点を攻撃される恐れがあるわけです。

 このことで、黒は自らの陣形に弱点を持ちながらも、それを補うことが出来る積極的な攻撃を仕掛けることが可能となります。

 5.Ne5に対する黒の応手はいくつかあり、代表的なものは 5. ... d6と ... Nf6です。
 前者は、白のギャンビットによって得しているワンポーンを即座に返しながらも、ゲームの主導権を得ようというもの。
 後者は、白が6.Bc4という攻撃的な手を指さなかったら、黒のf7ポーンと白のe4ポーンを交換してしまおうというものになります。

 その他の黒の5手目は、
 5. ... Bg7以下、6.d4 Nf6 7.Nc3! d6 8.Nd3 0-0 9.Nxf4!
 あるいは
 5. ... d5以下、6.d4! Nf6 7.Bxf4 Nxe4 8.Nd2! Nxd2 9.Qxd2
などがあります。

 さて、これを念頭においてSpassky vs Fischerの対局を見てみましょう。

棋譜解説

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