皇帝の正しくないチェス

Reti Opening-Benoni Reversed


1 Nf3 d5(図−1)
図−1
【図−1】

 レティ(Reti Opening / Reti System)というのは、ずばりNf3で始まるオープニングのことで、1920年代にRechard Retiが考案し、彼の名前を冠した新しい定跡です。
 定跡と言っても○○ゲームとか○○アタックのように、プランやバリエーションのあるものとしてでなく、e4やd4と同じ程度の括りなわけですね。中央にそれとなく唾だけつけておいて、黒の出方を見てから次手を決定するというアイデアです。そしてトランスポーズ次第ではあるものの、大抵の場合、初〜中盤ではピースを奪い合うような展開にはなりません。
 d4オープニングよりもそういう意味では更に静かと言えます。しかし、ポーンのにじり寄りによる静かな戦いは、やはり初盤で勝負を決してしまうほど決定的なものをもたらすこととなる(かもしれない)のです。

 1....d5は最も指されることの多い黒の応手。一番オーソドクスに中央に駒を進めていくわけです。因みに、d5の他にはc5かNf6が多く見られます。
 この二つはモダンチェスにはモダンチェスの要領で、直接支えのある堅実な中央支配よりも、間接的に中央へ影響を及ぼそうという発想です。

さて、前置きはこの程度でうっちゃっておいて、ここからはレティ中もっとも研究されている展開の一つ、Benoni Reversedについてです。逆転したBenoni 要するに 1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 e6となるBenoni Defenceからの転用された名前でしょう。
 推測で言ってますが、多分そうだと思います。

2 c4 d4!(図−2)
図−2
【図−2】

 2.c4こそReti OpeningがEnglishやQueen's Gambitとよく比較される由縁であり、もっとも相性の良い駒の一つと言えます。

 参考までに、2手目c4以外に、d4とすればクインズポーンゲームになり、他に2.g3(Barcza System)とか2.b3(Nimzovitch-Larcen Attack)としてフィアンケットをするものなどなども有、それらはKing's Indianなど、低くてしっかりとした展開となります。お好みで(相手によって)選んで指すと好いでしょう。

 2. ... d4!さて、これでBenoni Reversedと呼ばれる形になります。Queen's Gambitでは「いらんいらん」とする場合はe6が決まり文句だったわけですが、「ぷいっ」と無視して通り過ぎてしまうという、d5を突いていないReti Openingならではのちょっと不思議な展開となります。
 勿論、2...d4の代わりにe6と支えればQueen's Gambitに変化します。他にはラスカー考案のc6なども有力。dxc4とアクセプテドにする手もありますが、その場合Na3でc4ポーンを落として続くのが主流(やや白優勢か)。

 さて以下、代表的(かもしれない)プランを三つ紹介します。性に合いそうな展開をしてみて下さい。

《プラン1》センターゲーム風味(分かりやすくすること)

3 e3 Nc6
図−3
【図−3】

 e3はd4という邪魔なポーンを払うには、一番確実性が高い方法でしょう。黒の応手はNc6の他にc5もあります。(3.e3 c5 4.d3 Nc6)

4 exd4 Nxd4
5 Nxd4 Qxd4(図−4)
図−4
【図−4】

 随分すっきりしました。例えば、ある資料を参考にすれば、以下、6.Nc3 e5 7.d3 Ne7 8.Qe2 Bd7 9.Be3 Qd6 10. 0-0-0 0-0-0と続きます。

《プラン2》Reti-Polonaise(透かされたなら透かし返すこと)

3 b4 f6(図−5)
図−5
【図−5】

 白はスルーされたc4を活かすためb4!としてQサイドを押し上げることを試みます。バランスには欠きますが、力強い手です。
 3. ... f6はアキレス腱を開ける一見危な気な手ですが、f3のナイトの動きを阻み白はそこを突くことが難しいのです。4....e5として繋げるのが目的。レティの盲点をついた手と言えます。

4 d3 e5
5 a3 a5
6 b5 Nd7
7 g3 Nc5(図−6)
図−6
【図−6】

 手順は色々あれど8.Bg2 any 9.0-0としてフィアンケットキャスリングするほうが良いようです。因みに4.d3は無難な手で、e3とすると、また違った展開となります。(但しd3までポーンを進められる危険と隣り合わせなのに注意すべきでしょう。)
 中央が狭苦しいような感じを受けますが、割合丈夫であり、黒も攻めにくいものです。Qサイドの突出を利用して思い切って攻め上がりたいものです。

《プラン3》モダン風味(いっそ複雑にしてしまうこと)

3 g3(図−7) Nc6, or g6, or c5
図−7
【図−7】

 g3としてBg2(と0-0)の下準備。d4と言う出過ぎたポーンを無視してその裏側のa8-h1のダイアゴナルを通して中央支配を目論むわけです。c4とフィアンケットの取合わせは相性が良いのです。
 但し、これらの展開は、レティにしては激しいものになりがちなのです。黒の応手として例を3つ上げておきます。あくまであるパターンに過ぎませんし、障り程度ですので、色々指して唸ってみて下さい。
 Nc6はまあ、普通に好い手。3....g6は同じくフィアンケットでd4の支えを入れようという手。c5は思い切った手で、興味深い展開をします。

3. ... Nc6の場合

3 ... Nc6
4 Bg2 e5
5 0-0 Nf6(図−8)
図−8
【図−8】

 黒は中央を強く支配していますが、白がその間隙にピースを利かせているような状態です。
 この後、白は必ずd3としてポーンの進撃を止めるのを忘れてはいけないし、黒はQサイドでの白の展開を抑える必要があるでしょう。

3. ... g6の場合

3 ... g6
4 b4! Bg7
5 d3 e5
6 Nbd2 Ne7
7 Bg2 0-0
8 0-0(図−9)
図−9
【図−9】

 結果的にプラン2(Reti-Polonaise)に似た展開となることが多いです。

3. ... c5の場合

              
3 ... c5
4 e3 Nc6
5 exd4 Nxd4
6 Nxd4 Qxd4
7 d3 Bg4
8 f3 Bf5
10g4Bd7(図−10)
図−10
【図−10】

 結果的にプラン1を激しくしたような展開となることが多いです。

おわりに

 最後に言訳がましく・・・。
 「レティの勧め」など書こうものなら広範になりすぎ(知識的に)フォローしきれず、レティオープニングの細かいバリエーションを追うとなると実用的でなくなるでしょう。黒の応手が一様ではないからです。
 実戦で打ってみれば直ぐに気がつきますが、Benoni Reversedなんて殆ど出会いません。20回打って一度出ればラッキーなほうでしょう。
 駒の利きを活かした流動的なチェスを心掛けて指すばかり、それがReti Openingの基本なのだと・・・、まあ何の足しにもならない言葉で締括りましょう。

written by fishpie