皇帝の正しくないチェス

ゴールデンチャンピオン対M君


皇帝によるはじめに

 いよいよゴールデンチャンピオン様から自戦記の投稿が!
 2002年ゴールデンオープンのチャンピオン、yuukyuu_kitawaraさんに自戦記をせがんだところ、二つ返事でOKを頂きました。ありがとうございます!!

 yuukyuuさんのお相手は、オリンピック日本代表に名を連ねたこともあり、ゴールデンオープン参加者中最高レートのM君です。
 ちなみに、私はM君に瞬殺された経験アリ(笑)。

 ところでM君、大会期間中は風邪をお召しになっていたらしく、体調不十分での対局であったとの情報を漏れ聞いております。お体の方、くれぐれも御自愛していただきたいと思います。

yuukyuu_kitawaraさんによる棋譜解説

[Event "Golden Open"]
[Site "PIO"]
[Date "2002.05.04"]
[Round "5"]
[White "yuukyuu_kitawara"]
[Black "S.M"]
[Result "1-0"]

 2002年ゴールデンオープン。
 4ラウンドで竜馬氏にまぐれ勝ちした私はここまで3.5ポイント。
 なな、なんとトップタイである。

 ここらでいっちょやったろかい〜、という気概は全くなく、お〜し、あと1ドローで目標の5割(4ポイント)。どっかで取れるだろ〜、とか軽く考えていた。

 そこへ皇帝登場。
 「こんなやつ、やっつけちゃってくださいよ〜」
 M君の肩をポンポンたたく皇帝。
 (お、おい、M君を挑発するんじゃない!ただでさえレート差478だぞ〜!なめてくれんかったらどうにもならんじゃないか!!)
 心の叫び。

 M君、苦笑い。
 「私に勝ったら次はSさんですよ〜」
 お茶をにごすM君。
 うーむ・・・。

 私の白番。
 対局前の私の狙いはただ一つ。
 M君は1.e4に対してフレンチが多いらしいとの情報を得ていたので、エクスチェンジでドロー狙いだ!

 しかしM君、私が上位者のフレンチにエクスチェンジするのを知っていたのかいないのか、戦型はシシリアンとなった。

   
1 e4 c5
2 Nf3 g6
3 c3(図−1)
図−1
【図−1】

 アラピンのようでアラピンでない。クローズドシシリアンのようでクローズドシシリアンでない・・・。
 この形、ピノーさんの得意戦法らしい。
 私はこれを竜馬さんに習ったので、直伝ではないが・・・。

 実はこのc3、M君に見せるのは初めてではない。
 忘れもしない去年の快速選手権。
 その局はハメ手でピースアップにしながら、わたしは逆転負けしているのだ。
 むう(号泣)。

 当時の私のレートは仮の1275。しかも快速選手権となれば時間もないわけで、普通に指してりゃ問題なく勝てると思っても不思議ではない。
 私だってそう思うよ。それでしょっちゅう負けてるけど(爆)。
 ともあれ、なんらかの対策を立ててきたのか、M君の指し手は慎重だ。

        
3 ... Nf6
4 d3 Nc6
5 Be2 Bg7
6 0-0 0-0
7 Nbd2 e5
8 Re1(図−2)
図−2
【図−2】

 e5を先に突かれてしまったので、d4としてセンターを支配することがすぐにはできなくなった。
 が、引き換えにフィアンケットしたビショップの影響力は弱まっているのでそれはそれで良しとする。d4にはこだわらない方が良いと思った。

   
8 ... Re8
9 Nf1 h6
10 Be3 b6
11 Ng3 d5(図−3)
図−3
【図−3】

突然ですが、M君のワンポイントレッスン!

 10. ... b6の局面では、黒はセンターではなくQueensideで手を作るべきだったと思います。10. ... d6 11.Ng3 ならば黒のQueensideの ... b5からの伸びに対して白の駒が遠いから黒は特に問題なかったと思います。

 11. ... d5で、ここまで手を稼ぐ為に動かなかったdポーンがついに出動。

   
12 h3 Bb7
13 Qc1 Kh7
14 Qc2 Qd7
15 Rac1(図−4)
図−4
【図−4】

 15.Rac1は、後々黒からd4と突いてくる事を前提にした手。cファイルがオープンになれば計算どおりなのだが・・・。

   
15 ... Qd6
16 a3 Rad8
17 Bf1 Rd7
18 b4(図−5)
図−5
【図−5】

 1.e4で始まったゲームなのに、17手目まで駒が一つも交換されていない!そろそろ仕掛けないとまずいか。
 ということで、18.b4と無理矢理cファイルをこじ開ける。

   
18 ... cxb4
19 cxb4 Rc8
20 Qb2 Rdc7(図−6)
図−6
【図−6】
 

 20.Qb2は、でもちょっと弱気、みたいな感じです^^;

 20. ... Rdc7とされ、おいおい、ルックを重ねられちゃったよ。ここは1個ルックを交換するしかない、と考えた。

   
21 b5 Na5
22 Rxc7 Rxc7
23 Bd2 dxe4
24 dxe4 Nc4
25 Bxc4 Rxc4
26 Qxe5 Qxe5(図−7)
図−7
【図−7】

 私の勝因というか、M君の敗因はこの手かもしれない。
 私の読みは26. ... Nxe4 27.Qxd6 Nxd6 という展開。多分、これならまだ互角と思う。
 試合前の皇帝の一言がM君の動揺をさそったか!?

   
27 Nxe5 Rc5
28 Nxf7 Rxb5
29 Nd6(図−8)
図−8
【図−8】

 これでフォーク。

   
29 ... Rb2
30 Bc3 Rc2
31 Bxf6(図−9)
図−9
【図−9】

 29. ... Rb2と浮きゴマを狙うが、30.Bc3 Rc2 31.Bxf6となって、結局わたしがピースアップとなる。

   
31 ... Bxf6
32 e5 Be7
33 Nxd7 Bxa3
34 e6 Rc7
35 Nd8 Be7
36 Rd1 Bxd8
37 Rxd8(図−10)
図−10
【図−10】
   
37 ... Rc1+
38 Kh2 Re1
39 Rd7+ Kg8
40 e7 e5
41 Rd6 Kf7
42 Rxb6 Rxe7(図−11)
図−11
【図−11】
   
43 Ra6 Re5
44 f3 Rb5
45 Ne4 Kg7
46 Kg3 h5
47 h4 Re5
48 Nd2 Rb5
49 Nc4(最終図)
図−12
【図−12】

 端のポーンが落ちてM君リザイン。

 ぬう・・・、M君にとっては不本意極まりないゲームなんだろうなぁ。

 まあ交通事故にあったようなものだと思ってもらうしかないかな・・・。