皇帝の正しくないチェス

Tinker(Computer) vs i_wia


皇帝による「はじめに」

 正月早々のyahooで、うぃあ君に声をかけられました。

 最近は「アンパサン通信」(大阪チェスクラブの会報です)への投稿も熱心とのことですが、「たまには」ということで、当HPへの2回目の投稿ということになりました。ありがとうございます。

うぃあ君による棋譜解説

[Event "ICC 15 10"]
[Site "Internet Chess Club"]
[Date "2004.01.08"]
[White "Tinker(C)"]
[Black "i_wia"]
[Result "0-1"]
[ECO "E15"]
[TimeControl "900+10"]


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参考−1:18. ... Nc5!とした場合の変化

   
18 ... Nc5!(参考図−1)
参考図−1
【参考図−1】

 18. ... Nc5!に対する白の応手としては、dxc5,b4,Rab1,e3の4種類が考えられます。
 その後の展開は下記の通りで、いずれも黒が優勢となります。

A)19.dxc5 Bxc3 -+ (フォーク)

B)19.b4 Na4 20.Rac1 Nxc3 21.Rxc3 Bxc3 -+

C)19.Rab1 Ne4!(△Nf2#!!) 20.Bxe4 fxe4 -+
 (これだと白は唯一のグッドビショップを失い、黒のみが活きている)

D)19.e3 Nxb3 20.Rab1 Nc5!-+(20...Na5? 21.Bxa5=)

参考−2:Middlegame Start!

   
20 Rad1(参考図−2)
参考図−2
【参考図−2】

 参考図-2から、いよいよミドルゲームです。
 黒はこの局面から、優勢を着実にするために必要な計画を立てる必要があります。
 人によって味の変わるところだと思いますが、ここは私のやり方で(教科書どおりですが)。

@局面評価(形勢判断)する。
A優勢にする計画を立てる。
B計画が立ったところで、実現可能かどうかを読み始める。

 まず私の評価はこんな感じでした。

@駒の損得は無く、ビショップとナイトの数も同じである。
A閉じた局面であるが、互いに打開する手は残っている。
B展開や主導権では、素直に黒が良いだろう。

 そして形勢判断は下記の通りです。

@互いのビショップを見ると白より黒のビショップの方が二枚とも活かしやすい形なのが見て取れる。黒のグッド・ビショップは直接相手のセンターポーンを睨み、バッド・ビショップすら相手の陣形を睨みつけていてアクティブ。白のビショップは、どちらも受けにまわっていて、効果的でない。
A局面を打開するとなると、主導権を持っている分、黒に利がある。白から打開するとなるとg4、黒から打開するとなるとa5,c5など。
Bナイト、クイーンなどの展開差、白は戦力を整えるのに数手かける必要がある。そのため黒には理想の展開をめざすゆとりがある。

 いずれも黒の利ですが、これからそれを目に見える利へと変えていかないといけない。
 これらの条件から、黒は二つの計画を立て、それを遂行していきます。

 一つ目の計画は「ビショップの働きに差をつける」です。

 具体的には、白の黒マスビショップ(c3)に目をつけました。
 このビショップはd4ポーンを守るだけで働きが良くないのですが、この働きの悪さを決定的なものにしてやろうと考えました。

 二つ目の計画は、「ナイトの働きに差をつける」です。

 ナイトを好位置に据えることが出来れば、戦術上大きな前進となるのですが、実際のところできるかどうか興味半分、危険たくさんな計画を立ててみました。
 ナイトの位置としては、c4やe4が最適でしょう。
 なのでd6へと向かう計画、名づけて「ペンタグラム・ナイト」を考えました。

26...Bd3!?とした場合の変化

            
26... Bd3!?(参考図−3)
参考図−3
【参考図−3】

 26...Bd3!?の後、Be4へ向かい交換を迫るもよし、...Ne4を狙うも良しで十分黒が良い。
 そこまでは分かっていたんですが、そこから具体的な勝ちを考えなければいけない。
 というところで思考停止して、勝てそうな終盤へと切り替えてしまったといえます。

 検証すべき今、思考停止なぞやめてとことん考えてみたいと思います。

 白の27手目の候補手は、Nf3,Kg1,f3の3つ。Bf1等はわざわざ白からグッド・ビショップまで変えてしまう必要が無いので、そういう類の手は候補から外します。

A1)28.Ne5 Bxg2 29.Qxg2 Bxe5 30.dxe5 Nc5-+
 お互いにグッド・ビショップを失う代わりに、グッド・ナイト対バッド・ビショップになる。
 ポーンストラクチュアでも若干黒が良い。

A2)28.Nd2 Bxg2 29.Qxg2
 白のグッド・ビショップを奪う形。黒は確実に良いがどう指すか。
 A21)29...Ne4 30.f3 Nd6
 飛び込んでf3をつかせた形になる反面・・・、31.Bc1 Bg5 32.Nf1でセンターから打開しようという案。
 少々のポーンサクリファイスは仕方ない。
 32...Nc4 33.e4?! Bxc1! 34.Rxc1 Qxd4-+
 しかし、こっちのポーンが落ちてしまうのです。
 A22)30.Nb6 g5
 キングス・インディアンのように楔を打っていく手。
 代わりに...Ra8-Rc8-Qd7-Be7 というクイーンサイドの手なんかもありそう。ただ、いまいちぱっとしない。
 この後の指し方は、なかなか難しい、互いにナイトを活かしてけん制しあうなり、黒は黒で閉じれなくなったcファイルの扱いに困る。良い悪いが混在し、決定打に欠けるといえます。

 ここで黒26手に振り返って
 26...Rc7?!がFritzのお勧め手。自分にはノープランにしか見えない手ですが・・・。
 27.Rc8 Bc8?! 28.Rxc6 Ne4! 29.Nxe4 fxe4 30.Rxc7 Qxc7
 一見黒ポーンダウンですが、h3のクイーンに当たっているのが味噌。
 31.g4 Qc2 32.Bc1 Qxf2-+とは、読みきれるもんじゃありませんね・・・。

 因みに、これは白が苦労して開いたcファイルから、黒がカウンターをもくろむという素晴らしい、本当に素晴らしい発想で、Fritzらしくないアイディアなのですが、これは28.Rxc6とせずに28.Kg1などで回避できるもよう。
 その際でも、黒はキングサイドで優位を主張できる様子。これまたKID Like。

 以上、思考停止してしまった中盤戦の検証を終えたいと思います。
 ここから先の戦形(KID系)は未知が多すぎるため、やはり自分では避けてとおりそうな気配なので・・・。
 まぁ、私はQGDプレイヤーですし。逃げ・・・(近いうちに勉強していきますが)。

Endgame

   
28 Rd2?(参考図−4)
参考図−4
【参考図−4】

 正確に言えば、中盤から終盤へ差し掛かる起点ですが、終盤としておきます。
 ここでも、先ほどと同様に局面評価、形勢判断を行いたいと思います。

 「ピースを交換するときは利するようにせよ。」との言葉がありますが、交換した以上は利を求めなければなりません。
 局面評価、及び形勢判断にも若干の修正が加わります。

 評価としては
@戦力は全く同じ、ナイトが居なくなった。
Aスペースアドバンテージ
Bキングの安全性

等が修正されます。

 形勢は
@ナイトが居なくなったため、局面を閉じ続ける必要性は無くなった。
Aお互い残りの戦力を展開するだけの広さはある。黒から仕掛けるならクイーンサイド。
B白がキングサイドから潰してきた場合は、黒のキングが若干危険か。

といった感じで、これからの戦いは速度勝負へと切り替える方針で進めます。

 Bを恐れるより、ここは踏み切るのがいいという判断。


皇帝による「終わりに」

 今回は、ICC Chess Viewerで棋譜を載せると言うことで、うぃあ君は原稿の全面書き換えをしてくれました。

 また、「ミドルゲームとエンドゲーム突入時における、局面評価と形勢判断を書いて欲しい」という注文にも答えてくれました。

 うぃあ君曰く「教科書どおり」とのことですが、それがなかなかに難しいものです。是非、参考にしてみてください。

 ということで、うぃあ君、今後も不定期投稿者としてヨロシクね(笑)