私の師匠といえば、いるか師匠が有名です。しかし、忘れてはならないもう一人の師匠が!
そう、黒白師匠です。
私がyahooチェスに登場し、懇切丁寧にチェスを教えてくれた最初の人が黒白師匠です。
2003全日本選手権では、共に参加して1週間飲み続けたわけですが(笑)、黒白師匠はその最終ラウンドで前年のチャンピオンであるGさんに勝利を収めました。
エンディング巧者で長手数のチェスばかり指す(失礼)と評判の黒白師匠が、実に激しいチェスでGさんに勝利したということで、是非とも自戦記を!とせがみました。
そして、待つこと1年(爆)。
やっと自戦記を公開できるはこびとなりました。黒白師匠!また次回もよろしくお願いしますよ!
最終ラウンドを前にして、私は5.5ポイント(12ゲーム中)とひとつ負け越していたのですが、前年の優勝者で今回も優勝争いをしているGさんと最終ラウンドであたることになってしまいました。
スイス式トーナメントの対戦組み合わせの決め方を知っている人のなかには、そんなことありえないと思う人がいるかもしれないですが、参加者数の割にラウンド数が多いこの大会においては、優勝争いをしている人は同じポイントや近くのポイントの人たちとはすでに全員とあたっていて、最終付近のラウンドで入賞圏外の人とあたることは、わりあいよくあることのようです。
実は私は前日の晩だったか当日の早朝だったかに、現在トップのBさんとあたるなんてことがあるかもしれないと心配になりました。Bさんは大阪の仲間なので、自分が上位争いをしているならともかく、こういう状況ではあたりたくないと思いました。
だって、ここでBさんにまぐれで勝ってしまって、それがもとでBさんが優勝できなくなってしまったら、関西に帰ってから「あんた何しに全日本出たん?」などと何を言われるかわからないじゃないですか(笑)。
自分よりポイントが上でまだBさんとあたっていない人がいることを確認して、自分がBさんとあたらないことがわかり、まあ、こんなに負けてるやつが優勝争いに絡んでいる人と当たるわけないだろうと思ったのですが・・・。
最終日(この日は最終ラウンドだけ)会場入りして相手がGさんと判明。GさんはSさんとともに0.5ポイント差でトップのBさんを追っています。強い相手と指したいと思ってたじゃないか、ラッキーなんだ、とちょっと弱気な自分にいいきかせました。とはいえ、気合は十分すぎるくらいに入っていました。優勝を目指しているであろうGさんは、どうしても勝ちたいところのはずです。
そして私はBさんの優勝を援護するためにもなんとかドローをとりたい。というわけで私は、負けにくいオープニングというか、相手の黒が自分から動いて勝ちにいきにくい(勝つか負けるか二つに一つの勝負にいきにくい)展開になりそうな感じのオープニングを選ぶことにしました。えっ、そんなことよりも自分の得意なオープニングにしろですって?そんなん持っていたらそうしてます・・・。
前置きが長くなってしまいました。ゲームをどうぞ。
[Event "Zenkoku Taikai"]
[Site "PIO"]
[Date "2002.05.05"]
[Round "13"]
[White "blackandwhite24"]
[Black "G.G"]
[Result "1-0"]
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【図−1】 |
オープニングは、ニムゾインディアン・ディフェンスのクラシカル・バリエーションです。
6.Qxc3までノータイム。6. ... Nc6と指されて、この手に対する準備をしてなかったので手がとまりました。浮かんだ候補手は7.Nf3、7.Bg5、7.e3の三つです。
7.Bg5は、なんだか勝つか負けるかの戦いになりやすそうなので指さないことにしました。
7.Nf3は7.e3より柔軟な感じがしましたが、より手堅い印象を持った7.e3を指しました。
あまり考えていると6...Nc6に対する応手を知らないのがバレてしまうと思ったこともあり、深く考えないまま指しました。
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【図−2】 |
7. ... e5といきなり動いてこられて、7.e3と指したときに抱いていたこの局面の印象が実際には違っていたことに気づいた私は、長考に沈みました。具体的にどういうことか説明します。
6. ... Ne4(この手がメインラインと思う)7.Qc2としてから7. ... Nc6と指す手には8.e3があります。
そこで8. ... e5と指す手に対しては、9.cxd5ととってしまうのが定跡だということを私はNunn's Chess Openings(NCO)を見て知っていました。
そこには9.cxd5 Qxd5 10.Bc4 Qa5+ 11.b4 Nxb4 12.Qxe4 Nc2 13.Ke2 Qe1+と進み白よしとありました。
だけど今8.cxd5と指しますと8. ... Nxd5や8. ... exd4と応じられると先の6. ... Ne4 7.Qc2 Nc6 8.e3 e5 9.cxd5の変化にトランスポーズしません。
こんなことなら7.e3でなくて7.Nf3と指しておくんだったと後悔しました(それでもいずれ後で、あるいはすぐにでも... e5がきそうですが)。
8.Nf3や、9.Qd3もありそうで迷いましたが、本譜の順を選びました。黒も8. ... d4や9. ... Nxe5等もあったと思います。
Gさんの手は9. ... Bf5。
ポーンをとりかえすのを後回しにして、場合によっては... Ng3から一気に攻めつぶすという厳しい狙いのある手です。
最善の手を指さないとつぶされそうで、負けにくい穏やかな戦いなどという贅沢は、この期に及んでは言っていられません。私はこのゲームで最も長い長考に沈みました。
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【図−3】 |
長考して指すことに決めたのが10手目と次の11手目。
展開しているピースの数はこっちがクイーンひとつに対して相手は今出てきたクイーンも入れて4つ。いかにも危なっかしそうです。
何人かの仲間にこのゲームをみてもらったときも、「白やばいんじゃないの、どうすんの」といった声がこのあたりでは多かったです。
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【図−4】 |
長考したといいましたが、f3とつく手はわりとすぐに思いつきました。というのも、7.Nf3とせずに7.e3と指した以上、それが生きる展開にできることならしようと思っていたからです(f3にナイトがいないがためにf3とつけるわけです)。
クイーンがd8にいたまま10.f3は、10. ... Qh4には11.g3 Nxg3 12.Qf2と指す手があり白大丈夫ですが、10. ... Ng3 11.e4 Nxh1 12.exf5 Qh4 13.g3 Nxg3 14.Qf2 Nxf5で黒優勢と思いました。後で本をみると12...Nd4 13.Qa4 b5 14.cxb5 Qh4とあり、この方がより厳しそうです。
そこで、f3と突く前に10.cxd5とすることで、10. …Qxd5とクイーンをd5に呼んだわけです。これにより...Qh4を消し、e4にポーンをつく手がクイーンに当たるというメリットがあります。
とはいえ、クイーンをd5に連れてくることもf3をつくこともやはり怖いので慎重に時間をかけてその後の変化を読んだのでした。
なお、後でNCOを見ると10.Nf3(クイーンをd5に呼ばずに)もあったようです(トランスポーズしてそのかたちになります)。
10.Nf3以下、10. ... Ng3 11.Bd3 Bxd3 12.Qxd3 Nxh1 13.d5Ne7 14.e5 で駒損の代償はある(=∞)とのことです。
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【図−5】 |
11. ... Nd6 12.Qc3 (12.e4は12. ... Qxe5がピッタリ)Qxe5 13.Qxe5 Nxe5 14.e4で大体いい勝負かなと思っていました。
やぶれかぶれのように最初は思えた10.cxd5から11.f3ですが、読んでいるうちに簡単にはつぶれない手ごたえは感じていたのです。
本譜の11. ... Qa5から12. ... Nxb4は、指されたらこちらから変化できない手順なので最も時間をかけて読んだラインですが、その結果このラインは白悪くはないだろうと判断していました。
黒16手目はキングサイドにキャスリングする手(16. ... 0-0)のほうが、こちらとしては難しかったです。というのは17.Qxb7と取るのは黒の反撃が速くなりそうで怖い(こちらはまだ眠っているピースがあるうえキングも安全でない)し、f7のポーンをキングが守っているからです。
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【図−6】 |
自然なナイトの展開。
17.Nf3がルックのd2への侵入を防いでいます。
ルックがd1に入ってきましたが、18.Rg1でf1のビショップが動けるようになるので大丈夫。ここではどちらかというと白のほうがよさそうな感じがしましたが、まだまだ難しいと思っていました。
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【図−7】 |
20...a6が敗着で、その代わりに20...g6または20...Qb2と指すべきだったと思います。
本譜21.Qf5+と指すと、21. ... Rd7には22.Bg4があるので、f7のポーンが受かりません。f7のポーンをとればe5のポーンの道が開けます。
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【最終図】 |
黒はプロモーションが防げません。
Bさんは最終ラウンド勝ってきっちり優勝を決めました。
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