皇帝の正しくないチェス

2002 名古屋オープン 1R


はじめに

 今回取り上げるのは、2002年の名古屋オープン1Rです。
 全日本選手権の直後ということで、1度腑抜けになった後(笑)、また気合いを入れ直して臨みました。

 その第1Rのお相手は、レート2024のTさん。初対決でTさんが用意したのは、なんとキングズ・ギャンビットだったわけです・・・。

 対局終了後のTさん、「HPを知っていたから、キングズ・ギャンビットを指したらどうなるかと思って・・・」

棋譜解説

[Event "2001 Tokai-Open"]
[Date "2002.06.01"]
[Round "1"]
[White "M.T"]
[Black "anon_emperor"]
[Result "1/2-1/2"]

1 e4 e5
2 f4 exf4
3 Nf3 Be7(図−1)
図−1
【図−1】

 ギャンビットを受ける(accept)のか、受けない(decline)のかというのは、非常に難しい話なのですが、ギャンビット指しが受けなくてどうする、という感じですね(笑)。

 受けた後に私が選択したのは、3. ... Be7という、Cunningham Defenceです。

   
4 Bc4 Bh4+
5 Kf1 d5
6 Bxd5 Nf6
7 Nc3(図−2)
図−2
【図−2】

 白の4手目は、4.Bc4の他に、4.Nc3もあります。
 いずれも、4. ... Bh4+とチェックをします。

 6. ... Nf6までは定跡通りですが、7.Nc3で外れます。
 普通は、7.Bb3あるいは、7.Bc4!?のようですが・・・。

   
7 ... Nxd5
8 Nxd5 Bg4(図−3)
図−3
【図−3】

 7. ... Nxd5ですが、フリッツ君は 7. ... Ng4を推奨。

 Tさんとの感想戦では、8. ... Bg4のところで、8. ... 0-0とするのが、黒の常套手段とか。そのままキングサイドで勝負するそうです。

 私は、8. ... Bg4として、クイーンをピンしました。このCunningham Defenceで良く出てくる筋なのですが。

   
9 Nxf4 Nc6
10 h3 Bxf3
11 gxf3 Qd6
12 d3 0-0-0(図−4)
図−4
【図−4】

 10.h3 Bxf3の後、11.gxfは意外でした。
 11.Qxg3とすると思っていましたが、白は gファイルをオープンにしました。

 そこで、黒はクイーンサイドにキャスリングをすることにしました。キングサイドが戦場になると考えたからです。

   
13 Be3 Rde8?
14 Ng2 Bf6
15 Rb1 g6
16 Qd2 Nd4
17 Qf2 b6(図−5)
図−5
【図−5】

 13. ... Rde8?はあまり良くないようです。フリッツ君は13. ... Bg5以下、14.Nd5 Bxe3 15.Bxe3を勧めています。

 せっかくですので、14. ... Bd8と引き、... f5と戦いを始めた方が良かったと思います。

   
18 f4 Nc6
19 Ne1 Bd8?
20 Nf3 Ne7(図−6)
図−6
【図−6】

 19. ... Bd8?は良くない手。14. ... Bf6,15. ... g6としている以上、どうせビショップを引くなら19. ... Bg7とすべきです。
 指し手に一貫性が無く、手損になっています。

 白のキングはやや不安定なものの、確実に陣形を整えていきますが、黒はなかなか指し手が定まりません。

   
21 Ne5 Rhf8
22 Qg3 f6?
23 Qg4+ f5
24 Qf3 Nc6?(図−7)
図−6
【図−7】

 22. ... f6?も弱気。せっかくfファイルにルークを回ったのですから、やはり強気に22. ... f5といくべきでしょう。

 24. ... Nc6?はチャンスの見逃しです。
 24. ... fxe4が絶対手で、白が 25.dxe4とすると、25. ... Qxe5でナイト得(26.fxe5 Rxf3でクイーンを取り返す)になりますから、白は 25.Qxe4と取ります。
 そこで、25. ... Nd5とすれば、黒がやや有利となるところでした。

   
25 Nc4 Qd7
26 e5 Kb8
27 a3 Nd4?
28 Bxd4 Qxd4
29 c3 Qd7(図−8)
図−8
【図−8】

 26.e5でパスポーンの出来上がり。感想戦でTさん曰く「これで勝てると思った」そうです(汗)。

 白のビショップはあまり働きが良くないですから、27. ... Nd4?と交換しにいくのはあまり良くないです。

 さらに、手順に 29.c3とクイーンを追われ、白のポーンの形も良くなってしまいました。

   
30 d4 g5
31 Ne3 Rg8
32 Rg1 h6?
33 Ke2 gxf4
34 Qxf4??(図−9)
図−9
【図−9】

 30.d4で、白はe5のパスポーンを補強します。

 黒はやむを得ず、gファイルから反撃を目指しましたが・・・。

 32. ... h6?が見落としで悪手。gポーンを守る必要などありませんでした。

 32. ... gxf4 33.Qxf4 Qb5+ 34.Kf2 Rxg1 35.Kxg1 Rg8+ 36.Kh1 Qe2で互角というのがフリッツ君の判断です。

 34.Qxf4??が、この対局最大の悪手。黒は密かに狙っていた手がありました。

 34.Rxg8が絶対で、以下は 34. ... Rg8 35.Qxf4 Qb5+ 36.c4なら、依然として白優勢でした。

   
34 ... Rxg1
35 Rxg1 Qb5+
36 Kf3 Qxb2(図−10)
図−10
【図−10】

 ルークを交換したことで、白のクイーンサイドの守りがいなくなりました。

 35. ... Qb5+から、白のクイーンサイドは破られ、局面は一気に黒に傾きます。

   
37 Qxh6? Qxc3
38 Qg6 Rf8(最終図)
最終図
【最終図】

 37.Qxh6?も悪手。どうせ取るなら、37.Qxf5のようです。

 最終図、白のd,eポーンも風前の灯火。黒優勢の局面でしたが、時間も残り少なく(フィッシャーモードで切れ負けはありませんが)、集中力も限界。

 格上相手ということで、ドローを申し込み、ドローで終わりました。